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手記

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日常そのもの
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#エッセイ

静かに躍れ七夕よ

静かに躍れ七夕よ

ジリジリと照りつける陽の光に背中を預けて、ちょっと背中を丸めて頭が下がる。

どうにも静かで、でも人々がここで生活を営んでいる形跡はあって、異様に冷やされている公民館には、短冊とネームペンが設置されていた。
喃語と日本語の境目で遊んでいる子どもが、ベビーカーの上から、願いを親に訴えている。
物音のないホールスペースに腰掛けていたのに、メッセージの部分は聞こえていなかった。願いをあえて聞くのはナンセ

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パーフェクトブルーを劇場で

パーフェクトブルーを劇場で

ヱヴァンゲリヲン、AKIRA、サイバーパンクという共通項を持っててくれている友人に、ネットの記事を見た段階でパーフェクトブルーを観に行こうと声をかけた。一人映画に抵抗はないんだけれど、どうせなら、と誘いたくなった。
予定を合わせて金曜を迎えた。チケットは争奪戦になると思って、二日前にあらかじめ私が取っておいた。蓋を開ければ満員だった。

せっかく買ったフレーバーソーダをエンドロールで一気に飲むしか

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捨てられず、夏

捨てられず、夏

とっととバラシにして撤収したいと毎夏思いながら、「夏には体調を崩しやすいから気をつけてね」とのアドバイスを、未来に片足突っ込んでチラ見した人から受け取ってから、余計に消極的になる夏が近づく。

長袖は考えることもなくなって、箪笥の奥に巡った。
着回せるほどのTシャツの一山を見渡して、それでも少ないから買い足したくなる夏を何度目なのか考えそうになったけど、ぼやっと数字が浮かぶ前にやめて、スーパーの冷

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踊る暇もあるひたすらに日常。 20221020のお品書き

踊る暇もあるひたすらに日常。 20221020のお品書き

まず、1019の延長線で夜

小手先で誤魔化してきた私に長いこと立ちはだかっていた、調べてみないと手も足も出ない課題。
ともかく、後回しにしていたものを回収する。攻略方法を探り、初心者コースから歩み、構築した。

どうしても夜型でお馴染みの私は、遅めの起動から、日中にはカフェやマクドナルドでババンとパソコンを開き、シロノワールを片手に、方法をインプット。持ち帰って、一生続いてくれると過信している夕

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傍観する台風の目

傍観する台風の目

各々の体温の差を楽しみと許容できないまま、一人を差し置いて会話が熱の風に流されて耳を揺らす
ショッピングモールの団欒の音は、ロックンロールを前にして小波のようにゆっくりと平坦になり、温度を集めて平均点が炙り出される、人狼は近くに潜んでいる

クールを顔に貼り付けて、静かに、目に映る景色を他人事で客観視している
YouTubeにただずっと流れている渋谷スクランブル交差点のライブ映像のような、自分とは

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夏はぼやけて見えたままで

夏はぼやけて見えたままで

核を覆い閉じ込める無気力が大きく大きくなっていく
身を小さく寄せて、外側よりもちょっとあたたかい体温の流れを感じて生きていると安心したいのに、上回りたがっている気温にうんざりしてしまい、外側がどうでもよくなってしまった

以前は、いや数日前は、意味もなくウインドウショッピングするのも楽しかった
その名残で、惰性に身を任せて中古衣服を見てみた
興味が反応しなかった、ベラベラとハンガーを摺らしながら、

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生活音のシャッター

生活音のシャッター

どこにも居場所を見出せなくなって、また目的もないのに乗り継ぎに便利な駅の方向に近づきながら身体を揺られている。

横たわっていないと世界との均衡が保たれないと思った。テスト期間で早めに下校し始める中学生の歓声が窓を叩く。

私が衝動に乗っ取られるのは14、15時が多い。目を閉じても夢がないとわかったら、ベッドをビンタして立ち上がる。ちょっとフラフラしてから、オーバーサイズの服をスッと取り出す。気の

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色褪せて

色褪せて

「色褪せてはいないけれど、このままにしておきたいよね。」

刺激を求め、いつも私を置いて走り、だんだんと遠ざかり小さくなっていく彼の背中を見ているのが好きだった。

でも、彼はそこまで速くない。

時に立ち止まり、天を仰いで、考え事の過程と結論を照らし合わせている。
人並みの自尊心なら、2歩進むごとに途中経過を誰かに見せては「偉いね」の一言が欲しいものである。

物事の捉え方と価値観の多様化を謳う

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ほどほどにして、天命を待つ

ほどほどにして、天命を待つ

人事を尽くして天命を待つ、という諺を据えながら、直感に神経を寄せて理由付けが始まる。

まだ、その時ではないと思った。

身の丈に合わない買い物から、身に合うようにと後追いで成長していく物語も頷けるが、理由が見つからない「今」に委ねるはあまりにも安易で、賭けだった。

揺れ動く様子を想像するも易い。脆い決断であり、たわいの無い、浮いた世界の話だ。

身から溢れんばかりのパワーを振れば、風になって呼

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試しに息を吸って

試しに息を吸って

難しいですね 無いものから選ぶというのは

体温が満足してもらえるだけの格好を見つけるのでさえ 毎日困ってばかりです

夏が来れば暑いし 冬が訪れれば寒いです 
移り変わりに美しさを見つけられる余裕はありません 本当はマフラーなんて外したいのに店内は冷房に支配されています
縛り付けられた首元は窮屈で思いのままに息ができません

姿勢は崩れています 肌と肌を近づけていないと不安になります そして風が

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夜の帳

夜の帳

普段なら脚立の二段目からでも下を見て体が震えるのに、その夜は高さを求めたくなった。

その衝動を意図して飛び込んだライブハウスで確かな高揚感を持ち帰り、20時過ぎの湿った空気を吸った。火の消えていないタバコが路上に落ちていた。人の目を気にしながら咳をする自分を俯瞰で見た途端に、現実に引き戻されてしまった。

願うなら出会したくなかった悲観的な現実からの逃避行は、こうして誰かの行き届かない処理によっ

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後ずさり

後ずさり

井の頭線から降りると、たった一つの出口改札の方向に道ができて、一目散に混ざり合う。流動的で無自覚な情緒を鷲掴みにして車両から飛び降りた。

ざっくばらんに散乱している古書を手に取ってみても、こちらに目配せしているとはつゆ知らず、縁がなかったつもりになっている。気づかれなかった虫の息は、今もなお消されないテトリスのように敷き詰められている。

Chicagoを横目に、カオストーキョーシティを一歩一歩

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ダイスロール

夕暮れ時の勝負運は、今日に限って僅かに足りていなかった。
ミスドのシュガーレイズドが食べたくなって、ジャージからデニムに履き替えた途端ににわか雨が降り出した。それまでの時の歩みの実感が湧いていなかったのは、時計の電池交換を怠ったからだとばかり思っていたが、どうやらそうでもなかったらしい。

約束を取り付け、予定時間の7分前に現地に到着するように時間を計算して、ロータリーを突っ走り、どうにかしてエン

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転ばずとも届かずとも

転ばずとも届かずとも

考えて作り直す時間を抜きにすれば、文章としてのつながりを再考して煮詰める手順を抜かせば、半永久的に文字を並べることはできるのだろうか。付け焼き刃ながらでも、流れと言い回しを瞬時に接続することができるのだろうか。長考するだけで外に出せないまま、パンク寸前の私ならどこまでいけるのか。早打ち将棋の要領で、もしくは高速餅つきのようにいくのだろうか。

これは挑戦である。早速やってみよう。

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