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青木理『日本会議の正体』

青木理『日本会議の正体』

「日本会議」というものをご存知だろうか。
不勉強にして、私はそれをほとんど知らなかった。
この本を読んで、なんだか気が滅入るばかりだった。
いや、本そのものに対してではなく、日本会議に対して、である。

著者の結論いきなり著者の結論からで申し訳ない。だが、かなり強いインパクトを持って迫ってこないだろうか。

民主主義体制を死滅に追い込みかねない

本書を読みながら私も同じような危惧を抱いた。もちろ

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四天王寺 大古本祭り

四天王寺 大古本祭り

四天王寺 大古本祭りに行ってきた。
とんでもない程の人混みでもないが、大体はコンスタントに人がいて、どのテントにも、どの棚の前にも、何人かの人が常にいる。一番多いのは年配の男性。概ね、私よりも年配でいらっしゃる。探し方もとても熱心に見受けられる。その次に多いのは年配の女性。女性も私よりは年上の方が多いようだ。後は、私くらいの年代の人がいて、若い方もチラホラという感じだろうか。それから外国人の方もポ

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漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(2)

漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(2)

前回、漱石の『文学論』について触れたのだか、文庫本にある亀井俊介氏の解説に対する言及だけに終始してしまった。今度こそは「ジェイン・エア」について触れてみる。

もう迷わない。
もう道草しない。
ジェイン・エアに一直線に行く。
(大袈裟な・・・)

おっと、その前に。

ジェイン・エアをどうのこうの語るにあたって、やはりジェイン・エアがどういう小説なのか、たとえ一部であっても触れざるを得ない。それは

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漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(1)

漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(1)

近頃、漱石の話が多いんだが。

発端はシャーロット・ブロンテ著 阿部知二訳『ジェイン・エア』を読んだことがきっかけだった。それについてはこちらで。

漱石蔵書の『ジェイン・エア』も是非とも読んでみたいと思うものの、まずは『文学論』から。

漱石『文学論』を求めてまずは図書館で借りてみることにする。

近隣の図書館が2つあって、図書館Aに岩波文庫の『文学論』があることは知っていた。だが、その日は図書

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漱石の本棚

漱石の本棚

タイトル画像・・・
これを見た瞬間にただただ見とれてしまった。

これは空想でもなく創作でもなく、この世に、そしてこの日本に紛う方なく存在する本棚である。それは、

漱石の本棚

こちらのサイトから使わせていただいた。

漱石が生存中にこの通りに並べていたのかどうかはわからない。だが、少なくともこれらの本は漱石が事実所有していた本そのものであり、中を開くと(おそらくは、間違いなく)漱石が余白にペン

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まだ読んでないのに語ってみる『国語の辞典をテストする』

まだ読んでないのに語ってみる『国語の辞典をテストする』

先日、辞書に関する記事を書いた際に「暮しの手帖」に掲載された「国語の辞典をテストする」という記事を読みたいと、そう書いた。すると、なんと、Akioさんがこのような記事を届けてくださったのである。

もう、テンションは爆上がりで、
「読みたい」が
「読みたい!読みたい!読みたい!」
くらいにはね上がってしまった(笑)。

記事の後半でテストの要約を提示いただいていて、とてもわかりやすい。上手くまとめ

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コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

この感想を読書メーターに書いたのは、もう4年ほども前になる。こちらの本の感想である。

メリアム・ウェブスター社はアメリカ最古の辞典出版社であり、著者コーリー・スタンパーはウェブスター社の辞書編纂者である。

辞書の編纂者とは日本もアメリカも同じなんだなと、つくづく感じる。こつこつと用例を収集し、悶々と語釈に悩み、黙々と現代語に向き合う。そういう人たちだ。

さて。
本書の目次である。

Hraf

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漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

前回こちらの記事で、漱石が読書中の本の余白に書き込みをしていたことを書いた。

その書き込みをどうにも読みたくて、時々あるんだが、こういうことになると私は妙にシツコイ。寝る前にもまだ諦めきれず、考えてみれば『漱石山房』や『国立国会図書館デジタルコレクション』など、ピンポイントで探しすぎる。忘れていたGoogleという広大な検索ツールを。というわけで、検索バーに突っ込んでみた。

で、見つけたのが、

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漱石とジェイン・エア

河出書房新社の全集から阿部知二訳の『ジェイン・エア』を図書館から借りてきたのは訳を比べてみたかったからなのだが、気がつくとそんなことはすっかり忘れて文字を追うことを止められない。

阿部知二訳はハードカバー二段組、525頁。
大変に長い。

吉田健一訳は文庫635頁。

吉田健一訳はおそらく特に短いんだろうけど、阿部知二訳は特に長いように思える。全集の525頁で、ハードカバーでもあり、重量もたっぷ

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『辞書になった男』、そして辞書と私

『辞書になった男』、そして辞書と私


『辞書になった男』188頁以前より気にかけていたこの本を開いたのは日曜日で、その日一日でほぼ半分を読みきってしまった。翌日の通勤電車の中で、会社の昼休みで、やはり読み続けた。

そうしてさしかかった188頁。その中央の段落を切った後の五行の文章。

そのわずか五行の文章を読んだとき、まるで時間が止まったように感じた。時間も空間も凍りついたようで、そこにあるたった数行の文字をただひたすら凝視してい

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『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

言葉に関しても興味があって、辞書や校正に関する本はついつい読みたくなる。今回はこちらの本である。

とても寒い以前に、そういう話を聞いたことがある。見坊豪紀氏の書籍だったろうか。それを読んだとき、今度は私の方が飛び上がるほど驚いた。

なんで「とても寒い」に驚くんだ?

「とてもきれい」「とても美味しい」など、いつでもどこでもありそうな表現だ。どういうことなんだろう。

実は「とても」という言葉は

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「ジェイン・エア」阿部知二訳がどうにも読みたくなってきた

「ジェイン・エア」阿部知二訳がどうにも読みたくなってきた

「ジェイン・エア」のことをあれやこれや書いていたら、どうにも阿部知二訳を読みたくなってきた。ぼんやり読みたいを通りすぎて、無性に読みたくてたまらない。頭の心がウズウズするというか、胃の腑がモゾモゾするというか、腰が落ち着かないというか、もう、こうなるとじっとしていられない。

古書で安ければ手に入れたい。そう思っていくつか検索してみたんだが、「現在お取り扱いができません」のオンパレードである(どう

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シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』 吉田健一訳を語りつくす

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』 吉田健一訳を語りつくす

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』は愛読書と言っていいかもしれない。中でも吉田健一訳である。初めて読んだのは確か20代の頃で、その時に何故吉田健一訳を選んだのかというと書店の本棚にあったというそれだけでしかない。翻訳については長く気にせずにいたのだが、ある時、図書館で『ジェイン・エア』の別訳をパラパラとめくって、ほとんどのけぞった。先日、オースティンの『高慢と偏見』の翻訳を比較してみたが、そ

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ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 外国語を日本語に翻訳するということ

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 外国語を日本語に翻訳するということ

こちらの記事に刺激されて。

「外国語を日本語に翻訳するということ」などという御大層なタイトルを付けたものの、翻訳のなんたるかを私が理解しているわけではない。

ジェイン・オースティンやブロンテ姉妹のような古典的作品は、様々な方が翻訳を手がけられている。例えば、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』であれば、既に次のような訳がある。

高慢と偏見(平田禿木訳)

自尊と偏見(海老池俊治訳)

高慢

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