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【劇評・賛】 圧倒的な壁!『哀れなるものたち』(ネタバレあり・前編)

昨晩『アメトーーク 絵心ない芸人』を見てお腹が痛くなるほど笑いました。前田選手の潔さにはいつも頭が下がります。ということで、くらたも絵を描いてみました。何を観てこうなったのかは、明日のタイトル画像でご確認いただけたらと思います。

閑話休題。
休職前後のお目汚しシリーズが終わったので、溜まっているほかの話題を書きます。
まずは『哀れなるものたち』
第96回アカデミー賞の、主演女優賞(エマ・ストーン)、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、美術賞受賞!おおおお、すごいいっぱい取ってる……でも超納得。
観てからだいぶたってしまいましたが、書きます!これを観た時の体感は、「すごいものを観た。ものすごい情報量に圧倒される。それはまるで、大きな大きな壁がこちらに迫ってくるよう。全方位的に、ドドドドドドゴゴゴゴゴゴと来る」でした。


概要

天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。 天才監督ヨルゴス・ランティモス&エマ・ストーンほか、超豪華キャストが未体験の驚きで世界を満たす最新作。
キャスト
エマ・ストーン, マーク・ラファロ, ウィレム・デフォー
監督
ヨルゴス・ランティモス
【R18+】18歳未満の方は、ご覧になれません。

哀れなるものたち | Searchlight Pictures Japan

まず最初に、「エロ・グロ要注意」

これとても大事。
エロ・グロ苦手な方はご注意ください。R18って相当です。
圧倒的な観劇体験でしたが、エロ・グロ要素がとても強いので、そういうものが苦手な方が無理して観ることはないと思います。
ただ、やたらめったらに、意味もなく、ただ刺激を求めるために、エロ・グロを使っているようには思いませんでした。「SPY×FAMILYの劇場版がうんこ映画だった!」みたいな怒りはありませんでした。

くらたはグロ苦手なので、最初に、「ああわたしのようなグロに弱いものがなんでこれ見に来たんだろう」と思いました。でも、うすうす「あ、グロいの来るな」とわかるつくりなので解剖シーンや手術シーンは目をつぶればやり過ごせました(リュックベッソンの『ジャンヌダルク』は何の前触れもなく突然首が飛んだりするのでやり過ごせない)。
グチャっとかいう音もダメな人はやめた方がいいと思います。
あと、独特なげっぷシーンや嘔吐シーンもあるので、ポップコーンをボリボリ食べながら楽しく観る感じではなかったです。

エロについては、露骨な性描写はありますが、暴力的な描写はありません。ライムスター宇多丸さんのラジオ『アフター6ジャンクション』で何度も話題になっていて皆さんおっしゃっているのが「性描写は露骨だが不思議といやらしさをあまり感じない」ということ。くらたも同感です。主人公「ベラ」の好奇心の対象として描かれるからかなあ。これよりこの前の日に行ったクラシックのピアノ演奏会のほうが官能的だと思ったくらいです。
ただ、一般的な感覚から言ったら、一緒に行く人は厳選した方がいいと思います。相手の反応を気にしていたら自分が物語世界を楽しめないですし、それはもったいない。

客層

二月中旬の金曜日に観に行きました。料金割引もない平日の昼間だったのに結構入っていました。男性も女性もいたと思います。一人客が多かったです。

連想される豊かな世界

これもライムスター宇多丸さんのラジオ『アフター6ジャンクション』で指摘されていましたが、昨夏公開された映画『バービー』と、作品のテイストは異なるものの通底している部分があるとくらたも思いました。女性の知性、解放、美術や衣装や世界観の作りこまれ方とか。「フェミニズム映画」と安易にカテゴライズしてしまうとあまりにも取りこぼすものが多くてもったいない。
ポップでウェルメイドな『バービー』のほうがくらたは安心して見られるし、全力で「好き!」と言えますが、今回の『哀れなるものたち』もとても好きでした。

他にも、連想した作品群を列挙します。
すごく複雑で豊かな世界だったので、いろんな作品、物事へと想像が連なってゆく、充実した観劇体験でした。

  • フランケンシュタイン 原作がオマージュしている

  • 木島日記 1話目「死者の書」に出てくる「水の女・つき」がベラに似ている。フランケンシュタインのようにツギハギの傷だらけ、記憶喪失の幼児のような状態の大人の女性だったが、若い男性研究者・木島が教育を施すと急速に知能を獲得していく。最終的に記憶を取り戻すが……。

↓表紙の女性が「つき」。言葉が通じず、ほうっておくと自傷してしまうため、手が拘束されている。

  • ホーンテッドマンション FOOLISH MORTALS…いずれ死すべき愚か者。リッチでちょっとブラックな世界観も。

  • リトルマーメイド 人間世界のことが何もわからないアリエルを王子がグルーミングする、みたいな構造が少し似ている。実写版ではその点を意識して克服したか。実写版の美術も少し似ている気がする。

  • バービーかぐや姫の物語 男性が気の毒になるくらい愚かに描かれている点、マンスプレイニング・グルーミングの指摘、「主人公の女性が思う通りに行動すると、旧式の価値観の男性が振り回される」構図

  • 美女と野獣 愚かな男性が女性の知性を疎外する(本を捨てる)、主人公の名前(ベラ、ベル、どちらも美しいという意味)、主人公の奔放さ(美女と野獣のベルも、あぐらをかいたり椅子のひじ掛けに足をのせたり、お上品なお姫さまではない)

  • アルジャーノンに花束を 同一人物内の知能が急速に上昇した時の、周囲の人間の戸惑いなど

  • PERFECT DAYS 人間観が通底しているように思えた。少し距離をとった位置から人間の生を見ているというか……。平山もベラも、だれしもが自分の思う「PERFECT DAYS」を模索して築かんという試みの道中にあるが、みなそれぞれの生の限界があり、「哀れなるものである」という感じ?うまく言えない。

すみません、明日に続きます!

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