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マッチングアプリ放浪記【ノンフィクション小説】

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コミュ障でモテない地味男子がマッチングアプリデビュー?! 「ヤリモク男子」となった僕は、奥手な自分を変えるため、 コミュ力を磨き、女性を口説き、新しい自分を謳歌する。 寂しが…
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とにかくモテたい。『マッチングアプリ放浪記』の山田くんの垢抜け方法

とにかくモテたい。『マッチングアプリ放浪記』の山田くんの垢抜け方法

全てはモテるためだ。女の子とウハウハするため以外に、頑張る理由ってあるのだろうか。

怠惰な僕の原動力は、全てにおいてそれだった。

昔からオシャレとは縁遠い生活をしてきた。前髪は重たいカーテンのように目にかかり、肌は荒れ狂い、ひたすらに機能性のみを重視した服を着ていた。おまけに唇はカサカサだ。(こんなんじゃチューすらできないね)

だが、マッチングアプリを始めると決心し、「女の子にモテてやる」と

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最終話 クズ男、恋に落ちる。|マッチングアプリ放浪記

最終話 クズ男、恋に落ちる。|マッチングアプリ放浪記

「詠世くんは、これまでどんな人と付き合ってきたの?」

遥は僕の目を見つめて尋ねた。僕も思い切って彼女の目を見つめかした。すると、ふっと彼女は目を逸らし、長谷寺の見晴らし台から鎌倉の港町を眺めた。

前景に遥。後景に海。忘れることはない景色。

「気になるの?」と僕ははぐらかした。

「・・・別に〜」彼女はそっぽを向いている。

「中学と高校で4年間付き合った彼女がいたよ。男まさりで、負けず嫌いの

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#12 アプリを消した。片想いは続く。|マッチングアプリ放浪記

#12 アプリを消した。片想いは続く。|マッチングアプリ放浪記

遥の意向で、その日は鎌倉駅に現地集合となった。朝の11時に待ち合わせだ。

僕はソワソワとしながら横須賀線の電車に揺られていた。車内は空いていて、座席の両脇には誰も座っていない。11月下旬の冷たい風が、ドアが開くたびに流れ込んでくる。

遥を好きになってしまったことは、もう気付いてた。そして今までとは違って、誠実なスタンスで彼女と接することも決めていた。

そのとき、ふっと思い出した。

まだマッ

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#11 あんた、男としてダサいよ。|マッチングアプリ放浪記

初対面でホテルに誘ってきたクズ男に対して、電話越しの遥はあり得ないほどの優しい声だった。

僕はさっき、渋谷で彼女をホテルに誘って断られたばかりだ。それなのに、世間から忌避されるヤリモク男子に、彼女は丁寧に接してくれた。

「さっきはごめん。すごい遥に失礼なことをしたよ」

正直、緊張から僕の喉は震えていた。喉仏がロボットダンスでも踊っているのかもしれない。

次は、真剣に真面目に彼女と会いたい。

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#10 ヤリモク男子、撃沈する。|マッチングアプリ放浪記

#10 ヤリモク男子、撃沈する。|マッチングアプリ放浪記

強引に握った遥の手は温かかった。

「じゃあ次行こっか」

優しく話しかけた。僕は遊び人としての自分を貫いて、ホテルに誘うと決めていた。

すると遥は作り笑いを浮かばせて、「はぁ、がっかりだよ」と言い放った。まるで下北沢の冴えない劇団員のような口調だった。

彼女は僕の芯まで冷え切った手を振り解こうとしたが、僕はまたすぐに握り返した。

「俺、遥ともっと一緒にいたいな。正直、遥と話すのが純粋に楽し

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#9 本当の自分でいれたんだ。彼女と居るときだけは。|マッチングアプリ放浪記

#9 本当の自分でいれたんだ。彼女と居るときだけは。|マッチングアプリ放浪記

遥との会話は静かで、それでいてとても奇妙だった。僕は気がつけば素の自分で彼女と話していて、自然とありのままの「山田詠世」として、接することができていた。

普段女の子と話す時は、いつも自分を偽っていた。余裕な姿を演出してみたり、ちょっと遊び人っぽく振る舞ってみたり、人によって自分を変えていた。

けれど、彼女といる時だけは、なぜかありのままの自分でいれるような気がした。これが感情が「好き」に当ては

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#8 不思議な彼女に恋をした。でもたぶん、片想い。|マッチングアプリ放浪記

#8 不思議な彼女に恋をした。でもたぶん、片想い。|マッチングアプリ放浪記

「好きな音楽とかは?」と僕は居酒屋の席で尋ねた。

「うーん。犬」と彼女は言う。

「遥、犬は音楽のジャンルじゃないよ」と困りながらも諭してみる。

「好きな音楽を聞かれると[犬]って答えたくなっちゃうの。そういうことってあるでしょ?」と彼女は言った。

そんな彼女が気になって仕方ない。不本意だけど、好きなのかもしれない。そんな話だ。よかったら読んでいってほしい。

遥とは、10月の上旬に電話をし

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#7 セフレは虚しいなんて誰が言ったんだ。|マッチングアプリ放浪記

#7 セフレは虚しいなんて誰が言ったんだ。|マッチングアプリ放浪記

この卑猥なアプリを初めてから2ヶ月が経とうとしていた。僕は今日も渋谷という名の荒野を歩いている。

井の頭線改札を出て、エスカレータを降りる。渋谷の喧騒から逃れるようにイヤホンをして、Dave Brubeckの『Take Five』を聴く。何処に行くあてもないが、とりあえず道玄坂のサンマルクカフェで時間を潰そう。マッチングアプリを始めてから渋谷には何度も来るようになって、もはやここは僕の庭と化して

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#6 ハーフ系美女を口説いて撃沈した話|マッチングアプリ放浪記

ハーフ系美女を口説いたことなんて、人生において一度もなかった。そもそも女性と話すだけでも緊張していたのに、その上さらに口説くだなんて…。僕にはハードルが高すぎる。

今回は、そんな僕が初めてハーフ美女を口説いた結果、撃沈した話をしよう。大火傷だ。あれは悲惨だった。

今後、もし誰かを口説こうと思っている読者の方がいたら、僕の撃沈エピソードがあなたの一助となることを願っている。

その日、僕はアプリ

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#5 彼女のせいだ。HIP-HOPなんか聴くようになったのは。|マッチングアプリ放浪記

#5 彼女のせいだ。HIP-HOPなんか聴くようになったのは。|マッチングアプリ放浪記

音楽には2種類ある。
ただの音楽と、彼女との日々を丁寧に思い出すためだけの音楽だ。

タトゥーが魅惑的な彼女と電話を繋げると、すぐに部屋の奥からBGMが流れ込んできた。

「ごめんごめん、うるさかった?」と彼女は言った。

クソナードの声はハスキーで低くてボーイッシュな感じだった。それでも、どこか女の子らしさも見え隠れしているような声だ。

「ううん。大丈夫だよ」と僕は言い、「なんの音楽を聞いてた

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#4 タトゥーの入ったオタク女子|マッチングアプリ放浪記

#4 タトゥーの入ったオタク女子|マッチングアプリ放浪記

人は誰しもある程度一貫した「自分」というものを持っているはずだが、時として自己の中に矛盾が生じることがある。それは矛盾したアイデンティティとして立ち現れて、ある日突然僕らを驚かせる。

とまあ、こんな話とは関係ないかもしれないが、最近僕はタトゥーの入ったオタク女子にいたく惹かれている。

彼女のマッチングアプリでの登録名は「クソナード」という。アニメがとにかく大好きなのだそう。けれどそんな彼女の自

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#3 美女を誘ったら、逆に襲われた話|マッチングアプリ放浪記

#3 美女を誘ったら、逆に襲われた話|マッチングアプリ放浪記

居酒屋を出て、僕は彼女をホテルに誘った。

と、簡単に記述したが、誘った時のことはあまりよく覚えていない。相当緊張していたのだと思う。

僕は手に汗を忍ばせて、「2人きりで飲み直そう」とまあ、そんな趣旨のことを言ったと思う。もちろん断られた。(泣きそうになった。うぅ…)

でも簡単に引き下がれない。

2回、3回と、打診と拒絶されるのを繰り返しながら、渋谷道玄坂を徘徊した。ロッテリアを通り過ぎ、T

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#2 コミュ障男子が美女と呑んだ話|マッチングアプリ放浪記

#2 コミュ障男子が美女と呑んだ話|マッチングアプリ放浪記

この日、僕は「俺」になる。自分を変えるんだ。俺はオシャレで、俺は堂々としていて、俺は女の子を楽しませられる。

そんな「俺」に俺はなる。

その日、渋谷ハチ公前での待ち合わせだった。僕らはLINEでお互いの服の特徴を教え合い、ジャングルのような渋谷の雑踏をかき分けて彼女を見つけた。

ブルーがよく似合う。素朴でいて、それでいてどこか不思議な魅力を纏っている女の子を見つけた。

初めてアプリで会う女

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#1 泥酔女子と電話してみた結果|マッチングアプリ放浪記

#1 泥酔女子と電話してみた結果|マッチングアプリ放浪記

美女と対面すると、人は困ってしまうものだ。

マッチングアプリで初めて会った女の子が凛花だった。美女だった。黒髪が綺麗で黒目が大きい。そして彼女はやけに色のない目をしていた。そんなところに惹かれたのかもしれない。

ちなみに僕はといえば、女の子たちの写真を見ては早く会いたいと躍起になっていた。高速スワイプで女の子を選別し(ほんとにごめんなさい)自己紹介文もろくに見ていなかったと思う。(ほんとに男っ

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