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デコレエションもあらばやと
「おかえりなさ……わっ!どうしたんですかこれ!!」
ドアを開けたら、樅(もみ)の木の化身。
いや、違った。
「ただいま〜、ドア開けてくれてありがとうね」
樅の木の鉢を抱えた、福永せんせがいた。
「ラジオ局の知り合いがね、くれたんだ。今年は一回り大きいのを飾るからって」
「なるほど、それで……」
突如として家に現れた、大きめの樅の木。
床に置くと、鉢の部分を含めて私の鼻先あたりまであった。
樅の木なんて、駅前のどでかいやつしか見たことないから、意外とこのサイズ感のもあるんだなぁ…なんて。
さっきまで家に来るとは思わなかったクリスマスの象徴を、ついまじまじと見てしまう。
「……なんか、すごいですねこれ。こんなまじまじと見たの、初めてかも」
「僕も。深い緑色で、何だか冬って感じだよねぇ」
「確かに。クリスマスきたー!って感じなりますねぇ…」
福永せんせの「そうだねぇ」という声に、優しい笑いが交じる。
冬の陽だまりみたいだなぁ…とつい口許をゆるめてると、ふと福永せんせが「あ、そうだ!」と声を上げた。
「ん、どうしました?」
「この樅の木、せっかくだからデコレエションしないかい?」
「この木を…、ですか?」
「うん、キラキラした飾りとか、星とか付けてさ。せっかくの樅の木なんだから。ね、そうしようよ!」
まるで子どもみたいに、目がキラキラしている。
楽しいことを思いついた少年のような目。
さながら、星をぎゅっと詰めたみたいに。
「な、なるほど…でも、家に飾りは……」
「飾りがないなら、これから買いに行ってもいいじゃないか!ねえ、やろうよ。この樅の木を飾って、菓子なんかも買ってさ、一緒にクリスマスを祝うとしようよ!」
熱量につい、押し負けてしまう。
何せ、いつもはお布団にくるまってうとうと微睡んでいる福永せんせが、この寒空の下出かけてもいいとまで言うんだ。
こんなにも目をキラキラさせて。頬を赤くして。
こんなにも、楽しそうに。
つい私が、このきらめきに応えたいとすら思えるほどに。
「……よーし、じゃあいっちょ、飾り探しからやりますか!」
「やったあ!うんうん、そう来なくっちゃね!」
そうと決まれば巻き直してこないと!とマフラーを手に鏡のある方へ駆けていく福永せんせ。
まるでお出かけ前の少年のような姿は、とても愛おしくきらきらしていて。
今日は最高の飾りを探さないとなぁ、なんて。
彼のきらめきに感化されて、私もつい気合を入れて、アウターを羽織って鞄を手にする。
何だか今日は、楽しくなる予感がする。
「……よし、できた!ほら、早く行こう!置いてっちゃうよ!」
「わ、早い!待ってくださいよ、今行きますからっ!」
こんなにもワクワクにきらめく貴方と、クリスマスの準備に繰り出すのだから。
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