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百貨店ワルツ

今年は数カ月間、文京区に駐在して谷根千界隈に住み着いていた。
週に一回社用車で西多摩に帰るのだが、そんな生活の中、古書店でふと背表紙が目につき、手に取ると魅入られてしまった。

ホテルに戻ると枕元に安置して、度々開く。
そして帰る前日には車で保管して、荷物で傷まないようにしていた、思い入れのある一冊となった。
この可憐な絵柄、色彩が素晴らしく、ポーズの一つ一つに解剖学的な美しさを見いだせる。

形式は漫画もあるが、イラスト集とも言い切れず、多分言い得ているのは「創作系同人誌」。それのかなり豪勢なものだ。
あとがきを見ると案の定、以前同人発表した作品を再構成したものだという。

これを見てほしい

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扉絵の前に合紙を入れる設計なのだが、なんとかの合紙は包装紙。架空の百貨店という舞台の包装紙を作ってしまっているのだ。
紙も印刷も、これは本物のデパート包装紙だ。

繊細・優美な内容ながら、これはあまりに熱すぎだろう。その有り余った熱は、百貨店の広告集のページを多く割き、年代や内容についてキャプションまで入れるという、無駄にリアリティを醸す徹底ぶりだ。

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さらに驚いたことに、奥付は活版印刷風、微妙にカラー印刷を活かすといった、最後の最後まで熱さを忘れない構成だ。

毎日アマゾンリンクを付けているので
ぜひ手にとって堪能してみてほしいと思う。

入手可

百貨店ワルツ
マツオヒロミ
実業之日本社 2016年

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