古墳探訪 空から見た古墳
古墳にロマンを感じる人は多い。
地上で現地に佇めば、その迫力と造形の優美さ、失われたデザイン手法、そして何より巨大な人力のみの土木事業であることに圧倒される。
だが古墳の造営における最大の謎は、平面プランに込めたデザインの意味だ。
それは特に前方後円墳における論争で、どうして鍵穴のような特異な意匠が生まれたのか、21世紀が四半世紀を迎えようという現在もなお、空想の域を出ない。
さてこの平面が完成している様だが、リアリティを以て感じるには、上空から確認する他はない。遠く離れた山岳地から見下ろしてもそのことは適わず、航空機から急な角度で見ることが必要になる。
そんな贅沢な願いを少しだけ叶えてくれるのがこの文庫本だ。
著者の鈴木氏は、かの「歴史と旅」の編集長をなさっていた方でセスナ機をチャーターして空撮を敢行。代表的な古墳群はもとより存在が目立たなくとも、謂れをもった大小様々な古墳までも空撮した。
約20年前の発行だが、本編内はふんだんなカラー写真と略地図で、文字通り読者を立体的な疑似体験に引き込んでくれる。
畿内の多くの史跡にとどまらず、四国・九州までも網羅、私にとって嬉しいのが埼玉はじめ関東一円の古墳群にもページ数を割いていることだ。
この小さな文庫本で知識もイメージも膨らませて、せひお近くの古墳に足を運んでみることをお薦めする。
入手可
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