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サン・ジョルディの日にて
「ただいま帰りまし……えっ、福永せんせ!?」
いつも通り、仕事を終えて帰宅すると
「おかえりなさい!ふふ、待っててよかった!」
玄関に、私が帰るのを待ち構えていたらしい福永せんせの姿。
「渡したいものがあるんだ!ささ、早く上がって!ほら!」
勢いにのまれ、靴も脱ぎ捨てリビングに進むと、そこにはテーブルクロスでおめかししたローテーブル。
その上には愛らしいピンクのバラが生けられた花瓶と、
デコレエションもあらばやと
「おかえりなさ……わっ!どうしたんですかこれ!!」
ドアを開けたら、樅(もみ)の木の化身。
いや、違った。
「ただいま〜、ドア開けてくれてありがとうね」
樅の木の鉢を抱えた、福永せんせがいた。
「ラジオ局の知り合いがね、くれたんだ。今年は一回り大きいのを飾るからって」
「なるほど、それで……」
突如として家に現れた、大きめの樅の木。
床に置くと、鉢の部分を含めて私の鼻先あたりまであった。