寺嶋孝佳【装身具作家/CJST企画運営】

工芸技法(主に彫金)を用いて作品同士が影響し合う鎖のようなプロセス “物質化と非物質化…

寺嶋孝佳【装身具作家/CJST企画運営】

工芸技法(主に彫金)を用いて作品同士が影響し合う鎖のようなプロセス “物質化と非物質化の往来(加飾行為の上書き)”を研究しながら平面作品やジュエリー作品を制作中。 またコンテンポラリージュエリー分野を日本国内に普及させるべく設立した《CJST》も運営中。

最近の記事

“コンテンポラリージュエリー”にはもう“コンテンポラリー”は必要ないのか

8月末に開催された第2回コンテンポラリージュエリーシンポジウム東京も無事に終わり、先月からはアーカイブ配信も始まった。企画運営という立場でもあるが、同時に1人の作家としても多くの収穫があったと手応えを感じている。特にトークセッション①と②ではお互いのトークテーマ内容がリンクするようにと計画はしていたが、こちらの予想以上に双方が繋がっていたと思う。これも登壇者の皆さまが本企画を理解し歩み寄ってくれた結果ではないだろうか。登壇者をはじめ、ご協力いただいた多くの皆さまに再度感謝を申

    • 今はコンテンポラリージュエリーの過渡期〜続き〜

      前回の続きとして、私自身がどのように現代美術の世界に挑戦しようとしているのか少し解説する。あくまでも作り手側の一つの意見として読んでいただけるとありがたい。 まず注目したのは作品のサイズ感である。現代美術を取り扱うギャラリーや美術館に行ったことがある人はイメージができるかと思うが、展示されている作品は巨大なモノが多い。これはアメリカを中心に変化していった歴史、トレンドのようなものがあるが、その中でも“アートとしての写真作品”について一部説明してる本があったので抜粋して紹介し

      • 今はコンテンポラリージュエリーの過渡期

        コンテンポラリージュエリー(以下CJ)がなぜ国内で認知/評価されないのか。その要因についての核心が椹木野衣著の「反アート入門」内に書かれていた。結論から言うと、CJ作品には《批評》が足りないということだ。 反アート入門は2010年に幻冬舎から発売された現代美術についてのバイブル的な本であるが、その中で私がこれだ!と思った内容を紹介したい。 著書の中には、 と書かれていた。 この部分を読んだ時、自分の中にずっと抱えていたモヤモヤが晴れた気がした。CJ分野に足りないモノは批評

        • 第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」応募用紙ダウンロード用ページ

          第2回公募展プロジェクト「コンテンポラリージュエリー展“リング”」の応募用紙は下記よりダウンロードしてください。 応募方法の詳細はこちらのウェブサイトをご確認ください。 また、ご支援、ご協賛もお待ちしております。 皆様のご応募お待ちしております。

        “コンテンポラリージュエリー”にはもう“コンテンポラリー”は必要ないのか

          ジュエリーを作ろう!と思って作り始めた時点でジュエリーの枠からは抜け出せない

           2022年の最後の投稿にして挑戦的な表題になってしまいましたが、これまでの総括として書きます。現在のコンテンポラリジュエリー(以下CJ)分野について危機感を持っている私の個人的な立場から、noteに記事を投稿し続けている中で見えてきた、分野の問題点と今後の指標を今回もシェアしていこうと思います。  本題に入る前に、私の抱いている具体的な危機感とは“既存のCJ市場が直面している将来性の無さ”、“作品に対する革新性の物足りなさ”です。 CJ分野の問題点  昨今、CJやその類

          ジュエリーを作ろう!と思って作り始めた時点でジュエリーの枠からは抜け出せない

          国内のコンテンポラリージュエリーについて一旦整理する。

          今回は表題の通り国内のコンテンポラリージュエリー(CJ)の現状について整理したいと思います。 なぜ一旦整理することが必要なのか。 それは日本国内のCJ分野は海外とは異なった発展を遂げており、その結果独自のジュエリー文化を形成して様々な視点からCJについて語られています。この複雑化している現状を整理することによって、 「CJってよくわからない」 「どういった作品がCJなの?」 「CJの定義とは?」 といった多くの問いに応えられる(もしくは理解するきっかけになる)のではないかと考

          国内のコンテンポラリージュエリーについて一旦整理する。

          ミュンヘンジュエリーウィークをアーティスト目線で振り返る〜CJ市場の現状〜

           皆さんは「ミュンヘンジュエリーウィーク(MJW)」を知っていますか? ※ご存じの方は後半の「今回の参加アーティストとして振り返ってみる」からお読みください。  簡単に説明すると、ミュンヘンで開催される「IHM(国際手工芸フェア)」を中心としたイベントです。コンテンポラリージュエリー分野では最も重要視されているイベントであり、その理由は1959年から始まった公募展「SCHMUCK(ドイツ語でジュエリーの意味)」の受賞者発表とセレモニーがあるという点です。他にもいくつかの公募

          ミュンヘンジュエリーウィークをアーティスト目線で振り返る〜CJ市場の現状〜

          ジュエリーはアーティストの表現手段?#2

          コンテンポラリージュエリー作品を買う人はどこにいる?  CJ市場の中で活動していて気付いたのが、作り手を紹介する時に“デザイナー”と呼ぶか“アーティスト”と呼ぶか2パターンに分かれている、ということです。呼称なんてどうでもいいと思うかもしれませんが、個人的にはその違いを強く感じています。これは国や地域の差ではなく、各ギャラリー(のコレクター)や各キュレーターによって違いが見られます。  まず“デザイナー”と呼ばれる場面ですが、主にジュエリー分野に軸を置き、着用性を第一に作

          ジュエリーはアーティストの表現手段?#2

          ジュエリーはアーティストの表現手段? #1

           前回の内容で書きましたが、今のままではコンテンポラリージュエリー(以下CJ)作品はアート市場には入れない(アート作品にはならない)という結論に達しました。しかし、私はジュエリー表現作品として発表することへの可能性を信じています。今回はどのようなビジョンでアート市場に挑戦しようとしているのか共有したいと思います。 CJ作品がアート市場に参入出来そうな時代があった?  私はアーティストが用いる表現手段として“ジュエリー”を現代アート分野内で評価してもらうことを目標に活動して

          ジュエリーはアーティストの表現手段? #1

          コンテンポラリージュエリーとアーティストステートメント

           コンテンポラリージュエリー(以下CJ)作品は“ジュエリー表現としてアートに成り得るのか”というテーマで複数回記事を投稿していますが、今回は「アーティストステートメント」について考えていきたいと思います。  まず“アーティストステートメントとは何か”を簡単に説明すると、 “アーティストの制作活動全体を通したコンセプトや動機を言語化、文章化したもの。つまり各作品の核となる部分” と言ったところでしょうか。これは現代アートの世界では作品と同様に重要視されており、殆ど(全て?

          コンテンポラリージュエリーとアーティストステートメント

          コンテンポラリージュエリー展 “ペンダント100”(仮題)参加者募集

           私たちコンテンポラリージュエリーシンポジウム東京では、コンテンポラリージュエリー分野の普及と発展を目的としたグループ展示を開催予定です。1回目の今回は誰でも応募可能な公募形式(エントリー無料)で作品を募集します。以下が応募条件になりますので、ご確認をよろしくお願いいたします。 【企画コンセプト】 ・展示発表の機会が減少したアーティストの為の活動支援 ・国内でのコンテンポラリージュエリーコレクターの獲得と普及活動の一環として着用体験が可能な展示 ・ジェンダーレス、エイ

          コンテンポラリージュエリー展 “ペンダント100”(仮題)参加者募集

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現のマーケットについて ♯2

          前回の投稿からリクエストのあった、“具体的にどうやってギャラリーと繋がれば良いの?”という問題について、今回は自身の体験談からいくつかご紹介したいと思います。これで絶対に成功するという訳ではありませんが、少なくとも私はこれらの方法を試した結果、今現在、複数のギャラリーと一緒に仕事をしています。 ギャラリーへのアピールの仕方ギャラリーで展示をするために、まずは作品を知ってもらわなくてはいけません。その方法として、①SNSで発信/②公募展に出展/③直接交渉/④アーティストからの

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現のマーケットについて ♯2

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現のマーケットについて ♯1

          今回は現在のコンテンポラリージュエリー(以下CJ)分野のマーケットについて紹介します。まだまだ駆け出しの身ですが、CJのマーケット内で活動し始めるようになった個人の経験とリサーチ、また現在の問題点なども含めた内容になっています。 どうやってジュエリーアーティスト達は生計を立てているのか私たちアーティストは基本的にCJ専門のギャラリーに作品を取扱ってもらうことで展示発表、流通、収入を得ています。専門のギャラリーは60年代頃から南ドイツ、オランダで誕生し、その後、主にヨーロッパ

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現のマーケットについて ♯1

          アート的なジュエリー作品とジュエリー的なアート作品

          先日、1年間延期となっていた『Contemporary Jewellery Symposium Tokyo 2021』が無事に開催されました。新型コロナウィルス対策の一環として対面式からオンラインプログラムへと変更し、2日間で延べ170名以上の方々にご参加いただきました。コンテンポラリージュエリー(以下CJ)分野の国内普及に向けた新しい一歩が踏み出せたのではないかと実感しています。開催にご協力、ご支援、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。 さて、今回はプログ

          アート的なジュエリー作品とジュエリー的なアート作品

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現はアートになり得るのか/表現者♯2

          理解し易いジュエリーと理解し難いジュエリー 私がジュエリー表現作品の制作活動を通してよく耳にするのが、コンテンポラリージュエリー(以下CJ)分野は、一般的なジュエリー分野からは理解し難いと言われ、アート分野からは物足りないと言われています。このどちらにも属さない中途半端な立ち位置が良くも悪くもCJ分野の今を象徴していると思いますが、この現状を打破し、2020年以降のCJ分野の可能性を広げる為に後者の意見を参考にして改善する必要性を感じています。 “理解し易いジュエリー”と

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現はアートになり得るのか/表現者♯2

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現はアートになり得るのか/表現者♯1

          『ジュエリー』作品の制作者は国内外に数多く存在します。しかし、制作者ではなく表現者/アーティストとして活動している人は果たして何人いるのでしょうか。2020年という節目、コロナパンデミックの前後などでアートを中心とした多くのカルチャーでは新しい時代が始まっています。表現者たちは常にアンテナを張り、様々な表現媒体を利用して個々の考えを具現化しています。私も表現者の一人として、これからのジュエリー表現についてどのようなアプローチをするべきかと常日頃考えています。歴史的で重要な分岐

          『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現はアートになり得るのか/表現者♯1