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【短編小説】 微かな恐怖 1月の孤独
誰と一緒にいても、孤独、という時がある。
どうして世の中はこんなに寂しいんだろう、と、嘆息をつかずにはいられない。
2000年の1月、私は奇妙な精神状態に陥っていた。街にショッピングに出かけても、家族と食事をしていても、恋人と会っている時でさえも、私はいつもやりきれないほどの孤独を感じていた。
自分が本当に「生きている」という、実感が湧かない。例えば、他人の人生を、他人の体を借りて、仮
【短編小説】微かな恐怖 秋の空とせせこましい部屋、ティーカップに潜む何か
あんなに暑い日が続いていたのに、ある雨の日を境に、夏はどこかへ去ってしまった。
雨がやむと、途端に冷涼な風が街を包んだ。
夏の陽射しと熱気にうだっていた人々を突然我に返らせるようなその風は、大陸の遥か彼方で生まれ、狭い海峡を渡ってやって来ては、夏の間じゅう街に澱み続けていた湿った空気を遠くの海へ押し返した。
秋の風は、いつも私に、ある特別な感情を湧き上がらせる。その年の一番始めの秋の風