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散文

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#詩的散文

散文 うのはなとしんごう

散文 うのはなとしんごう

時、トツトツと

キャップには誰かの使用言語が書かれている

車はコツコツ鳴る

和気あいあいと音楽が喋っているのを聞いているけど、君は他人でしかないね

笑う空をソリで駆け抜けたあの犬を田んぼに落とした

連続殺人鬼は霧立のぼる境内の中で眠っている

煌めいた人間の煩悩は野球のボールになった

バカバカしくて緑が泣いた

山の色がトンカラトンカラ変わっていく

傷が消えたあの川は赤くなった

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散文 私を生きる場所

散文 私を生きる場所

泣いていた。

私は泣いていた。

丁寧に家の片付けをして、洗濯物を畳み、お風呂を洗って、私の食べないご飯を作った。

二十歳を超えてもう数ヶ月。
夜の街にフラフラと歩き出す。

そういえば、猫は鳴かなかった。私が出ていく時、ケージに入れた猫は何も訴えなかった。いつもは切なそうに鳴くのに今日は何も鳴かないで、私が出ていくことに気付きもしないようだった。

それが悲しかった。きっと鳴いたら鳴いたで、

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詩『入道雲の残党』

詩『入道雲の残党』



夏戻り醒めない夢を届ける雲の微かなエグ味
泣けない子供に注ぐ青はただならぬ
自分の生命力を奪われて
さて、という

はじめましてはここにない

散文 外眺る君の輪郭線は青と緑

散文 外眺る君の輪郭線は青と緑

とりとめもなく、私の心には不愉快という靄がかかる。空の青さがその曇をより汚いものとするから、もういいかなって思い始める。

ベッドの上、何もせず、ただ嫌悪する。

自分に嫌気がさし、気を逸らす為に、音で頭を埋める。

そんな時間を過ごしていた。ふかふかと当たる空気の質量が夏を思わせて、夏休みがとうの昔に終わっていることを思い出し、また怪訝になる。

私は闇に引っ張られているのだ。影の方が心地が良か

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散文 点滅と借り物

散文 点滅と借り物



街が点滅している。

反射する川の色は、深い愛よりも歪に赤と青を折り合う。
重なり合った空をなぞるように私は見ているのだけど、きっと何も見えていないんだ。

高い場所に来た。街の中でも高い場所。夕焼けを見たいがために歩いた足は不安がある。何でこうなってしまったんだろう、なんて言葉を出せないほどに私の舌は硬く怯えている。

空が燃える。

どこかの放火をいつも毎日大きく写し出していた。

街が点

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散文 空気の色と駆け抜ける

散文 空気の色と駆け抜ける

風が優しくなった。それは、世界が私に優しくなったのか、私が世界に優しくなったのか。

自転車で駆け抜ける街を私はよく見ててこなかったんだと気づく。コンクリートを突き抜けて生えていた雑草の強さが少しだけ自分の身に着いてきた、と言えたらいいけど、そこまで私は意思がない。

黒猫が路地をゆく。

それを私も横目に見て、気にしなかった道を進む。駆け抜けて、駆け抜けてなお、私の街。何故、この街を自分のものだ

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写真詩『尽きた命の音』

写真詩『尽きた命の音』



尽きた命の音がした
カシャっと乾いた音
死んだ命を踏んだこの足に罪はある

【写真詩集『はみ出す青』のボツ作】
掲載するつもりで作ったけど、微妙だ!と思ったのでこちらで供養です。好きだけど!!ちょっと単語が無意味に繰り返されてる感じがします。純度が低い……

そしてこれもsampleで兄が作ってくれた表紙案です。
これもとても素敵ですが、ちょっと水色過ぎるかなと!思って!リテイク出したらより良

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詩『はみ出す青』

詩『はみ出す青』



もう終わるらしい夏休みの
空を見ることなく
部屋の中
ひとりぼっちで吸う息に
とくとくと輝いた愛のなさ
めぐる命の空き箱は
何かを思わすことも無い
さおさおさお
竹の音がどこからか聞こえるの
さおさおさお
また聞こえる
それは猫の悲鳴をかき消すために

マスクから開放され
入ってくるのは青の音
侵食していくその色は
まぶたの裏に焼き付いた

散文 踏切の君に

散文 踏切の君に



私は明るく冷えた電車の中で、
君は猛暑の余韻の中、
私を探して踏切の向こうにいる。
君の硬い熱を掴んだ手でバイバイをする。

詩『午睡の空』

詩『午睡の空』



午睡の夢の色をしていた
その空を僕は目をつぶって感じてる
吸った息に含まれた
純粋な色彩は
僕の体内全部を染め上げた

色の着いた空気は
ちるちると音を立てる
宇宙を感じるその色を
きっと火星人も見ているに違いない

僕の世界は
ピンクとも撫子色とも石竹色とも
言いたくない色で満たされた

命よ君よ、僕をありがとう

散文 空の青さは敵わない

散文 空の青さは敵わない

踏切の青いライトには、自殺を抑制する意図があるらしい。青色は人の気持ちをおちつけるとのことだ。青色のご飯が食欲をそそらないのとなにか関係はあるのだろうか。多分ないだろうな。
ある有名な大学の最寄り駅には、青いライトが沢山あった。人身事故の多いその駅には、青いライトが沢山あった。
大学生の心を落ち着けることが、青いライトには出来るのだろうか。
自殺を本当に止めるのだろうか。
僕は知っている。その青い

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散文 丘の上の夜

散文 丘の上の夜

ただ信号が青から赤へと変わる。

車が通っていくのが、ここからでも見てとれた。

夜とはこんなにも明るいのか。遠くの景色は赤の点の光。赤、赤、赤。きっとビルの屋上の光だ。

カタカタカタと草がなっていたはずなのに何故か今は聞こえない。風だってこうして吹いているのに、あの音はしない。先程まで人が来たのかとドキドキするぐらい気になっていたのに、いつ音がしなくなったのかわかっていない。

空は明るい。月

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散文 不滅にいられない君たちに

散文 不滅にいられない君たちに

夜の霞を食べて生きた。
どれだけ遠くまで歩いても、いつまでもここに居るの、と君は言う。
ああ僕にこの人は守ることが出来ない。
その確信は胸の中にしまってある。
遠い日に貰った手紙はもうくしゃくしゃで、星のように複雑だ。言葉を大切にしていられるのはあの子がいてくれたからなのに、きっともうその事を覚えていてくれないだろう。
お花がきれいね、と言う。
水がきれいね、と言う。
月がきれいね、と言う。
君の

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散文 夜に黒猫は歩けない

散文 夜に黒猫は歩けない

夜の街は騒がしかった。ネオンの看板は我はまだここにいるんだと主張して、無視される。
電車の中で私はただスマホに向かう。ここでは無いどこかを夢見て喜びを探した。今日のことを思い出す。黒猫がゴミを漁っているのを見て、自分が怯んだ気がした。あの猫は強く生き抜こうとしている。なのに私は弱音すら吐けないからすぐに逃げ場を探してはそこに逃げ込む。
言葉を使うことは自分を縛ることだ、なんて文章が人気が出ていた。

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