セナ@福永せんせと私の話

福永せんせと過ごす、柔らかくて暖かい日々の空想を書いています。 今、彼と生きていたら。…

セナ@福永せんせと私の話

福永せんせと過ごす、柔らかくて暖かい日々の空想を書いています。 今、彼と生きていたら。今、彼と親しい仲なら。 そんなちょっとしたやわらかい空想を、楽しんでもらえれば幸いです☘️🕊‎𓈒𓏸

最近の記事

甘いワクワクをお買い上げ

「ねえねえ、あっちに凄い本があったよ」 電車とバスを乗り継いで来た、大きな書店。 どんな小説が出ているか気になって文庫の棚を見ていた私に、福永せんせが何やらワクワクした面持ちで近寄ってきた。 新たな発見に目がきらきら輝いていて、真昼の太陽みたいだ。 「凄い本……ですか?」 「うん、今の雑誌…というのかな?ああいうのもあるんだなぁって、驚くようなすごい本なんだ」 「なる…ほど……?」 どうやら、雑誌と呼ぶにはちょっと違う感じの本らしい。 だが、「ああいうのもある」とい

    • 明日を研ぎ澄ましながら

      じゃっ、じゃっ、じゃくじゃく。 じゃっ、じゃく、じゃっじゃっ。 ちょっと力強く、回転回転、反回転。 福永せんせが、お風呂を済ませている間。 その間に、明日の朝のお米を研ぐのが私の日課だ。 リズミカルに、ちょっとだけ力を入れて、じゃくじゃくと。 しばらく研いだら、今度はお水を入れてぐるぐると。 そしてまたお水を捨てて、じゃくじゃくじゃく。 そんなことを何度か繰り返す。 静かで穏やかな、不思議な時間。 じゃくじゃくという音のなか、私まで研ぎ澄まされるのか 色々思い出した

      • 代わってあげられなくたって

        げほ、げほと激しい咳の音。 ほんのりと赤く染まった顔。 「はぁ…っ………、はぁ……」 「あわわ…!せんせ、お白湯いります?」 バニラエッセンスを垂らした、甘い香りのお白湯。 かつて福永せんせが教えてくれた「落ち着く味」。 「うん……ありがとね、助かるよ」 「どういたしましてです…あ、熱いので気をつけてくださいね」 苦しさを和らげてくれれば、なんて願いつつ、そっと手渡す。 ここ最近の激しすぎる寒暖差と、昨日の急な雨で 福永せんせはすっかり風邪をひいてしまった。 鼻

        • サン・ジョルディの日にて

          「ただいま帰りまし……えっ、福永せんせ!?」 いつも通り、仕事を終えて帰宅すると 「おかえりなさい!ふふ、待っててよかった!」 玄関に、私が帰るのを待ち構えていたらしい福永せんせの姿。 「渡したいものがあるんだ!ささ、早く上がって!ほら!」 勢いにのまれ、靴も脱ぎ捨てリビングに進むと、そこにはテーブルクロスでおめかししたローテーブル。 その上には愛らしいピンクのバラが生けられた花瓶と、 柔らかい光沢を称えたベージュが美しい1冊の本。 そして、それを収める用らしい函。

        甘いワクワクをお買い上げ

          「何もしない」をする日の話

          ぽかぽかと、暖かな日差し。 柔らかいお布団の感覚。 そして、愛おしい人の体温をじわりと受け止める背中。 「和みますねぇ…」 「だねぇ、穏やかで、心地いいなぁ……」 私と福永せんせは、昼下がりの時間をお布団で過ごしていた。 そもそものきっかけは、昨夜のことだ。 「『何もしない』をする日、かい?」 「はい……職場で勧められまして」 今週は忙しかったからか、ついつい疲労が溜まっていた。 そのせいで、いつもはしない凡ミスを重ねてしまって。 で、見かねた同期に勧められたの

          「何もしない」をする日の話

          あなたが隣にいる限り

          ふふふ、と楽しそうに笑う声。 「幸せ」という言葉を体現したみたいな表情。 優しく私の手を包む、愛おしげな手のひら。 1日の終わり、2人で入るお布団の中。 彼の笑顔がふわりと咲く。 「福永せんせ、上機嫌ですね」 そう微笑みかければ 「うん!当たり前だよ」 そう言って目の前の表情がますます和らぐ。 「だって、こんなにたくさんお祝いしてもらえるなんて、思わなかったからさ。しかも君と仲のいいあのご夫妻も来てくれて!」 そういえばそうだったなぁ、とお昼のひと時を思い出す。

          あなたが隣にいる限り

          私なりの、「幸福論」

          彼の、全てが愛おしい。 私の肩にもたれかかったときの身体の重さも、 お酒を飲んで歌うように語るときの口調も。 暖かなお布団にくるまるようなとびきりの優しさも、たまに出る幼い子どもみたいなわがままも。 執筆が上手くいかないときのムスッとした仕草も、 美味しいものを食べて思わず緩む表情も。 朝起きるときちょっとだけ口から漏れる寝言も、 眼を見つめて告げる「愛してる」も。 それが、すべて素顔で、すべてありのままだって 心を拗らせて、人に疑い深くなった私にだって分かるから。

          私なりの、「幸福論」

          「可愛い」の乱

          「ねえ、『格好いい』じゃないのかい?」 「………へ?」 はたと手を止めて、福永せんせを見る。 ちょっぴり不機嫌そうな顔。 いじけてるような、むくれてるような。そんな表情で、福永せんせは続ける。 「だから、『可愛い』じゃなくて『格好いい』じゃないのかい?」 どうやら、私は「格好いい」を強請られているらしい。 目の前の、こんなにも愛らしく慕わしく、愛おしい人に。 「『可愛い』は君みたいな人のためにあるんだから。僕には『格好いい』だよ。『格好いい』。分かってくれないかな?

          或いは、あなたの幼年さえも

          「たーだいまぁっ!」 家のドアを開ける音と陽気なテノール。 空気にまじるお酒の匂い。 「あ、福永せんせ!お帰りなさい」 夜9時、ご友人とお酒を飲みに行っていた福永せんせが帰ってきた。 ほんのり赤い、ふにゃふにゃな笑顔が、ただただ愛らしい。 いかにも楽しそうな彼から鞄とコートを受け取り、それぞれ片付けながらお話を聞く。 「ニコニコですねぇ、楽しかったですか?」 「うん!久々に石川さんと会えたりして、すごーくね!」 石川さん…あぁ、福永せんせの年上のご友人さんか。 「

          或いは、あなたの幼年さえも

          【挿話】 空想のみなもと その1

          実はここまで読んでいただいたお話、ただの空想という訳ではなく、元ネタがあるものも一定数ございます❀.*゚ それぞれちょこちょことあげていくので、ぜひぜひ併せてご覧くださいまし♪ デコレエションもあらばやと…「夢百首 雑百首」 福永せんせの歌集「夢百首 雑百首」より、「クリスマス」の一首を題材にしてみました。 福永せんせのお茶目で可愛い姿が、三十一文字から見えてくるような一句。 あまりに愛らしく、愛おしい句だったので空想を広げてみました❀.*゚ ちなみに、「デコレエシ

          【挿話】 空想のみなもと その1

          ある朝のはなし

          朝が、きた。 太陽も寝坊する、そんな冬の日に、朝が来た。 太陽もどうやら出てきたようで、高く澄んだ空から柔らかい陽射しが私と福永せんせの顔にそっと差している。 「福永せんせ、朝ですよ」 頬をふに、と指で突けば 「んぅ…もう少しだけ………」 そんな寝ぼけた声が返ってくる。 ちょっと眉を寄せて、布団を引き寄せる手。 やだやだと首を振る顔。 子どもみたいで可愛いなぁ、なんて、つい思ってしまう。 「もう少しですか?」 「うん……もう少し………」 「分かりました、じゃ

          いっぱい食べる、君が好き

          「いっぱい食べる君が好き」 この歌、言い得て妙…いや、「歌い得て妙」だなあと、思う。 「んむんぐ…んぐっ……、うん!美味しい!」 お雑煮の餅に大きくかぶりつく姿も、 「あ、これも食べちゃおうかなぁ」 色とりどりのかまぼこや桜の形の人参を箸で摘む仕草も、 「んんん…ローストチキンとサラミ、どっちから行こう…」 こうして、美味しいお肉を前に悩む仕草も。 すべてが、こうも愛おしいのだから。 「……よし、ローストチキンからかな。…ってあれ、君は食べないの?」 「えっ?…あ

          いっぱい食べる、君が好き

          愛色のお菓子

          「ただいま帰りました!」 「うん、お帰りなさい。今日も1日お疲れ様だったね」 福永せんせのお帰りなさいが、今日も身に染みる。 今日は年末に向けて、また諸々捌いてきたから尚更だ。 「ありがとうございます…外寒かった、リモートにするんでした……」 「もう、だから『今日は家じゃないのかい?』って聞いたのに」 鼻もこんなに赤くして、と苦笑される。 頬を包む福永せんせの手が、温かくて心地いい。 「年末は少し気温上がるって聞いてたのになぁ……」 「気温が上がっても、冬は冬だからね

          明滅するを、あきもせで

          ちかちか、きらきら。 クリスマスツリーの電飾が、柔らかな夕焼けのような色をたたえてついたり消えたり。 ジンジャークッキーの形や、キャンディケーンの形のオーナメントも、ちかちか光るやわい橙に照らされて、優しい色に光っている。 「綺麗ですねぇ…」 「だねぇ、綺麗だし、可愛らしいなぁ…」 私はホットココア、福永せんせはホットワイン。 思い思いの飲み物を手に、ソファでふたり寄り添いあう。 ちくたく、ちくたく。 ちかちか、きらきら。 秒針の音と、電飾の光が、何だかリズムを取っ

          明滅するを、あきもせで

          デコレエションもあらばやと

          「おかえりなさ……わっ!どうしたんですかこれ!!」 ドアを開けたら、樅(もみ)の木の化身。 いや、違った。 「ただいま〜、ドア開けてくれてありがとうね」 樅の木の鉢を抱えた、福永せんせがいた。 「ラジオ局の知り合いがね、くれたんだ。今年は一回り大きいのを飾るからって」 「なるほど、それで……」 突如として家に現れた、大きめの樅の木。 床に置くと、鉢の部分を含めて私の鼻先あたりまであった。 樅の木なんて、駅前のどでかいやつしか見たことないから、意外とこのサイズ感のも

          デコレエションもあらばやと

          冬にまどろむ

          時刻はお昼12時。ちょうど1日の折り返し。 朝のひんやりした空気が少し和らいで、幾許か心地いい時間帯。 この季節にしては珍しく暖かで、ストーブも要らない。 窓から差す陽の光は柔らかく澄み切ってて、何だか清々しい。 にも関わらず、福永せんせが起きてこない。 まさか、ヒートショック?心臓発作? それとも持病が……? 怖くなってドアが開いた形跡のない部屋に駆け込んだら、そこにはすやすや眠るせんせの姿。 念のためにそうっと近づいてみれば、規則的な寝息の音と上下する肩の動きも確