マガジンのカバー画像

Suger & Spice - フードエッセイ

15
日々、繰り返される食事は、異文化との接点のはじまり。食事やそれを取り巻く環境ひとつ、ひとつに、実は、智慧や文化、歴史が詰まっていることに気づいた時、当たり前に口にしていたものを見…
運営しているクリエイター

#フードエッセイ

おいしいと感じるメカニズム。食文化の一致とダシが秘訣

おいしいと感じるメカニズム。食文化の一致とダシが秘訣

「あっ、これいけるかもしれへん」

クアラルンプールに住みはじめて、半年が経った頃、ようやく口に合うものを見つけて、嬉しかった。

苦痛だったランチの時間から解放された瞬間だった。

マレーシアの甘くて、こってりした食事がどうも苦手だった。日本人はたいてい好きなバクテー(角煮みたいな)も、甘くて漢方くさくて、おいしいとは思わなかった。

しかし、ひとつ口に合うものがみつかると、不思議なことに、ひと

もっとみる
味噌汁さえあれば、世界のどこにいても生きていけると確信した日

味噌汁さえあれば、世界のどこにいても生きていけると確信した日

「味噌汁って、なんでこんなに、胃腸が落ち着いて、心にしみわたるんやろうか」

その日、わたしは身も心も、ずたぼろだった。10月は出張が多くて疲労困憊。大阪にはじまり、バンコク、ホーチミン、そして、ジャカルタと目が廻る

ジャカルタから、クアラルンプール市内にある自宅に到着した瞬間、肩から力抜けた。すぐにでもベッドに倒れこみそうになった。しかし、おなかもすいた。 なにか、体と心が落ちくつものを口にし

もっとみる
味覚で世界を知る。あたらしい味から広まる深まる世界

味覚で世界を知る。あたらしい味から広まる深まる世界

「さっちゃん、うどん食べれるようになったんやね」

鰹と昆布のお出汁の香りが漂う近所のおうどん屋さん。一時帰国の際、妹夫婦と3歳になったばかりのさっちゃんと訪れた

さっちゃんは、子ども用の器に入ったきつねうどんをペロリと平らげた。半年前は、うどんを一口も食べなかったから驚きである

うどんを、うまそうに食べるさっちゃんを見ながら、苦手だったタイ料理を克服できた瞬間を思い出していた

味覚の発達と

もっとみる
私たちは、なんのために食べるのか?インドのカレーから学んだこと

私たちは、なんのために食べるのか?インドのカレーから学んだこと

ほんのりとスパイスの香りが漂う食堂

わたしは、さつま芋のカレーとチャパティを目の前にして座っている

お腹を空かせたわたしは、ゴクンと唾をのみこんで、日々の食事のあり方について考えていた

ここはインド、リシケシにあるヨーガニケタンのアシュラム、すなわちヨガの道場

私は、定期的にここにやってきて1週間ほど滞在する。目的は、日々の暮らしの見直し、そしてカレーである

栄養と消化優先。アシュラムの

もっとみる
ポルトガルで生まれ、アジア育ったスイーツの歴史

ポルトガルで生まれ、アジア育ったスイーツの歴史

「サクサクのパイ生地につつまれたとろけんばかりのカスタードがたまらんわ」

ここはクアラルンプールのセントラルマーケット。風が激しく吹き荒れ、スコールが降ってきた。

たまたま見つけたポルトガル料理のカフェバーで雨宿り。わたしと妻は、エッグタルトをほおばっていた。

日本でも、一時期はやったポルトガル発祥のスイーツは、マレーシアにかぎらず東南アジアでも大人気。というより、暮らしの中にがっちり入り込

もっとみる
斬新なのになつかしい。かばん屋から転身したタイ料理店

斬新なのになつかしい。かばん屋から転身したタイ料理店

「こんな、食材の組み合わせってありなんや!」

食に保守的なタイ人が、こぞって通う革新的なタイ料理店があると聞いて、友人と行ってみた。

5年前に一号店がオープンしてから、口コミで広まった人気は、衰えしらず。今や、バンコク市内に8店舗をかまえる。

アメリカや日本からも声がかかっている勢いのある店だ。

その店の名前は、Phed Phed

タイ語で、辛いを意味する。その名のとおり、スパイシーな東

もっとみる
タイらしいホスピタリティ。なごんだひととき

タイらしいホスピタリティ。なごんだひととき

BBQの店、定休日やったわ。場所決まったら、またら連絡する。

タイ人の友人から電話がかかってきた。

日が沈んだにもかかわらず、うなだるような暑さと渋滞。わたしは、バイクタクシーで待ち合わせ場所に向かっていた。

無秩序に入り乱れる車。そのすきまに、車体をねじ込むバイクタクシー。それでも、なかなか進まない。

渋滞と暑さで、頭がどうにかなりそうだ。

しばらくするメッセージが届いた。どうやらホテ

もっとみる
学生も政治家もみんなとりこ!バンコクの昔ながらの中華麺

学生も政治家もみんなとりこ!バンコクの昔ながらの中華麺

やっぱり、あの店しかないよね。

プロイさんとオーさんは、互いの顔を見合わせてそう言った。

友人にさそわれて、パーティに参加した。知らない人ばかりのパーティでいささか緊張したが、優しいご夫婦からおいしいヌードル屋を教えてもらい緊張の糸がほどけた。

人見知りな私は、初対面の人たちと何を話そうかこまっていた。そうすると、友人がいきなり、タイのヌードル、すなわちクイッティアオについて話しはじめた。

もっとみる
ちくわのグリーンカレーと大阪のタイ人

ちくわのグリーンカレーと大阪のタイ人


えっ、グリーンカレーにちくわはありなん?

本場のタイ料理が食べられると思っていたわたしは、がっつり日本の食材が入った、なんちゃってタイ料理にがっかりしたのだった。

さかのぼること20年前。わたしは、大阪は堺市にあるとあるタイ人の家にお邪魔していた。

その方の名前は、ヤイさん。友人のタイ語の先生であった。当時、わたしは、大学のフィールドワークで、在阪のタイ人の暮らしを調査していたのだ。

もっとみる
近所のインド料理屋でカレーとロティの相性を教えてもろた

近所のインド料理屋でカレーとロティの相性を教えてもろた

カレーとロティにも、相性があるんだよ。

店員さんにそういわれて、ちょっとビックリした。
カレーだったらなんでも合うと思っていたからだ。

つい先日、
インドの旅が急遽、キャンセルになった。

仕事がはいってしまい、5年ぶりのインドも、泣く泣くキャンセル。

行けないとなると、ますます行きたくなるのが、人間の性。仕方ないので、あることを思いついた。

----  近所のリトルインディアへいこう!

もっとみる
ホーチミンのニセモノとホンモノのカニ料理店

ホーチミンのニセモノとホンモノのカニ料理店

ホーチミン1区の名店
「俺らが通っていた店の方がニセモノやったん?」

5年以上通っていた店がニセモノだと分かって、空いた口がふさがらなかった

ホーチミンへ行く度に、かならず立ち寄る店がある
1区のはずれにあるその店は、いつも地元の人で大賑わい

日本人も、タイ人も、フィリピン人の友達もみんなその店が大好き。わたしの仲間内では、ちょっとした話題の店なのだ

カニの身がたっぷりはいったアツアツの春

もっとみる
友情のガパオライス

友情のガパオライス

アクシデントの朝「あのね、薬物所持の疑いで警察に捕まったんだ」

まだ、辺りは暗いというのに、枕元の携帯電話が鳴り響いていた。タイ人の友人であるココから電話がかかってきて、飛び起きた

その日、ポーランド帰りのソムチャイを空港に迎えに行って、モーニングをしようと約束していた

お互い仕事が忙しくて、なかなか会う暇もなく、全員が揃うのは、仕事がはじまる朝の束の間だけだった

寝ぼけていたので、何が何

もっとみる