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#1 泥酔女子と電話してみた結果|マッチングアプリ放浪記

美女と対面すると、人は困ってしまうものだ。


マッチングアプリで初めて会った女の子が凛花だった。美女だった。黒髪が綺麗で黒目が大きい。そして彼女はやけに色のない目をしていた。そんなところに惹かれたのかもしれない。

ちなみに僕はといえば、女の子たちの写真を見ては早く会いたいと躍起になっていた。高速スワイプで女の子を選別し(ほんとにごめんなさい)自己紹介文もろくに見ていなかったと思う。(ほんとに男って奴はこれだからダメなんだよな)

はぁ、相変わらずアホ丸出しだ。お前はち〇こで歩いているのか、と言わんばかりの愚かな姿だったと、今思えば思う(?)・・・大丈夫そ?^_^


でも新人ってのは、どこでも勢いが大事だ。愚直さが大事。なんてどっかのベンチャー企業みたいなことを言おうとしてやめた。まあそんなこんなで最初にマッチしたのが、凛花だったんだ。

僕は凛花に会いたい一心で、彼女にメッセージを送ることに決めた。メッセージは一言目が肝心要だ。ありきたりに「はじめまして!」なんか送っても他のメッセージに埋もれてしまうし、かといってインパクトを残そうと「もしかして天使?」なんて送ることも考えたが、そんな勇気は出なかった。

そして、大事な1通目をこう送った。


「電話すき?」


僕はこのひと言で、彼女との電話のアポを取った。

だが、電話のアポを取ったはいいものの、緊張するということを忘れていた。初めて知らない子と話すわけだ、この僕が緊張しないわけない。電車で席を譲るときでさえ緊張する男だ。

とりあえず質問リストをスマホにメモって、それを見ながら話すことにした。僕は必死だったんだ。

●振る舞い方
・遊び人っぽく
・余裕さを出す(沈黙を怖がらない)

●話すことリスト
・声を褒める(どんな声でも褒める、アイスブレイク)
・今日何してたか
・普段何をしているのか
・趣味の小説はどんなのが好きなのか(プロフィールから事前リサーチ済み)
・なんでアプリ「T」を始めたのか
・元彼について(とにかく共感すること!)
・今度会おうの打診

と、まあこんな万全の準備を整えて電話に臨んだのだ。

しかし、彼女はといえば、出張先でお酒を飲んでいたようで、とてもリラックスして、テキトーな話し方だった。

こんなに緊張している僕が馬鹿みたいじゃないか!


彼女はラフに、まるで久々にあった友達と話すかのようなゆるいテンションで話した。

「やっほー、はじめまして。」


・・・・・・か、可愛い。可愛すぎるぞ!!!(スマホをぶん投げる)

僕は唾の塊のようなものを飲み込んで、気合を入れた。

「や、やっほー笑、はじめまして。てか、声かわいいね。びっくりしたよ」

「そんなこと言ってー、どうせ他の子にもそう言ってるんでしょ?」

会話はなんとか進んでいった。

僕は依然として声を震わせるほどの緊張をしていて、まるで体の中にあるわけのわからないものが出口を探して肺の中を動き回っているような感覚だった。

そして追い討ちをかけるように、彼女の声の可愛さがますます僕を緊張させた。(がんばれ僕!遊び人になるんだろ!)

あぁ、こんなことなら高校の頃からもっと遊んでおけばよかった。もっと女の子と話し慣れておけばよかった…情けない。

彼女は酔いながらテキトーに話していたというのに、僕はなにをこんなに緊張していたのだろう。なんだか損した気になった。

「ねぇ、山田くんは暇なとき何してるの?」

「YouTubeとか見るよ。凛花さんは?」

「凛花でいいよ!」

「おう、そっか。凛花はYouTubeとか見る?」

「私もね、YouTube見るよ!コムドットとか、カノックスターとか笑」

「おおいいね!じゃあ、東海オンエアとかも見る?」

「東海も見るよ! 私はゆめまるが好き。山田くんは?」

「俺はしばゆーかな。しばゆーが変なことをする度に、妻子持ちってことを思い出すと笑いが止まらない」

「確かに、あの人妻子持ちなんだよね笑笑 あ、あとね、ヘビフロッグと気まぐれクックも私好きだよ!」

「ん? 食物連鎖とか好きなの?」

「そうかもしれない笑」と彼女は笑った。

しばらく笑っていた。ツボっている女性というのは、どうしてこれほどまでに愛おしいのか。不思議だ。


こんな風になんとか会話を続けた。僕は平然を装っていたが、とても考えながら話していたんだ。疲れた。

そして1時間が経ち、ベトナム戦争並みに泥沼化した拙い僕らの会話は、なんとか笑顔で終えることができた。

そう、なぜなら今度渋谷で会うことが決まったからである!!

道玄坂の「大衆酒場 ひまわり」という居酒屋で飲む約束をした。駅から徒歩5分圏内のところにあり、小綺麗で適度に洗練されているようなデザインだが、割と価格帯は安く、なんかちょうどいい感じの居酒屋だった。

だからそこを提案した。すると彼女は快諾してくれたんだ。あぁ、女神よ。女神は意外と身近にいたりするんだな。ありがとう。まずは第一の打診を突破した。


今となっては、彼女がどんな話をしていたのか、ほとんど覚えていないのだが、その時は阿川佐和子のように素晴らしい傾聴をしていたのだろう。


「おやすみ」で電話が終わると一気に緊張が解け、叫び声とため息が混じった謎の音が喉の奥から出た。

時刻は夜中の1時を過ぎていて、一階の窓から差し込む街頭の灯りを見ながら、僕はこれから始まるであろう冒険に心を躍らせていた。

渋谷という荒野をフィールドに、僕は自分の生きたいように、後悔のないように遊び尽くしてやるんだ。若さを謳歌してやるんだ。僕にだって、きっとできる。


次回、初対面の女の子と飲んで、その日のうちにホテルに誘った話をします。もはや倫理観など、かなぐり捨てました。だが、それでいい。

また次回も読んでくれたら飛び跳ねて喜びます。

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