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『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

本選集第1巻末尾に付された「作品リスト」を開き、1978年5月から1979年6月までに発表された作品を見てみると、感嘆してしまう。もちろん、この前にも、この後にも、傑作がないわけではない。それでも、この14か月間に発表された作品の凄さは、やはり特別だ。樋口一葉に「奇跡の十四か月」があるが、大島弓子にも「奇跡の十四か月」があったのだろう。

本巻には、その時期に書かれた作品4作を含め8作が収録されている。
なかでも「パスカルの群」は特に好きな作品だ。公平は「おれのもっていないものをもっている」「おれのもってるものと同じものをもっている」から相手が男であっても惹かれるのだが、このような思春期の感情というか気持ちを味わった経験がある人は少なくないだろう。それが“性”と結びつくかどうかは全く違う話で、おそらく人間の中にある他人への感情の一つのパターンのような気がする。だからこそ、結は公平に協力していく。そして、それが絵の形で表現されているのが149ページである。シンプルであるが、同時に全てを語っているとも言える。
どこか「バナナブレッドのプディング」に繋がる「草冠の姫」、3人の感情の“あや”が美しい「たそがれは逢魔の時間」、死後の世界を描くことで現世の素晴らしさを謳う「四月怪談」も傑作だ。もちろん、ほかの4作品だっていい。もし私がマンガ家であれば、本巻に収録されたうちの1作品だけを描けたとしても、それでマンガ家になった意味を見いだせるほどのレベルである。

なお、149ページの絵は「綿の国星」第1編末尾の絵(本選集9巻の104と105ページ)と並んで、大島弓子の作品中でも私が最も好きな絵でもある。そして、もし1冊しかマンガを手元に残せなくなったら、迷うことなく本巻を選ぶ。
(2010年6月12日にAmazonのレビューに投じたものだが、Amazonサイドにより削除された。理由は不明。削除は、少なくともこの1年以内だと思われる。Amazonのレビューに関しては読んだ人によって「レポートが送信」され、「嫌がらせ、冒涜」「スパム、広告、キャンペーン」「現金、割引と引き換えに贈られます」などが指摘されると、レビューがコミュニティガイドラインを満たしているかどうかをAmazonサイドが判断し、「満たしていない」場合は削除されるとのこと。ただし、削除されても投稿者に理由の説明はない。このような場合、同じ書物に再投稿しても、基本的に受け付けてくれない。だから、このレビューのどこに問題があったのかは不明である)


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