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おいで、僕だけの

'Come on, my precious'

ときどき、福永せんせはこんな風に私を呼ぶ。

生まれてこの方、こんなにも美しい言葉で呼ばれたことなんてなかった私には、最初は衝撃だった。

大方、誰かに呼ばれるときは苗字に「さん」付けか、名前に「ちゃん」付け。
日本の風土がそうさせるのか、いわゆる「我が愛」のような特別な呼び名とはとんと縁がなかったように思う。
せいぜい、小説や海外の映画で見るくらい。その程度だった。

でも、そんな私に、福永せんせはとびきり美しい形容詞の呼び名をくれた。
それも、朝露がきらきら光るような、美しい響きのをだ。

その事実が、私にはとても嬉しくて。
今もこうして、私を呼ぶ朝露の音に頬を緩めながら、彼に擦り寄っている。

「……あれ、いつになく今日は上機嫌だね」
アイリスの花のような、異邦の薫りのシャツで私を抱きしめて、福永せんせは優しくささやく。

「えへへ……いや、『貴重な人』なんて呼ばれて、幸せ者だなあって感じまして」

「そうかい?嬉しいなぁ。…沢山沢山、また呼びたくなるよ」

君は僕にとって貴重で、大切で、可愛い人だから。
甘く柔らかい、蜂蜜のような声が私を溶かす。

こんなにも、こんなにも。
甘くて柔らかくて、きらきらした気持ちをくれる。
たったひとつの、朝露のような呼び名で。

「たくさんたくさん、呼んでくださいよ。…何回だって、こうして、笑顔でお傍に参りますから」
幸せに身を任せ、腕の中で笑えば、彼が愛おしげに笑みを返すのが見えた。

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