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2021年10月の記事一覧

もう明日は来ない

禁じられた遊びを
おこなう愚か者
もう明日は来ない
それだけは知っている
螺旋の中を回る
定めから逃れられず
皆飲み込まれ
遠くの空へ消えた

ショーガール

柵の無いキャバレーで
裸体を晒すショーガール
彼女は自分の為だけに踊る
そうやって生きて来たから
月が二度と見えなくなっても
やる事は何も変わらない
何時もと同じキャバレーで
自分の為に踊るだけ
世界が明日終わっても

カルダモンケーキ

真夜中にだけ開くカフェで
カルダモンケーキを買おう
貴方が最高だった頃
私によく作ってくれた
持て余した感情を殺したら
独りの部屋で静かに食べよう
ジャスミンティーを沸かして
貴方といた日々を忘れて

僅かな明かり

夜明けにカーテンの隙間を
搔い潜る僅かな明かり
私達が失った何かを
もう一度照らしてくれないか
それは二度と手に入らないと
心では分かっているけど
追い掛けようとする心を
消し去る事が出来ない
どうしようもない私を
赦してはくれないか
まやかしで構わないから

陽炎の日々

世紀末キャバレーで
歌う不細工なシンガー
割れそうな夏の日に
揺らめく陽炎を抱いて
気違いになった道化師
誰も彼も僅かに
重なり合う事すら出来ず
忘れられて消えて逝く
変わる時代の片隅へ

エリート

彼女は小さい頃から
とても優れていた
周りからは羨望を込めて
エリートと言われた
難解な大学を卒業して
国の中枢機関で働き
その能力を遺憾なく
発揮する筈だった
少し時が流れた
眠らない2月の夜に
彼女はビルから飛び降りた
理由は知らない
太陽が眩しかったのだろうか
僕は時折思い出す
無邪気に笑う彼女の横顔を
揺籃の中で震えながら

ゴッドファーザーの焦燥

彼が支配する
全ての街の者が
彼にひれ伏し
服従の口づけを
掌に交わしても
渇きは止まらなかった
血に濡れた抗争も
裏切りの制裁も無く
穏やかな日々が
今は続いていても
彼は囚われていた
見えない何かに
使役し続ける事が
彼の魂を確かに
削り奪い壊して逝く
焦燥に駆られながら

阿修羅

白けた夜中に
雪駄を鳴らす阿修羅
絡んできた相手を
蹴り倒し地面へ転がす
血に見えた月が
その姿を隠して
阿修羅は笑い出し
強風に揺られて消えた

ゼラニウム

夜にだけ咲くゼラニウムを
盗んでしまった左目のジュリー
大切な人に見せようと
公道をブルーバードで疾走する
追い掛けて来る覆面を千切り
貴方の街まで飛ばしたけれど
ゼラニウムは枯れてしまった
朝日に優しく絆されて

ルージュプランツ

ルージュプランツが
咲き乱れる小道で
貴方と唇を重ねよう
心が離れてしまわぬ様に
少し歩いたら
ミルクホールへ向かおう
ロックンロールが
鳴り止まないあの店へ

スニーク

人影に隠れて
姿を現さない
卑怯者と囁かれても
本当は誰か分からず
今日もまた
誰かがオフィス街で
孤独に死んだよ
見えない圧力に
怯えながら
直ぐ明日が訪れ
皆知らない振りをする
明日は我が身と
感じていながら

救えないもの

それを落とさない為
必死に手を伸ばす
だけども隙間から
容赦なく零れ落ちる
幾つもの命が
バラバラと地にまみえ
消えてしまったんだ
遅すぎる初雪の様に

暁に染まるヒーレー

夜明けを背にして
走るヒーレースプライト
不良の儘ではいられずに
少年の日は通り過ぎ
大人に為れない者達は
家と言う揺籃に閉じ籠る
日々から抜け出す事も
何時の間にか忘れてしまって

彼女はクレイジー

錆びた鉄の月が
夜空を照らす頃
彼女は泣いていた
悲しい事があったのと
生きる事は何時だって
孤独だと僕は言う
彼女は遠くを見ている
僕には見えない何かを
彼女はクレイジー
繊細で静かに燃える心を
隠したり出来ない
それは美しい事だと
僕はそう思うんだ
本当に本当にさ