記事一覧
【読書】高石宏輔『口下手で人見知りですが、誰とでもうちとける方法、ありますか?』
ご著作に触れると、いつも感じることがあります。高石宏輔さんの筆致に目が沿うと、しとしと降りしきる春雨にくるまれるような、優しくてなま暖かい体感のようなものが訪れると。おのれの肉体に親密な時間が、訪れると。
書籍を好む方であれば、ある種の選ばれた文字のつらなりに目を沿わせるおりに、こめかみがほぐれるような心地になることが、よもやまとした読書体験のなかでうまいぐあいに、まるでその時だけのように感じら
関わるだけ傷つけてくる人と生きるには【劇評】モダンスイマーズ『悲しみよ、消えないでくれ』
2018.06.13 モダンスイマーズ『悲しみよ、消えないでくれ』@東京芸術劇場シアターイースト、マチネ
蓬莱竜太の「句読点三部作」第2弾、再演。
死んだ妻の父親が経営する山小屋に、2年間居候を続ける男。命日の夜、かつての山岳部仲間や山屋が集まって、奇妙な罵りあいが始まる。
おまえ、本当にカズハのことを愛していたのか?
もう本当のことを言いなよ。なんで彼女が独りで山を降りたのかーー。
『来れば? ねこ占い屋』発刊イベントにジャングルを見た!
そのお姿はタロット占い師、またのお姿はコミック監修者、さらなるお姿は古本&占いの店ジャングルブックスご経営ーー。
各界ご活躍のタナミユキさんの新刊、『来れば? ねこ占い屋』(小学館)刊行記念イベントに伺いました。
こちらのお店では購入特典として、吉田戦車さん書き下ろしのねこカードが先着の方にプレゼント。そして今日は、イベント限定、ワンコインタロット占いもしてもらったよ!
そもそものことの始ま
東京女のカープ熱狂録 その5【人にやさしく 】
「カープファン」と呼ばれることについて、この1年でプラスした考え方のフレームをごく個人的エッセイにしました。
2016年9月10日。25年ぶりのリーグ優勝。それから1年が経った。
こつこつとした、細かく果てないチーム内の努力や運や罵声や奮起やマネジメントやつまりあらゆる意味で「プロ野球」と呼ばれるひとつの目的のために戦う広島東洋カープは、月曜日……つまり「基本的にはゲームのない」今日の
書評『声をかける』高石宏輔
内気なナンパ師の日々。これは一人ひとりが捧げるだろう、《出会い》という名の祈りを綴る、純文学だ。
『声をかける』高石宏輔
晶文社 2017.07.20
対人恐怖症の20代の青年が、孤独を抱えながら4000円を握りしめて艶やかな都心のクラブにおどおどと入り、初めてだろうナンパをする。物語はこのおどおどとした内省から起こされて、その内省の静かさと息遣いとトーンのまま連綿と、甘い雨がしとし
「蟹味噌を焼かないと死ぬ」病
あれからどれだけの夜を越しただろうか。村を焼かれ、森へと追われ、なぜを問う暇も許されぬまま、子どもの頃からそこだけには立ち入るなと厳命されてきた密林の奥に飛び込んだ。
悲鳴を背に走り抜いたモリタは、ぽかりと空いた巨木のウロに身をひそめ、ただひたすらに数日を過ごした。飢えはもう大した問題ではなかった。つらいのは、乾きだった。このまま喉を張り付かせておれは死ぬ。光はもうさほどモリタの目に刺激をく
夜が明けたら『西』へ行け
ひとにより目覚めのルーティン、儀式はそれぞれだと思うのだけど、わたしの場合は、こう。
あくびのラジオ体操のように朝焼けの縁側でApple musicを起動して、ラップトップやiPhoneに文字を打ちはじめる。もやもやとした思いつきだったり、するべきリストだったり、昨夜寝かせたもののリライトだったり、残す文字列は日によって違うけれど、儀式なのは毎朝変わらんと思う。
今朝がたのBGMの始まりは
プリファブ・スプラウトの「永久」を求めて
絶望じゃないなと思った。
わたしが世界三大ソングライターのひとりと慕う、パディ・マクアルーン。1980年代に主な活躍を果たしたパディおじさん率いるポップグループ、Prefab Sproutに関わる書籍をーー。
新刊の。『ミュージックマガジン』でよく知られた渡辺亨さんという、日本の著者の。和書として。ポストで受け取れてしまうような、2017年は絶望じゃないなと思った。
小包を開けて
プロ野球ファン、BIG BANG@東京ドームに行く。-魔法少女になれなかったわたしたちは-
アイドルコンサートのペンライトの意味がようやく分かった。これは魔法少女になれなかったわたしたちが生まれ変わるための王子様のキスだし、気持ちを表すタクトだし、希望だ。
日本シリーズも終戦を迎え、話題は侍ジャパンかトレードか、はたまたトライアウトだろうという11月。東京もんの夏フェスマニアでカープファンの三十路女がBIG BANGの東京ドーム公演に行った。
初めてのアイドルコンサート。初めての
東京女のカープ熱狂録 その4 -日本シリーズ第3戦「松山の後逸」-
日本シリーズ3回戦、広島東洋カープ黒田博樹ラスト先発試合、札幌ドーム、8回裏。日本ハム中田翔がレフトへ浅く運び、走り抜いた松山のグラブが間に合わなかったその瞬間。カープはあっけなく逆転されました。6回まで痛みを押して投げぬいた、黒田の守った勝ちが、その一瞬で消えました。
あかん、と思いました。テレビの前で松山に大きな声を上げてしまいました。それはかなり激しく汚い言葉となりました。
テレ
新海誠『君の名は。』聖地巡礼ザ・ドキュメント ~35歳独身男性が、泣きながらあの子を探して夜の東京を走りぬけた軌跡~
※おことわり 微量のネタバレ要素を含むので、作品ご鑑賞後を推奨します。ストーリーには踏み込みません、図版は後半が多めだぞ!
えらいことになった。数日前のことである。文芸仲間であり読書狂の35歳コンビ、純と実。こいつら2人が新海誠の最新長編『君の名は。』を観終わったところで、封切り初回を鼻高々に鑑賞済みのわたしと合流していざアニメ夜話……のはずだった。
22時の地下鉄をゆく。ちょうど居酒屋まであ