マガジンのカバー画像

11013の手紙に寄せて

772
11013でなければならない理由も、ないのだけれど。
運営しているクリエイター

#言葉

スクリュードライバー

スクリュードライバー

「うまくやれよ」以外にあるだろうか。上手に立ち回り、情に身を任せず、知恵をつかって、的確に判断しなさい。そんな多くのことをひと言でいうなら、ほかにどんなことばが値するか。とらえようによっては、「がんばれ」だって「幸運(健闘)を祈る」だって、もっと無責任に響くかもしれないがひょっとしたら「神のご加護を」といったことばにだって、似たようなニュアンスを見出せるかもしれない。いや、それはだいぶ違うよと思う

もっとみる
もっと、喜観を。

もっと、喜観を。

子どもができると、子どもを連れて行きやすそうなところに出かけていったりします。そうすると、やっぱりそこには、「あそこなら子どもを連れて行きやすそうだ」と同じように考えた人たちが集まります。で、そういう親たちを目にすることになるし、その親たちが連れてきた子どもたちのことも当然目にすることになります。子育てしている人って、いるもんだなぁなんてしみじみ感じますが、「子育てしている人」なんてものは、大昔か

もっとみる
わかりあっちゃいなくとも

わかりあっちゃいなくとも

先日、あるトークセッションのようなイベントへ足を運びました。そのイベントの登壇者の一人が、英語を話す人でした。私は全身全霊でその話し手の表情に、口元に、身振り手振りに、発する音声に注意を向けました。が、あまり多くは聞き取れませんでした。というか、ほとんどだめでした。でも、だめなりに「お、今<イミディアトリィ>って言ったな」とか思って、うんうん、断片的にいくつかの単語を私は聞き取っているなぁなどと自

もっとみる
ずっとハイなヤバイ人

ずっとハイなヤバイ人

めっちゃやばいね。
強調のことばは、つい言い過ぎてしまいますね。気持ちが高ぶっているのでしょうか、その瞬間の感嘆の速度感を表現したい欲求が、ついつい強調を盛ってしまいます。

「やばい」の始祖
そう、「やばい」をいつからか強調につかうようになっていました。私が考えたのではないけれど、いつの間にか自分も使っていましたね。もともと非常だとか緊急だとかの事態や状況、どちらかと言えば好ましく・望ましく

もっとみる
向こう側からの視点

向こう側からの視点

亡くなってしまった人から見た生きた人は、どんなだろう。ぼくも、亡くなったらその視点が得られるだろうか。今は生きているし、生きている人が想像する亡くなった人の視点しかぼくにはない。それは世界を俯瞰したり拡大したり自由自在に視点を操れるようなものなのだけれど、生きているぼくが想像している時点で(亡くなったことのないぼくが想像している時点で)、やっぱりそれは生きているものの視点でしかない。仮にぼくが亡く

もっとみる
歯は「磨く」ものか?

歯は「磨く」ものか?

おのれを磨く、というような言い方がありますね。「おのれを磨く」という言い方が一般的かどうかわかりませんが、「自分磨き」という表現なら、どこかで触れたことがあるという人が多いのではないでしょうか。

技を磨く、なんて言い方もするんじゃないでしょうか。磨くという概念を、いろんな表現に応用しているのですね。そのこと自体は、ことばの可能性の広がりをわたしに教えてくれます。

歯を磨く、というのは、

もっとみる
最強のヨーグルト

最強のヨーグルト

矛盾ということばの由来の話はけっこう有名ですよね。最強の矛と最強の盾、どちらが最強かと指摘されて、その両方の売り手である商人がたじろいでしまう話です。この、「では、その矛でその盾を突いてみよ(どうなるか?)」と言った人がすごいなと思います。商人のことばのおかしさに気づいたこと自体が、発明品みたいなものです。矛盾ということばひとつでおかしさ、食い違いを表現できるようになったのは、この発明品のおかげで

もっとみる
四季バテ、してます。

四季バテ、してます。

どこが悪いというほどのことでもないけれど体調がよろしくないことってありますよね。休む!という主張を認められるほどの大仕事をしたのでなくとも、だるい、ねむい、なんかつらい。休みを願い出るのも申し訳ないから願い出られないという程度の、よわぁい根拠。根拠のないつらさ。これの正体を夏バテと言って片付けてしまえるなんて、目から鱗が落ちる思いです。そうか、これなのね、夏バテって。すごい発明品ですよ、夏バテとい

もっとみる
空元気

空元気

大きな震災があったあと、有名な歌手がラジオか何かで言っていたことを思い出す。「お金がある人はお金を、ちからがあるひとはちからを、なんにもないひとは元気を出そう」といったようなことだった。歌手は、うまいこと言うなと思った。

元気ってなんだろう。ことばをばらばらにして、もとの意味を考えるのが趣味の僕は、「気になって」しまう。

元気は「元」の「気」と書く。「気」というと、何か見えないものかな

もっとみる
犬もアイス食えば棒に〈当たり〉

犬もアイス食えば棒に〈当たり〉

「犬も歩けば棒に当たる」の「棒に当たる」というところは、いまいちいいことなのか悪いことなのかピンと来ませんね。「いいか悪いか」で二極化してとらえようとしている、いまのわたしの姿勢がそもそも疑問視すべきかもしれません。いいか悪いかで語っていいことなんて、わたしが思うよりも少ないかもしれません。

「でしゃばると叩かれる」というのが、「犬も歩けば棒に当たる」の本来の(当初の)意味なのですね。そうす

もっとみる