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内輪の必要性

内輪の必要性

人にとって群れとはなんなのか。人はなぜ群れを成し、内輪と外部の境界を設けようとするのか。内輪はなんのために必要なのだろうか。

前回紹介した『コミュニティを問いなおす』で広井良典さんは、コミュニティ=共同体を、個体と集団全体のあいだにさまざまな形の中間的な集団が存在する重層社会において、その中間的集団の役割を果たすものと捉えている。

個は内輪を介して社会に対峙する中間的な役割の集団としてのコミュ

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発達障害当事者研究 ゆっくりていねいにつながりたい/綾屋紗月+熊谷晋一郎

発達障害当事者研究 ゆっくりていねいにつながりたい/綾屋紗月+熊谷晋一郎

人間って、ほんとうはこんなにも多様な情報、選択肢、条件があふれかえった複雑な状況を生きているのかとあらためて考えさせられる。

ただ、僕らはその複雑さに気づかずにいる。
それが幸運なのか不幸なのかはよくわからない。

けれど、もし、これほど多様な選択肢を日々いちいち記憶させられて判断のときに気にしなくてはならず、さらにそれを元に自身の行動を定めなくてはならないのことが日常的なことだったとしたら、き

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掌編小説 | 眠れぬ夜に塩をひと匙

掌編小説 | 眠れぬ夜に塩をひと匙

「りんご」

 定石通りはじめたその3文字には、1分も経たないうちに既読がつけられた。

「胡麻豆腐」

 程なくしてから画面に浮かんだ吹き出しを見て、感嘆の溜息が漏れる。それは、どう考えたって完璧な回答だった。意図も意味さえも問うことなく、しかもほぼ万人が返すであろう「ゴリラ」ではない絶妙なワードチョイス。明らかに今朝教室で見た “都こんぶの人” らしい独特のユーモラスな片鱗を感じて、しずかな部

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表側、裏側 / 「俺の家の話」と「生きるとか死ぬとか父親とか」について

表側、裏側 / 「俺の家の話」と「生きるとか死ぬとか父親とか」について

・カードの表側

本題に入る前に、まずは1月クールの「俺の家の話」がとんでもなく素晴らしかったという話が欠かせない。

放送前から、話題と期待しかなかったドラマだった。何よりも大きな長瀬智也の退所前ラストを飾る作品、必須事案であった西田敏行の共演、彼らと長年タッグを組んだ宮藤官九郎脚本。そのどれもが本編の良し悪しには関係のない “世間と視聴者側の脚色” ではあったのだが、それを抜きにしたとしても作

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かわいい人にかわいいと言うのは、僕としては結構ありえない

かわいい人にかわいいと言うのは、僕としては結構ありえない

(このエッセイは微妙にではありますが前回のエッセイと繋がっています)

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 移動教室の夜は、どうして好きな人の話になるんだろう。
 中2のときもそうだった。僕は口を割らなかったが、2つ隣の布団で寝ていた同級生は僕と同じ人を好きだと言った。彼は騒がしくもなければ静かでもない、嫌われてはいないがモテてもいない、つまりは普通の中学生だった。
 会話はヒソヒソと続き、就寝時間を軽くすぎた頃、

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なぜ周りの女性は女性蔑視について行動を起こさないの?気になっている男性のあなたへ

なぜ周りの女性は女性蔑視について行動を起こさないの?気になっている男性のあなたへ

「世間では森発言が騒がれてるが、自分の周りの女性たちは女性蔑視について表明しない。なぜ何も行動しないのか?」何人かの男性がこのようにコメントされているのを拝見しました。女性蔑視について課題意識を持ちながら、匿名でしか発信してない当事者として、よく聞く疑問に個人的な体験ベースでお答えします。

1. なぜ女性は身の回りの女性蔑視について表明しないの?シンプルに女性蔑視について発言すると叩かれるからで

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化粧について

 私はお化粧が好きです。せっかくお化粧に性別の要らなくなった世の中に生まれながら、あいにくの野暮天で、自分でお化粧をする事はありませんけれど、恋人が口紅を直している姿などは、見とれるように眺めています。

 今ではデパートのお化粧売り場も、とうに女性の城ではなくなって、男の私も随分とうろうろし易くなりました。ときたま冷やかしていると、タッチアップを受けている男性もちらほらと居て、私なども声をかけら

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