寺嶋孝佳【装身具作家/CJST企画運営】

《循環工程と継承》をテーマに掲げた創作活動をしながら、不定期でコンテンポラリージュエリ…

寺嶋孝佳【装身具作家/CJST企画運営】

《循環工程と継承》をテーマに掲げた創作活動をしながら、不定期でコンテンポラリージュエリーについての考察を投稿しています。またジュエリー表現文化の活性化、発展、普及を目指した団体《CJST》の企画運営中。

記事一覧

続・グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

前回からの続きとして、これからどのように⑦の層とコンテンポラリージュエリー(CJ)が接続できるのかを考えてみる。作家視点からの意見ということで、偏った部分があるこ…

グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

私は昔から読書が苦手で長いこと敬遠してきたが、美術の世界に入ってからはオススメされた本は読んでみようと、半ば強制的に本と向き合っている。 最近、北澤憲昭の『美術…

コンテンポラリージュエリーが美術作品になり得ると仮定して“鑑賞”について考察する

今回は、コンテンポラリージュエリー(以下CJ)が美術作品になり得ると仮定した上で、着用や鑑賞について考えてみる。 広く一般的にジュエリーとは“着用”されるものであ…

受賞作品についての解説

今回はホフマン賞を受賞した作品シリーズについて紹介します。 ありがたいことに、ここ数年は海外での展覧会が増えてきたり、作品が美術館に収蔵されるようにもなりました…

念願のSCHMUCK入選そして"Herbert Hofmann賞"受賞

コンテンポラリージュエリー分野最大のイベント《ミュンヘンジュエリーウィーク/通称シュムック》が2月28日から3月3日にドイツで開催されました。 コロナパンデミックの影…

コンテンポラリージュエリーと展示〜作品か商品か〜

今回はコンテンポラリージュエリー(以下CJ)の《展示》にフォーカスする。 CJ作品を制作している作家はいわゆるアート作品と同じようにギャラリーやアート(デザイン/工…

ジュエリーには美術作品として評価されるポテンシャルがあるのか

前回の投稿に引き続き、第2回シンポジウム内で気になった内容を共有したい。 トークセッション②にご登壇いただいた岡田裕子さんは主に現代アートの世界で活躍されているア…

“コンテンポラリージュエリー”にはもう“コンテンポラリー”は必要ないのか

8月末に開催された第2回コンテンポラリージュエリーシンポジウム東京も無事に終わり、先月からはアーカイブ配信も始まった。企画運営という立場でもあるが、同時に1人の作…

今はコンテンポラリージュエリーの過渡期〜続き〜

前回の続きとして、私自身がどのように現代美術の世界に挑戦しようとしているのか少し解説する。あくまでも作り手側の一つの意見として読んでいただけるとありがたい。 ま…

今はコンテンポラリージュエリーの過渡期

コンテンポラリージュエリー(以下CJ)がなぜ国内で認知/評価されないのか。その要因についての核心が椹木野衣著の「反アート入門」内に書かれていた。結論から言うと、CJ…

第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」応募用紙ダウンロード用ページ

第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」の応募用紙は下記よりダウンロードしてください。 応募方法の詳細はこちらのウェブサイトをご確認く…

ジュエリーを作ろう!と思って作り始めた時点でジュエリーの枠からは抜け出せない

 2022年の最後の投稿にして挑戦的な表題になってしまいましたが、これまでの総括として書きます。現在のコンテンポラリジュエリー(以下CJ)分野について危機感を持ってい…

国内のコンテンポラリージュエリーについて一旦整理する。

今回は表題の通り国内のコンテンポラリージュエリー(CJ)の現状について整理したいと思います。 なぜ一旦整理することが必要なのか。 それは日本国内のCJ分野は海外とは異…

ミュンヘンジュエリーウィークをアーティスト目線で振り返る〜CJ市場の現状〜

 皆さんは「ミュンヘンジュエリーウィーク(MJW)」を知っていますか? ※ご存じの方は後半の「今回の参加アーティストとして振り返ってみる」からお読みください。  簡…

ジュエリーはアーティストの表現手段?#2

コンテンポラリージュエリー作品を買う人はどこにいる?  CJ市場の中で活動していて気付いたのが、作り手を紹介する時に“デザイナー”と呼ぶか“アーティスト”と呼ぶか…

ジュエリーはアーティストの表現手段? #1

 前回の内容で書きましたが、今のままではコンテンポラリージュエリー(以下CJ)作品はアート市場には入れない(アート作品にはならない)という結論に達しました。しかし…

続・グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

続・グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

前回からの続きとして、これからどのように⑦の層とコンテンポラリージュエリー(CJ)が接続できるのかを考えてみる。作家視点からの意見ということで、偏った部分があることもご了承いただきたい。

前回ジュエリー市場を支えている層が図の⑥と⑧だと解説したが、ここに当てはまる大抵の人たちはジュエリーやアクセサリーにしか解消できない欲求を持っていると推測できる。幻想的な光り輝くものに惹かれたり、何かと精神的に

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グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

グリーンバーグ批評選集を読んでジュエリーに当てはめて考えてみた

私は昔から読書が苦手で長いこと敬遠してきたが、美術の世界に入ってからはオススメされた本は読んでみようと、半ば強制的に本と向き合っている。
最近、北澤憲昭の『美術のポリティクスー「工芸」の成り立ちを焦点として』を読んだあと、続いて『グリーンバーグ批評選集』を読み始めた。偶然だと思うが、どちらにも《アヴァンギャルド》というキーワードについて考察を巡らせていたので、個人的にとても印象に残った本だった。

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コンテンポラリージュエリーが美術作品になり得ると仮定して“鑑賞”について考察する

コンテンポラリージュエリーが美術作品になり得ると仮定して“鑑賞”について考察する

今回は、コンテンポラリージュエリー(以下CJ)が美術作品になり得ると仮定した上で、着用や鑑賞について考えてみる。

広く一般的にジュエリーとは“着用”されるものであるが、ジュエリーを“鑑賞”対象として考えると、ティファニーやブルガリといったハイブランドの豪華絢爛な一点もののハイジュエリーや、何千年も前に作られた貝や骨に穴をあけただけのプリミティブな装身具が頭に浮かぶのではないだろうか。それは着用と

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受賞作品についての解説

受賞作品についての解説

今回はホフマン賞を受賞した作品シリーズについて紹介します。
ありがたいことに、ここ数年は海外での展覧会が増えてきたり、作品が美術館に収蔵されるようにもなりました。しかし残念ながら、日本では全くと言っていいほど無名の作家です。せっかくの機会なので日本語で自身の作品について解説したいと思います。
過去の投稿でコンテンポラリージュエリーについて偉そうなことを好き勝手書いてきましたが、普段どのようなことを

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念願のSCHMUCK入選そして"Herbert Hofmann賞"受賞

念願のSCHMUCK入選そして"Herbert Hofmann賞"受賞

コンテンポラリージュエリー分野最大のイベント《ミュンヘンジュエリーウィーク/通称シュムック》が2月28日から3月3日にドイツで開催されました。
コロナパンデミックの影響を受け、ここ数年間はイベント数や来場者数も大幅に減少していましたが、今回はコロナ禍以前のような盛り上がりをみせていました。
特に今年はピナコテーク・デア・モデルネでの企画展の一環で神戸芸術工科大学の展覧会が催されていたり、CJSTの

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コンテンポラリージュエリーと展示〜作品か商品か〜

コンテンポラリージュエリーと展示〜作品か商品か〜

今回はコンテンポラリージュエリー(以下CJ)の《展示》にフォーカスする。
CJ作品を制作している作家はいわゆるアート作品と同じようにギャラリーやアート(デザイン/工芸)フェアで作品を販売している。ほとんどの場合はギャラリストに作品を預けているので、(私の経験上)作家とギャラリーは50:50の割合で売上げを折半しているのが一般的だ。もちろん他の割合や作家個人で作品を販売している場合もあるが、それはさ

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ジュエリーには美術作品として評価されるポテンシャルがあるのか

ジュエリーには美術作品として評価されるポテンシャルがあるのか

前回の投稿に引き続き、第2回シンポジウム内で気になった内容を共有したい。
トークセッション②にご登壇いただいた岡田裕子さんは主に現代アートの世界で活躍されているアーティストの一人である。岡田さんには《アーティストが社会と接続するために》というテーマにご登壇いただいたが、その中で、“ジュエリー”を自身の作品として扱うとしたらどうするか、という意見を聞く機会があった。(これは私個人の意見だが)ジュエリ

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“コンテンポラリージュエリー”にはもう“コンテンポラリー”は必要ないのか

“コンテンポラリージュエリー”にはもう“コンテンポラリー”は必要ないのか

8月末に開催された第2回コンテンポラリージュエリーシンポジウム東京も無事に終わり、先月からはアーカイブ配信も始まった。企画運営という立場でもあるが、同時に1人の作家としても多くの収穫があったと手応えを感じている。特にトークセッション①と②ではお互いのトークテーマ内容がリンクするようにと計画はしていたが、こちらの予想以上に双方が繋がっていたと思う。これも登壇者の皆さまが本企画を理解し歩み寄ってくれた

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今はコンテンポラリージュエリーの過渡期〜続き〜

今はコンテンポラリージュエリーの過渡期〜続き〜

前回の続きとして、私自身がどのように現代美術の世界に挑戦しようとしているのか少し解説する。あくまでも作り手側の一つの意見として読んでいただけるとありがたい。

まず注目したのは作品のサイズ感である。現代美術を取り扱うギャラリーや美術館に行ったことがある人はイメージができるかと思うが、展示されている作品は巨大なモノが多い。これはアメリカを中心に変化していった歴史、トレンドのようなものがあるが、その中

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今はコンテンポラリージュエリーの過渡期

今はコンテンポラリージュエリーの過渡期

コンテンポラリージュエリー(以下CJ)がなぜ国内で認知/評価されないのか。その要因についての核心が椹木野衣著の「反アート入門」内に書かれていた。結論から言うと、CJ作品には《批評》が足りないということだ。
反アート入門は2010年に幻冬舎から発売された現代美術についてのバイブル的な本であるが、その中で私がこれだ!と思った内容を紹介したい。

著書の中には、

と書かれていた。
この部分を読んだ時、

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第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」応募用紙ダウンロード用ページ

第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」応募用紙ダウンロード用ページ

第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」の応募用紙は下記よりダウンロードしてください。

応募方法の詳細はこちらのウェブサイトをご確認ください。

また、ご支援、ご協賛もお待ちしております。

皆様のご応募お待ちしております。

ジュエリーを作ろう!と思って作り始めた時点でジュエリーの枠からは抜け出せない

ジュエリーを作ろう!と思って作り始めた時点でジュエリーの枠からは抜け出せない

 2022年の最後の投稿にして挑戦的な表題になってしまいましたが、これまでの総括として書きます。現在のコンテンポラリジュエリー(以下CJ)分野について危機感を持っている私の個人的な立場から、noteに記事を投稿し続けている中で見えてきた、分野の問題点と今後の指標を今回もシェアしていこうと思います。
 本題に入る前に、私の抱いている具体的な危機感とは“既存のCJ市場が直面している将来性の無さ”、“作

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国内のコンテンポラリージュエリーについて一旦整理する。

国内のコンテンポラリージュエリーについて一旦整理する。

今回は表題の通り国内のコンテンポラリージュエリー(CJ)の現状について整理したいと思います。
なぜ一旦整理することが必要なのか。
それは日本国内のCJ分野は海外とは異なった発展を遂げており、その結果独自のジュエリー文化を形成して様々な視点からCJについて語られています。この複雑化している現状を整理することによって、
「CJってよくわからない」
「どういった作品がCJなの?」
「CJの定義とは?」

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ミュンヘンジュエリーウィークをアーティスト目線で振り返る〜CJ市場の現状〜

ミュンヘンジュエリーウィークをアーティスト目線で振り返る〜CJ市場の現状〜

 皆さんは「ミュンヘンジュエリーウィーク(MJW)」を知っていますか?
※ご存じの方は後半の「今回の参加アーティストとして振り返ってみる」からお読みください。

 簡単に説明すると、ミュンヘンで開催される「IHM(国際手工芸フェア)」を中心としたイベントです。コンテンポラリージュエリー分野では最も重要視されているイベントであり、その理由は1959年から始まった公募展「SCHMUCK(ドイツ語でジュ

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ジュエリーはアーティストの表現手段?#2

ジュエリーはアーティストの表現手段?#2

コンテンポラリージュエリー作品を買う人はどこにいる?

 CJ市場の中で活動していて気付いたのが、作り手を紹介する時に“デザイナー”と呼ぶか“アーティスト”と呼ぶか2パターンに分かれている、ということです。呼称なんてどうでもいいと思うかもしれませんが、個人的にはその違いを強く感じています。これは国や地域の差ではなく、各ギャラリー(のコレクター)や各キュレーターによって違いが見られます。

 まず“

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ジュエリーはアーティストの表現手段? #1

ジュエリーはアーティストの表現手段? #1

 前回の内容で書きましたが、今のままではコンテンポラリージュエリー(以下CJ)作品はアート市場には入れない(アート作品にはならない)という結論に達しました。しかし、私はジュエリー表現作品として発表することへの可能性を信じています。今回はどのようなビジョンでアート市場に挑戦しようとしているのか共有したいと思います。

CJ作品がアート市場に参入出来そうな時代があった?

 私はアーティストが用いる表

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