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TABLO連載【加筆修正】

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ニュースサイト「TABLO」に連載をした過去記事に加筆修正をしてまとめています。
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#思い出

勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖

勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖

勝手にかわいそうなストーリーを他人にあてはめてしまう
 寒くなる時期に思い出すのは、大きな鍋で煮込まれたおしょうゆの匂い。

 まだ幼いころのお話しです。

 お母さんに連れられていったスーパーの駐車場に、玉こんにゃくの屋台が出ていました。冬が近づくとやってくるその屋台は、家では見たことがないような大きな両手鍋からグツグツと白いゆげを立ち上らせていて、子どもながらにおいしそうだなと思ったものです。

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釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

ドヤ街で初めて手に入れたあだ名 これは数年前の終戦記念日翌日の出来事です。

 わたしはとある"おっちゃん"がどうしても行きたいと言っていた土地のことを何年も探していました。(そのおっちゃんは「あおさん」と名乗っていて、わたしも「あおさん」と呼んでいるので、今後は表記を「あおさん」とします)

 あおさんは、大阪の西成・釜ヶ崎で出会った友人です。

 初めて会ったときに、「成宮アイコ」というわたし

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嫌な記憶に癒されてしまうから幸せになれない。

嫌な記憶に癒されてしまうから幸せになれない。

懐かしいと聞いて思い出す世界には、だれもいない「なつかしさって、やっぱり感情というだけでは片付けられないものかもしれないよね」

インドカレー屋さんでナンをちぎりながら、机をはさんだ向こう側に座っていた彼はポツンと言いました。

Rooftopというニュースサイトで書いている連載 「『なつかしい』という感情はもう少し手加減してくれないと困る」 を読んで、「おもしろかった」と言ってくれたことから、か

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自分が世界から不在になりたかったころ

自分が世界から不在になりたかったころ

自分の不在を求めていた夏になると流れてくる、幼いころの夏休みの思い出や切なすぎる恋愛の歌を聴いてると、ぶわーっと風景や情景が浮かび、「ああ、この気持ち、懐かしい…エモい…」と思い出して泣きそうになるのですが、ふと考えてみると、それは全て実体験でもなければ実写でもなく、今まで見てきたアニメやマンガの風景だということに気がつき、愕然としました。

思えば、これまでわたしは、世界に対して自分の不在を求め

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同世代に会わないように、イトーヨーカドーの紳士服売り場のトイレの前の白いベンチに座っていたわたしへ

同世代に会わないように、イトーヨーカドーの紳士服売り場のトイレの前の白いベンチに座っていたわたしへ

定期的にくる「やばい! 取り残されている」という波絶対地雷だろうな、と思いながら買った新発売の缶ジュースを片手に、スマホアプリに、「20時 改札待ち合わせ」と書いてふと思いました。大人になると遊ぶ約束の時間が遅くなります。夕方から会う約束をすることが普通になったのは、何歳からだったか思い出せません。

定期的に、かつて『有名ネトア』(※ネットアイドル)と呼ばれたひとのブログを読みに行きます。そこに

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