セナ@福永せんせと私の話

福永せんせと過ごす、柔らかくて暖かい日々の空想を書いています。 今、彼と生きていたら。…

セナ@福永せんせと私の話

福永せんせと過ごす、柔らかくて暖かい日々の空想を書いています。 今、彼と生きていたら。今、彼と親しい仲なら。 そんなちょっとしたやわらかい空想を、楽しんでもらえれば幸いです☘️🕊‎𓈒𓏸

最近の記事

追分、初仕事のあとに

「………いよっし、終わったぁぁぁ!」 思い切り声をあげて、ぺしゃっと畳に大の字で倒れる。 と、階段をたんたんっと登る音。 「ふふ、終わったんだ?下まで声が聞こえてたよ」 顔をのぞかせるのは福永せんせ。 どうやら先に湯を浴びてたらしく、さっぱりした顔だ。 淡い紺の浴衣に、生成の帯がやわく眩しい。 微笑ましい、という言葉の通りの表情に、つい顔が赤らむ。 「あ、すみません…こっち来て初仕事やったんでつい……」 「いいんだよ。初仕事、お疲れ様だったね」 ぽんぽんと頭、もとい

    • 「夏」へ旅立つ、その前に

      「ただいま帰りました〜」 「うん、お帰りなさい」 いつも通りの、帰宅の挨拶。 だけど、今日はちょっぴり違う。 「……福永せんせ、」 「……うん、」 「お仕事、全部やり切りました!」 「うん、よろしい!」 ぴしっ!と宣言すると、福永せんせもにこっと笑う。 「よかったあ、ちゃんと全部終わったんだね」 「はい!もう…早めに出勤してやったかいがありました!」 「よかったよかった、じゃあこれで安心して出られるね」 「はい!」 私が、早めに出勤してオフィスでの仕事を片してき

      • 君を讃え、甘いばらを

        「お待たせいたしました、『花咲く苺のクリームソーダ』です」 丸いガラス皿の上に、ことっと音を立ててクリームソーダが着地する。 曙の空で色をつけたようなピンク色のソーダの上に、淡い黄色を帯びたバニラアイス。 さらにその上には名前の通り、真っ赤な苺で作られた赤いバラが一輪咲いている。 「ありがとうございます。……さ、食べて」 柔らかく光る三日月のような笑顔と声で、福永せんせが促す。 「あ、えと………」 「…あれ、苺は苦手じゃなかっただろう?」 「あ、はい。や、でもそう

        • 帰路にて、すこやかなるを願う

          カタン、カタン。タタン、タタン… 夕方だなんて分からないような、淡い青の空。 私と福永せんせを乗せた電車が、その空の下を緩やかに駆けていく。 傾斜のあれこれなのか、時折小さく跳ねる車輌が 子供の慣れないスキップみたいで、不思議と心地いい。 「……ふふ。せんせ、寝ちゃいましたね」 神社で茅の輪くぐり、もとい「名越の大祓」をした帰り。 梅雨時の暑さと、少し長く歩いたのがあったのか 福永せんせはすっかり夢の中だ。 私に寄りかかる体は、規則正しくやわらかな寝息を立てている。

        追分、初仕事のあとに

          ふたりの夏の、準備の話

          「いよいよ、だね」 「ええ、いよいよですね」 福永せんせと2人、ノートに書いたチェックリスト。 夏服、下着、靴下、眼鏡…といった日常のものから、先日お迎えした大きなプリン型にフィルムカメラ、デジイチ、スケッチブックに水彩絵の具まで。 我ながら、なかなか様々だなぁと、見ながら思わず笑みが零れる。 「あ、笑ってる」 ふに、と福永せんせの指が私の頬を突く。 顔を見れば、玉あじさいの花のような優しい笑顔。 「いやぁ…毎年、やりたいことの分だけ荷物が増えるなぁって」 「いいこと

          ふたりの夏の、準備の話

          おいで、僕だけの

          'Come on, my precious' ときどき、福永せんせはこんな風に私を呼ぶ。 生まれてこの方、こんなにも美しい言葉で呼ばれたことなんてなかった私には、最初は衝撃だった。 大方、誰かに呼ばれるときは苗字に「さん」付けか、名前に「ちゃん」付け。 日本の風土がそうさせるのか、いわゆる「我が愛」のような特別な呼び名とはとんと縁がなかったように思う。 せいぜい、小説や海外の映画で見るくらい。その程度だった。 でも、そんな私に、福永せんせはとびきり美しい形容詞の呼び名

          甘いワクワクをお買い上げ

          「ねえねえ、あっちに凄い本があったよ」 電車とバスを乗り継いで来た、大きな書店。 どんな小説が出ているか気になって文庫の棚を見ていた私に、福永せんせが何やらワクワクした面持ちで近寄ってきた。 新たな発見に目がきらきら輝いていて、真昼の太陽みたいだ。 「凄い本……ですか?」 「うん、今の雑誌…というのかな?ああいうのもあるんだなぁって、驚くようなすごい本なんだ」 「なる…ほど……?」 どうやら、雑誌と呼ぶにはちょっと違う感じの本らしい。 だが、「ああいうのもある」とい

          甘いワクワクをお買い上げ

          明日を研ぎ澄ましながら

          じゃっ、じゃっ、じゃくじゃく。 じゃっ、じゃく、じゃっじゃっ。 ちょっと力強く、回転回転、反回転。 福永せんせが、お風呂を済ませている間。 その間に、明日の朝のお米を研ぐのが私の日課だ。 リズミカルに、ちょっとだけ力を入れて、じゃくじゃくと。 しばらく研いだら、今度はお水を入れてぐるぐると。 そしてまたお水を捨てて、じゃくじゃくじゃく。 そんなことを何度か繰り返す。 静かで穏やかな、不思議な時間。 じゃくじゃくという音のなか、私まで研ぎ澄まされるのか 色々思い出した

          明日を研ぎ澄ましながら

          代わってあげられなくたって

          げほ、げほと激しい咳の音。 ほんのりと赤く染まった顔。 「はぁ…っ………、はぁ……」 「あわわ…!せんせ、お白湯いります?」 バニラエッセンスを垂らした、甘い香りのお白湯。 かつて福永せんせが教えてくれた「落ち着く味」。 「うん……ありがとね、助かるよ」 「どういたしましてです…あ、熱いので気をつけてくださいね」 苦しさを和らげてくれれば、なんて願いつつ、そっと手渡す。 ここ最近の激しすぎる寒暖差と、昨日の急な雨で 福永せんせはすっかり風邪をひいてしまった。 鼻

          代わってあげられなくたって

          サン・ジョルディの日にて

          「ただいま帰りまし……えっ、福永せんせ!?」 いつも通り、仕事を終えて帰宅すると 「おかえりなさい!ふふ、待っててよかった!」 玄関に、私が帰るのを待ち構えていたらしい福永せんせの姿。 「渡したいものがあるんだ!ささ、早く上がって!ほら!」 勢いにのまれ、靴も脱ぎ捨てリビングに進むと、そこにはテーブルクロスでおめかししたローテーブル。 その上には愛らしいピンクのバラが生けられた花瓶と、 柔らかい光沢を称えたベージュが美しい1冊の本。 そして、それを収める用らしい函。

          サン・ジョルディの日にて

          「何もしない」をする日の話

          ぽかぽかと、暖かな日差し。 柔らかいお布団の感覚。 そして、愛おしい人の体温をじわりと受け止める背中。 「和みますねぇ…」 「だねぇ、穏やかで、心地いいなぁ……」 私と福永せんせは、昼下がりの時間をお布団で過ごしていた。 そもそものきっかけは、昨夜のことだ。 「『何もしない』をする日、かい?」 「はい……職場で勧められまして」 今週は忙しかったからか、ついつい疲労が溜まっていた。 そのせいで、いつもはしない凡ミスを重ねてしまって。 で、見かねた同期に勧められたの

          「何もしない」をする日の話

          あなたが隣にいる限り

          ふふふ、と楽しそうに笑う声。 「幸せ」という言葉を体現したみたいな表情。 優しく私の手を包む、愛おしげな手のひら。 1日の終わり、2人で入るお布団の中。 彼の笑顔がふわりと咲く。 「福永せんせ、上機嫌ですね」 そう微笑みかければ 「うん!当たり前だよ」 そう言って目の前の表情がますます和らぐ。 「だって、こんなにたくさんお祝いしてもらえるなんて、思わなかったからさ。しかも君と仲のいいあのご夫妻も来てくれて!」 そういえばそうだったなぁ、とお昼のひと時を思い出す。

          あなたが隣にいる限り

          私なりの、「幸福論」

          彼の、全てが愛おしい。 私の肩にもたれかかったときの身体の重さも、 お酒を飲んで歌うように語るときの口調も。 暖かなお布団にくるまるようなとびきりの優しさも、たまに出る幼い子どもみたいなわがままも。 執筆が上手くいかないときのムスッとした仕草も、 美味しいものを食べて思わず緩む表情も。 朝起きるときちょっとだけ口から漏れる寝言も、 眼を見つめて告げる「愛してる」も。 それが、すべて素顔で、すべてありのままだって 心を拗らせて、人に疑い深くなった私にだって分かるから。

          私なりの、「幸福論」

          「可愛い」の乱

          「ねえ、『格好いい』じゃないのかい?」 「………へ?」 はたと手を止めて、福永せんせを見る。 ちょっぴり不機嫌そうな顔。 いじけてるような、むくれてるような。そんな表情で、福永せんせは続ける。 「だから、『可愛い』じゃなくて『格好いい』じゃないのかい?」 どうやら、私は「格好いい」を強請られているらしい。 目の前の、こんなにも愛らしく慕わしく、愛おしい人に。 「『可愛い』は君みたいな人のためにあるんだから。僕には『格好いい』だよ。『格好いい』。分かってくれないかな?

          或いは、あなたの幼年さえも

          「たーだいまぁっ!」 家のドアを開ける音と陽気なテノール。 空気にまじるお酒の匂い。 「あ、福永せんせ!お帰りなさい」 夜9時、ご友人とお酒を飲みに行っていた福永せんせが帰ってきた。 ほんのり赤い、ふにゃふにゃな笑顔が、ただただ愛らしい。 いかにも楽しそうな彼から鞄とコートを受け取り、それぞれ片付けながらお話を聞く。 「ニコニコですねぇ、楽しかったですか?」 「うん!久々に石川さんと会えたりして、すごーくね!」 石川さん…あぁ、福永せんせの年上のご友人さんか。 「

          或いは、あなたの幼年さえも

          【挿話】 空想のみなもと その1

          実はここまで読んでいただいたお話、ただの空想という訳ではなく、元ネタがあるものも一定数ございます❀.*゚ それぞれちょこちょことあげていくので、ぜひぜひ併せてご覧くださいまし♪ デコレエションもあらばやと…「夢百首 雑百首」 福永せんせの歌集「夢百首 雑百首」より、「クリスマス」の一首を題材にしてみました。 福永せんせのお茶目で可愛い姿が、三十一文字から見えてくるような一句。 あまりに愛らしく、愛おしい句だったので空想を広げてみました❀.*゚ ちなみに、「デコレエシ

          【挿話】 空想のみなもと その1