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優しいおしごと。

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初めての小説を書いてみます。 少し私の経験も混ぜますが、基本はフィクションです。 外出自粛の世の中だからこそ癒やしが必要。 家族の優しい繋がりを表現できたらと思い作成しまし…
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#短編小説

優しいおしごと。(7)

優しいおしごと。(7)

祖母は夏に、町内会で旅行に行くのを楽しみにしていた。

私は、祖母が旅行で買ってくるお土産を楽しみにしていた。

祖母が不在になることに向けて、お手伝い出来ることを増やそうと様々教えてもらっていた私。

リビングで掃除機がかけれるようになったのと、テーブルの拭き掃除が出来る様になっていた。

小さくて軽い掃除機を祖母が見つけてくれて、私は更にやる気を出せた。

(リビングだけは、毎日綺麗にする)

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優しいおしごと。(5)

優しいおしごと。(5)

祖母は不思議なクセがあった。

それは病院で貰った、うがい薬を麦茶を入れるビン(ピッチャー)に入れて冷蔵庫で作り置きをすることだった。

よりによって、夏場にそのクセが炸裂した。

うがい薬の色合いが麦茶にそっくりだったのだ。

幼かった私は、喉の渇きを潤したくて冷蔵庫に手をかけた。

実は今冷蔵庫に入っている麦茶は、私がお手伝いして作ったものだった。

昨晩、夕食後祖母と2人で麦茶を作った。

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優しいおしごと。(4)

優しいおしごと。(4)

私の家には中型犬がいた。

名前は「コロ」
母が名付け親だ。

コロは祖父、祖母、母の言うことは、しっかりと聞いていた。

しかし、私に対しての態度は全く違っていた。

一言で言うと「怖い」
激しく吠えるのだ。

首輪に鎖がしっかりと繋がっているけれど、引きちぎらんばかりに私に飛びかかろうとする。

確かに、私は当時幼稚園生。
コロの方が体も少し大きかったから、明らかに舐められていた。

犬は家族

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優しいおしごと。(3)

優しいおしごと。(3)

祖母の料理は絶品だった。

そして様々な料理が作れる人だった。

「今日は何が食べたい?」と聞かれ「ハンバーグが食べたい」と答えた。

次の日は「焼きそば」
そのまた次の日は「オムレツ」

まるで食堂がそこにあるみたいだった。

ある日、おやつに「ポップコーン」を作ってくれることになった。

ポップコーンなんて、初めて聞く言葉だったからワクワクした。

どんなふうに作るかみたくて、わがままを言って

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優しいおしごと(2)

優しいおしごと(2)

祖母のためのお手伝い。

さて、何をやったらいいのだろうか?

日頃祖母は、料理、掃除、洗濯、買い物と主婦の行うことを全てこなしていた。

空いている時間は、福祉会館で開催されている踊りのサークルに参加していた。

(私が出来ることは何もないじゃないか!)

そう、小さな私には全てが未知の世界。
出来ることなんてなかった。

夜になり夕食を済ませてからは入浴までは少し時間があった。

私は祖母に

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優しいおしごと。(1)

優しいおしごと。(1)

幼き小さな私の手を。
ゆっくりと引いてくれた優しい存在。

私は祖母が大好きだった。

祖父も母も仕事に追われ、食事を作ってくれたり、お散歩に連れて行ってくれたりと。

私の身の回りの世話をやいてくれたのは祖母だった。

小さかった私は「ありがとう」ということを伝えるのが精一杯だった。

何かお返しがしたかった。
でも、何をしたらよいのか分からなかった。

ある日、スーパーに買い物へ連れて行っても

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