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あけみや書店

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暁美家蔵書の紹介から一般書籍、学術同人、特別展図録、ラノベタイトルまで、あけみやの好みと必要のすべてを公開。 過去執筆物の販売もあります。
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2020年5月の記事一覧

無暖房・無冷房の家に住む

無暖房・無冷房の家に住む

冬にリビングの隣の和室で飼っていたハムスターが死んだ。最初は低体温症から仮死状態で入院。その年はもち直してくれたが、次の冬には続き間にして暖房を使っていたのに、高齢だったこともあって助からなかった。

この悔しさから、一般的な住宅構造の欠陥に気づき、書籍で多くを学んで、床下に潜り、天井裏に上がり現実を確認した。
木造家屋のヒートブリッジが生命を脅かすほど熱を奪うし、結露するガラスよりもアルミサッシ

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五分後の世界

五分後の世界

パラレル・ワールド側でも、我々が今生きているこの世界の存在を予測して逆にパラレル・ワールドが実在するのか研究しているとしたら。

珍しく私が3〜4回読みした小説。
初めて読んだ村上龍だ。

主人公が朦朧と、ただ行列の中を歩きつづけるところからシーンは始まる。
それは脈絡なくパラレル・ワールドに放り込まれた主人公が、そのことに何の自覚もなく、周りからも彼が突然そこに現れたことが次第に明かされる。

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遥かなる星

遥かなる星

このところ、コロナ防疫が終わらない予測や、パンデミック後に変容する世界予測が取り沙汰されるが、そんな時思い起こすのがこの作品だ。

『征途』と並ぶ私の大好物。
佐藤大輔さんの、途中で世界線が変わった現代史小説だ。今回はどうしてもパンデミック後と、全面核戦争後がだぶったことから、三部作中の第1巻と2巻を紹介。

まず表紙から目を引くのだが、イラストレーターとして、また漫画家としても一つの地位を築いて

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脳の右側で描け

脳の右側で描け

絵を描く時に、脳のどちら側を使っているか考えたことがあるだろうか。

右脳〈型〉思考と左脳〈型〉思考のことなのかと問われれば、遠からずとも近からずだろう。
私の経験から言い表してみるなら、回転する人形のシルエットが右回転に見えたり、左回転に見えるアレかもしれない。
ありがちな紹介では、右に見えるあなたはこういうタイプ、左に見えるあなたはこういうタイプ、といった心理テスト。しかしこれは集中して見ると

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女子大生が立ち上げたプロスポーツのビジネス戦略ストーリー

女子大生が立ち上げたプロスポーツのビジネス戦略ストーリー

というタイトルは表紙の左隅で、著者名と一体にまるで副題のようなレイアウトだ。
そしてこの物語の中心が、帯の上にタイトルのような体裁でレイアウトが施された「剣シング」。

どう見てもラノベでもなく漫画の表紙なのだが、これは書店の〈経済・ビジネス書〉コーナーに置かれたマーケティング書だ。

すでに8年前のものだが、当時はやはり表紙の意外性が話題となり、本文中に語られる商品ネーミングのノウハウとその実例

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首を整えると脳が体を治しだす

首を整えると脳が体を治しだす

整形外科でも整体でも解決しない愁訴。
今夜は根本から解決に導くチャンスをお知らせすることになる。

島崎先生は、青梅で有名な治療院の院長だ。
全国からその道のカイロプラクターが、先生の講演に集まるほど。
ネクタイとベストをお洒落に着こなし、治療にあたる。

とにかく首しか触らない!かなり前、当時の妻がしつこく改善しない腰痛に悩まされ、
この評判のオフィス・シマザキに一度か二度行って改善した様だった

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帝都東京・隠された地下網の秘密

帝都東京・隠された地下網の秘密

日々使われる地下鉄網が、異なる目的で過去に建設された秘密のトンネルを改造したものだったら?
最近オープンした地下構造施設が、戦前戦中の要塞だったら!?

それだけで昔の男の子の気持ちを鷲掴みするかもしれない。ところが本当に、日常乗り換える地下鉄ターミナル駅が海軍の大深度要塞跡だったりする、そんな話が満載の本書。

私の出会いは15年ほど前だと思う。
なんの気なしに図書館で手にとったところから、取材

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百貨店ワルツ

百貨店ワルツ

今年は数カ月間、文京区に駐在して谷根千界隈に住み着いていた。
週に一回社用車で西多摩に帰るのだが、そんな生活の中、古書店でふと背表紙が目につき、手に取ると魅入られてしまった。

ホテルに戻ると枕元に安置して、度々開く。
そして帰る前日には車で保管して、荷物で傷まないようにしていた、思い入れのある一冊となった。
この可憐な絵柄、色彩が素晴らしく、ポーズの一つ一つに解剖学的な美しさを見いだせる。

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勝つ投資 負けない投資

勝つ投資 負けない投資

将来のことを考えた投資が、
ごく一般の心得になって久しい。
起業して高収入を目指すことと並んで、若い世代から注目されるのが株式を始めとする投資だ。

しかしそこには成功と失敗がつきまとうのだが、
投資は博打ではない。
失敗があるのは〈資金を投げてしまった〉
ことであって投資ではないのだ。

本書にこんな一節がある
「投機家ではなく投資家になろう」

投機として行動すれば、そこには成功と失敗に別れる

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ヒッチハイク女子 人情列島を行く!

ヒッチハイク女子 人情列島を行く!

実はこの本は自分で買っていない。
著者の池田知晶さんから送っていただいたものだ。
なぜかと言うと、我が家がこの中に出ているから。

それは真夏だっただろうか、うだる暑さに脱水を引き起こしかねない、危険を感じたほどの気候。
電車で都内から帰った私は、いつも通り青梅駅を出て、バスにも乗らず歩いて帰ろうとしていた。
すると青梅駅前に似つかわしくない、芸能人系のかわいい子がヒッチハイク…、いやいやさらに困

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平和憲法を疑う

平和憲法を疑う

出会いは図書館のログ落とし処分だった。
学生時代から私は荒巻義雄氏の〈国家機械〉という概念に触れており、日本国憲法が「平和憲法」などという左翼論壇の演出ではなく、あくまでアメリカ合衆国の中で、新たに占領された準州の憲法なのだという現実を意識していた。
もちろん敗戦による押しつけだから払拭せよというつもりもないが、戦力不保持の規定について、準州なので州兵隊を持たないし、対外戦争は連邦軍の仕事であるこ

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スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

正直言ってこの香山リカという人には不信感がある。その素行や信念のもとに極端な暴挙におよぶなど、一種カルト障碍としか思えないのだが、本書は私がカルト問題と、その心理病理を整理するのにとても多くを学んだものとしていまだに好感の一冊だ。

冒頭に著者自身が学生との間で「生まれ変わり」を信じているのかという調査を行ったことを手始めに、そこに何が起こっているのか丁寧なフィードワークを行った経緯が語られる。

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古墳探訪 空から見た古墳

古墳探訪 空から見た古墳

古墳にロマンを感じる人は多い。
地上で現地に佇めば、その迫力と造形の優美さ、失われたデザイン手法、そして何より巨大な人力のみの土木事業であることに圧倒される。

だが古墳の造営における最大の謎は、平面プランに込めたデザインの意味だ。
それは特に前方後円墳における論争で、どうして鍵穴のような特異な意匠が生まれたのか、21世紀が四半世紀を迎えようという現在もなお、空想の域を出ない。

さてこの平面が完

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江戸城外堀物語

江戸城外堀物語

秋庭俊『帝都東京・隠された地下網の秘密[2]』の引用が手に取るきっかけだった。
東京の地下空間開発が江戸時代に遡ることができると主張する氏が取り上げたのは、上水暗渠としては大きすぎる遺構の紹介。

本書は江戸城の堀普請が壮大な地形改造だったことを時系列にそって詳しく繙いており、谷に設置した構造物を埋設して平地を造成する一方、山を削り深い堀を掘削するなどの大改造によって江戸が形づくられたことがわかる

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