【長編小説】 初夏の追想 18
……古い昔の記憶の断片を掘り起こし、繋ぎ合わせてひとつの物語にするという行為は、実に頼りなく、愚かしい作業のように思われる。最初私はずいぶんと意気込んでこの物語を語り始めたものだったが、書き進めていくうちに、段々と自分の記憶の取りとめのなさや、あんなに強烈に心に焼き付いていると思っていた出来事の数々を、三十年の歳月がいかに無残に削り取っているかという現実に気づくようになった。特にこれから語ろうとしている物事は、私の頭の中でバラバラに分散し、それぞれの繋がりを明確にすることが