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にく

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豚肉の保水と保存

豚肉の保水と保存

カウンターから手を伸ばせば届く距離に厨房がある。隣の席の方から、「走る豚のローストマスタード添え」のオーダーが入った。店主の緒方さんは、冷蔵庫からミートラッパーに包まれた骨付きロースを取り出し、お客さんの目の前で切り出した。

洋食屋さんで、オーダー入ってから骨付きロースを切り出す店を僕は他に知らない。普通は、骨が付いていない状態のロースか、あらかじめカットしたものを用意している場合がほとんど。し

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豚肉の脱水と牛肉の枯らし

豚肉の脱水と牛肉の枯らし

すき焼き用は機械(スライサー)でスライスするのですが、虎ノ門の「あさい」は、手切りで4㎜にカットした近江牛のサーロインを使う。機械で切るより手切りのほうが、アクもでにくく繊維も崩れにくい。手間ではあるがおいしさを追求すればするほど手間仕事に行き着く。

前回、豚肉の保水と保存について、そして血統や餌は僕にとってはそれほど重要ではない、ということを書きましたが、少し補足すると、これは肉屋目線であり、

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熟成肉について

熟成肉について

2014年にブログに書いた熟成肉の記事が1039050PVとすごいことになっていますがコンパクトにまとめてみました。

①熟成香の正体はわかっていない食肉のおいしさにとっての重要な要素は、・味(硬さ、口ざわり、多汁性)・色調(赤身と脂肪)・香り(生鮮香気、加熱香気)⇒これらの要素を好ましい性質にするのが熟成。ただ、科学的にミオシンがどうとかアクチンがどうとか、いろいろありますが、実際のところどのよ

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 "乳酸発酵"による香りや味わいの変化についてのレポート(使い方/作り方/相性の良い食材)

"乳酸発酵"による香りや味わいの変化についてのレポート(使い方/作り方/相性の良い食材)

以前は乳酸発酵の論理を具体的に説明しました。今回はそれによって得られた効果(香りや味)についてのレポートになります。

苦労なく成功していれば良かったですが、ひと山、ふた山苦労があったので、同じ失敗をしない様、またどんなメリットがあるのか、乳酸発酵をするべきなのか 判断材料に使って頂ければと思います。

したがって、いつもの様な説明ではなく私の言葉で、なるべく柔らかい文章でお伝えしようと思います。

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お肉の構造について/分子生物学から見た、お肉の構造とは?

お肉の構造について/分子生物学から見た、お肉の構造とは?

料理において、美味しいハンバーグを作るために、一般的にはレシピや作り方を参考にすることが多いでしょう。しかし、その意味を理解し自分自身のアイデアで美味しい料理を作り出すことが、本質的には重要になります。

「肉汁を閉じ込めることは出来ない」これも時代遅れ!?最先端でいま主流の解釈とは?

「肉汁を閉じ込めることは出来ない」これも時代遅れ!?最先端でいま主流の解釈とは?

”肉の表面を強く焼いた壁を作っても、肉汁を閉じ込めることは出来ない”という説が、最近の常識になっていますね。

このような指摘がありますが、これも少し時代遅れの解釈になっています。

事の発端は、話題欲しさにそれらしいエンドポイントを作った事が要因です。研究者の世界ではよくあるようですが、反証に反証を重ねる、変な風潮が、世間に間違った知識を流布している可能性があります。

最近の解釈では、魚も肉も

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豚肉は、本当に「レア」で大丈夫なのか?論理的な根拠を元に”説明する義務”があります

豚肉は、本当に「レア」で大丈夫なのか?論理的な根拠を元に”説明する義務”があります

”牛肉”と”豚肉”の違い(レア)牛肉は表面を焼けばレアで大丈夫なのは、品質の問題からです。牛肉に関しては、中心部がレアであっても、表面を十分に加熱することで多くの細菌を殺菌できるため、一般的に安全だとされています。これは牛肉の病原体が主に表面に存在するためです。これは、食品衛生の観点からも違法とはなりません。

豚肉については、表面を焼けばレアでも大丈夫ですが、食品衛生の観点からは、中心まで十分に

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目線

目線

Droitの一皿、ジビーフのフィレ
凄いなぁ
おいしいとか、食感が、とか
他の言葉が出てこなかった。

食材の力が80%、あとの20%は料理人次第だと思っています。とは言っても食材頼りではないですよ。食材の力を引き出し20%を200%にするのが料理人の力です。それは技術だけではなく、お互いをリスペクトし、認め合い、心とか覚悟とかもね。

食材頼りと言うのは、肉にウニ乗せたりキャビア乗せたり、高級食

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