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『フォリー・ベルジェールのバー』byモネ:都会の喧騒のさなかの憂鬱
パリのフォンダシオン・ルイヴィトンで、コートールド(Courtauld)展を見た。コートールドは、画家ではなく、20世紀前半に活躍した、イギリスの実業家でコレクター。
繊維会社で、シルクの代替になるヴィスコースという繊維で儲かって、成功した。実業で儲かった金で文化に寄与するという、博愛主義的精神の人物として、知られる。エライ。
コートールドは、まだ印象派の評判があまり良くなかった時代に、特にセ
永遠の門 ゴッホの見た未来:感覚に直接訴えかける世界を描いた画家の身体に、入り込むという経験
Eternity's Gate (2018).
1853年にオランダに生まれた、ファン・ゴッホ(以下ゴッホ)。若いころは、画商や書店勤め、教師と何をやってもうまくいかず、父と同じ聖職者を志した。しかしそれにも挫折し、自分には絵を描くことしかないと悟る。
1886年、パリにやってきてゴーギャンに会い、南へ行け、と勧められる。自分でも、灰色の色彩のパリではなく、新しい光が欲しい、と思い、南仏のアル
セザンヌと過ごした時間:セザンヌの絵に霊感を与えた、光と色彩の中につつまれる僥倖
フランス近代絵画の父ポール・セザンヌと、自然主義を定義した小説家エミール・ゾラ。セザンヌは裕福な銀行家の息子。父親が亡くなったゾラは、貧乏だった。いじめられていたゾラをセザンヌは理解し、かれを助けた。二人は、かれらの不安や反抗心や夢や希望を共有し、熱い友情をはぐくんだ。
先鋭な才能を持つ個性のぶつかりあい。その友情の軌跡に、尋常ならぬ浮き沈みがあったのは、いうまでもない。幸福な結婚をし、金のため
見えない太陽:栗毛のカトリーヌ・ドヌーヴと、テロリストになった孫
アンドレ・テシネ監督の『見えない太陽』(L'Adieu à la nuit, 英語 Fairwell to the Night, 2019)のプレビュー(前夜上映 avant première)に、監督や主演のカトリーヌ・ドヌーヴ他のキャストが来るというので、観に行った。プレビューで隣に座っていたおじさんは、監督が喋っているというのに、ドヌーヴをアップにして、動画を撮っている。
ドヌーヴといえば
ルネ・クレールの『空想の旅』は、ナイトミュージアムのもとネタ
『ナイトミュージアム』(Night at the Museum, 2006)という映画は、博物館の展示物である歴史上の人物や動物などが、夜中になるとあたかも生命を吹き返して、博物館が異次元世界みたいな空間になる話である。
原作はミラン・トレンクというひとの書いた絵本である、というのだが、ルネ・クレールの『空想の旅』(Le Voyage imaginaire, 1925)には、まったく同じモチーフ
ラブ・セカンド・サイト:パラレルワールドに入りこんでしまったら、そこには何が見つかるだろう?
フランスで劇場公開されたばかりの、ユーゴ・ゲラン監督の『ラブ・セカンド・サイト』Mon inconnueを観た。タイトルのつじつまが合っていないのが、もちろんこの映画のひねりである。ぼくのものなのに、見知らぬひととは?
空想好きの高校生だった、主人公のラファエル。卒業し、結婚して、今ではファンタジー作家として、大成功している。妻は、同じ高校で知り合った、ピアニスト志望のオリヴィア。彼女のほうは、
映画そのものにも、ライフ・ストーリーがある
IMECというアーカイブで、せっせと草稿を読んでいる。わたしが研究しているエリック・ロメールという映画作家は、なんでも残しておくひとで、かれの遺志を受けたおそらく奥さまが、それをごっそりここのアーカイブに寄贈したのである。
その数はじつに膨大で、厚さ10cmくらいのファイルに、くわしい目録がごっそり綴じられている。つまり、「目次」だけで、何百ページもある、ということ。
火曜から金曜までしか空い
危険なプロット:文学という血縁が、孤独な他人を父子にする
Dans la maison(原題), In the House(英語題名)(2012).
フランスのフローベール高校(リセ)に赴任してきた、国語(フランス語)教師のジャーマン(ファブリス・ルッキーニ)は、生徒が書いた週末に何をしたかという作文を採点しながら、その内容のなさに辟易していた。ピザとスマホのことばかりなのだ。
かれらが少しでも本を読むように仕向け、かれらの文学的教養を向上させ、それ
アメリ:パリの小粋なエピソードがいっぱいに詰まった、キュートな思い出の小箱
モンマルトルに行ったので、学生時代に観たきりの、モンマルトルを舞台にした映画『アメリ』を、また観ることにした。アメリが働いているカフェ・デ・ドゥ・ムーランCafé des 2 Moulinsは、混んでいたので入らなかったが、いまも盛況である。
アメリはクレーム・ブリュレのカラメルをパーンと割るのが好きなのだが、日本でもクレーム・ブリュレがはやったのは、この映画の影響とか。豆の中にザクッと手を突っ