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#4 タトゥーの入ったオタク女子|マッチングアプリ放浪記
人は誰しもある程度一貫した「自分」というものを持っているはずだが、時として自己の中に矛盾が生じることがある。それは矛盾したアイデンティティとして立ち現れて、ある日突然僕らを驚かせる。
とまあ、こんな話とは関係ないかもしれないが、最近僕はタトゥーの入ったオタク女子にいたく惹かれている。
彼女のマッチングアプリでの登録名は「クソナード」という。アニメがとにかく大好きなのだそう。けれどそんな彼女の自撮り写真には、腕に無数のタトゥーが垣間見えていて、しかもシーシャバーの店員をしているそうだ。そしてロックンロールな風貌で、魅惑的なお顔をされている。つまり可愛い。色気がある。僕はそのチグハグさに不思議な魅力を感じた。
自己紹介文をもっと読んでみると、どうやらHUNTER×HUNTERが好きらしい。これは気が合いそうだ。僕は小学生の頃からHUNTER×HUNTERと育ってきたと言っても過言ではない。むしろ育てられてきた。クラピカの鎖に憧れたこともあったし、ヒソカの真似をしてトランプできゅうりを切ろうとしたこともあった。もちろん水見式もやった。僕は変化系だった。
だから是非とも一度、彼女とHUNTER×HUNTERオタク同士話し合いたいと思ったんだ。きっとそれは楽しいだろう。
でも僕は最近自信をなくてしていた。というのも、前回凛花と会った以来、一度も女の子と会うこともできず、電話をしても彼女たちと会うところまではいかなかった。きっと僕のコミュ障が発動して、上手く彼女たちを楽しませることができなかったからだ。と思う。あぁ、なんて情けないんだ。お願いです神様、べしゃりの神様…。僕にトーク力をください。そして傾聴の女神様。僕に聞く力をください。
なんて夜な夜な枕を濡らしたこともあった。だがいつまでもナヨナヨしているわけにはいかねぇ。何度でも立ち上がれぇぇええ!そう、ゴン=フリークスのように!
そして僕は勇気を振り絞って、クソナードちゃんにメッセージを送った。
「HUNTER×HUNTERで何のキャラが1番好き?」
3日ほど経ってから、なんと返信が来た。
「ピトーだよ。」
ピ、ピ、ピ、ピトー!!!??可愛すぎる。「ピトーだよ。」の文字ですら可愛く見える。あぁ、相当嬉しくてこのそっけない文字列でさえキュートに見えてしまう僕は末期だろうか。
そして僕はこのチャンスを逃すまいと電話の打診をしてみた。(これをチャンスだと思える僕の能天気さを賞賛したいほどだ)
すると、その日の夜に電話をすることになった…!ちょっと待て、心の準備ができていない。この僕がタトゥーの入った美女と話した経験があるわけなかろう?
大学生活を地味に本を読んで暮らしてきたんだ。海賊のように新宿を飲み回る生活とは縁遠い暮らしをしていた。村上春樹と太宰治と宮台真司を好んで読んでいるような人間だ。そんな僕がクソナードちゃんと話すのは、とてもとても緊張するものなんです。
そして時刻は23時をまわった。
時は来た。彼女を楽しませる会話をしよう。
次回、クソナードとアニメの話をし、音楽を聴き、彼女のクソみたいな元彼の話で笑い合ったときの話をしよう。性描写はないよ(たぶん)
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