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私なりの、「幸福論」

彼の、全てが愛おしい。

私の肩にもたれかかったときの身体の重さも、
お酒を飲んで歌うように語るときの口調も。

暖かなお布団にくるまるようなとびきりの優しさも、たまに出る幼い子どもみたいなわがままも。

執筆が上手くいかないときのムスッとした仕草も、
美味しいものを食べて思わず緩む表情も。

朝起きるときちょっとだけ口から漏れる寝言も、
眼を見つめて告げる「愛してる」も。

それが、すべて素顔で、すべてありのままだって
心を拗らせて、人に疑い深くなった私にだって分かるから。

「………ふへへ」

「………?どうしたの?」

ああ、そうして、また首を傾げる仕草も。

「や、その……福永せんせが愛おしいなぁと思いまして」

「……急に照れるなあ、もう。どうしたの?」

そうやって、照れたときに見せる反応も。

「笑わずに聞いてくれます?」
「勿論。当たり前だよ」

今ここにある陽だまりみたいな笑顔も、
優しくて確かな愛のあふれる声も、言葉も。

「私ね、福永せんせがここに生きてるってだけで、幸せって感じるんですよ」

「そうなの?…嬉しいなぁ。まるで、踊り子みたいだね」

「『私も好きよ。でも、お金なんかくれなくたって好きよ』…でしたっけ」

「そうそう、よく覚えてるね。偉い」

そう言って、私の頭を撫でる手のひらも、

「いざ言われてみると、照れるなぁ。…でもね、やっぱり嬉しい。僕もそうだから」
「此処に、僕の隣にいてくれてありがとうね」

そう、私にやわく落とす口付けも。
私を抱きしめる体温も。
春もののシャツから香る、お揃いの柔軟剤の香りも。

全部、全部が。
素顔で見せてくれる、その全部が愛おしい。
いつまでも、隣で見つめていたいと願うほどに。

ああ、どこかの有線で聞いた、あの曲が響く。

"時の流れと空の色に 何も望みはしないように
素顔で泣いて笑う君の そのままを愛してる故に"

"あたしは君のメロディーやその哲学や言葉、すべてを守り通します。"

"君が其処に生きているという真実だけで幸福なのです。"

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