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【超大傑作!仕事モチベ爆上がり!クリエイター志望や業界人は必見!創作(制作)愛に満ち溢れた笑いと涙ありの人生のバイブル!「アニメか…」と食わず嫌いするそこのあなたちょっと待った!アニヲタじゃない実写畑に住むボク史上過去最高の超神アニメ更新!?】 SHIROBAKO

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けして釣りタイトルではない。クリエイターの人ならジャンル問わずに必ず刺さる。一般の人にはどうだろうか、いや、必ず届くと思う。ボク自身の価値観もだいぶ揺らいでいる。アニメでこんなにも心を揺さぶれ、自分自身の価値観や生き方にも影響を及ぼしそうなのは人生で初めてだ。

ボク自身は実写畑で働く人間であることを前置きしつつ(そしてアニヲタじゃないことも。どっちかと言えばアニメにはかなり疎い)、そんなボクが人生で観てきた数々の作品(映画だドラマだ実写やアニメジャンル問わず)の中で一番好きかもしれない。

さて、何から書いて行こうか。なんなら、ここから先何も読まずに本作を観て頂きたい気持ちでいっぱいなのが本音である。

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このアニメにはっきりとした主人公は存在しない。登場人物全員主役。(とボクは解釈している)。それは人生がみんなそれぞれが主役であると同じように……

一応、物語の軸となっているのは高校時代アニメ同好会に所属し、アニメ制作をしていた5人の女性。5人は先輩後輩多少の年齢差はありつつ、中の二人は同じアニメ制作会社に就職し、一人は制作(デスク周りの制作に関する諸々の調整係?)、一人はアニメーター(描き手)として現場で実戦的な見習い仕事をしている。一方、一人は、声優志望。仕事はまだなく、バイトで生計を立てている。一人は、アニメの中でも3Dアニメーションを担当する仕事に就き、もう一人はまだ大学生で、シナリオ作家を目指している。そんな5人は、大きく言えば同じアニメ業界の中で四苦八苦しながら暮らしているわけで。

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そんな本作のストーリーテラーを担うのは、武蔵野アニメーションで制作進行を担当する入社1年目の宮森あおい。制作進行という仕事は、制作の一番の下っ端。スケジュールを調整したり、外注の原画を受け取りに行ったり、運転したり、現場に立ち会ったりと、つまりは「何でも屋」だ。この物語の舞台は、そんな宮森あおいが働く小さな老舗(?)のアニメ制作会社を中心に描かれる。

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本作の物語の構成は前半と後半で大きく分かれる。久々のオリジナルアニメの制作に、ある「事故」をきっかけに干されかけていた監督や、その監督の舵やスランプに振り回されるスタッフが悪戦苦闘をする前半戦。(アニメ作りの制作過程や役職分けを順序立てて説明してくれる)。後半戦は、前半戦の苦難を乗り越えたスタッフや成長を遂げた若手スタッフ(宮森あおい含む)が、更なる大きい「超メジャー原作漫画」のアニメ化を目指し、またまた悪戦苦闘しながらも、前半で広範囲に散りばめられた伏線の点と点が、実に自然な形で一本の線に繋がっていく。

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この監督役の木下 誠一が、またなんともリアル過ぎて胸が痛い。「監督」と聞くと、頼り甲斐ありながらも乱暴(ワガママ)に指揮をとるような姿が一般イメージだと思うが、この監督は何とも腰が低い。その腰の低さも、謙虚さもそうなのだが、過去のトラウマで自信が喪失気味なのが大きい。そんな監督を、良い意味で監督として崇拝せず、スタッフみな同等な感じが、なんともリアルだ。ボクは自身の職業柄としても、この立場が低く、あくまでも中間管理職感の強い木下監督に感情移入が止まらなかった。ボクも脚本を待たせたり(本作の場合は絵コンテだが)、時に落ち込んだり、調子に乗ったり、色々な物理的な現実(主に予算やスケジュール)や政治に板挟みされることはしょっちゅうだ。

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当たり前だが、映画もアニメも「一人」では作れない。一本のアニメを作るに当たり、たくさんのスタッフが存在し、役者も存在する。それは実写世界とも同じことだ。そんなスタッフの細部の部署まで本当に細かくこのアニメは描いている。それが、このアニメで一番に表現しているそれぞれのスタッフ愛だ。一人でも欠ければアニメは作れない。それを表している。

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そして、ボクが個人的に心を強く打たれたのは、このアニメのシナリオの構成にもあった。それは前述した「伏線」にある。そして、その伏線の一つが宮森あおいの同窓生たちだ。この5人が、けして「ご都合」には集結しない。ひたすらに散りばめられた「点」のままに、それぞれがそれぞれの場所で夢を追い続けているのだ。

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アニメーターの安原 絵麻(自身の技術とスピードに悩む)

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声優(見習い)でフリーターの坂木 しずか(オーディションになかなか受からない)

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3Dクリエイターの藤堂 美沙(給料は安定しているが、自分のやりたい仕事ができない)

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シナリオ作家志望の大学生の今井みどり(スタートラインにもまだ立てていない)

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そんな同じ夢を持った5人はたまに夜に集まっては、それぞれを励まし合う。そんな仲間だけが、彼女たちのお互いの心の支えである。

このバラバラな地点にいる5人が、少しずつ、少しずつ、距離を引き寄せあっていく。その引き寄せ合う速度がたまらない。とてもリアルであり、現実世界の速度なのだ。

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そして、もう一つ、人生には人間以外の支えがある。これがないと生きていけない。これだけが人生の楽しみ。そんな人も多いだろう。

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そう食事(賄い)である。本作は、そんな料理描写にも力を注いでいる。ご飯を食べている時は、どんな辛いことも一瞬は忘れられる。それくらい食事は大事。働くスタッフに対し、いつもお腹を空かせていないかを気遣う社長が自ら手料理をふるうシーンも多い。

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帰り道の同僚とのおでん屋台だったり、

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夜遅く帰宅した後の、コンビニ弁当すら丁寧に描いている。

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ボクが本作からテーマの一つとして受け止めたのは、どんな時にも忘れてはならない「他者への敬意」だ。世の中の職場には、世代も大きく違う大先輩から後輩まで存在して、真面目な人、不真面目な人、優しい人、厳しい人、テキトーな人、KYな人、本当に働いているのかすらわからないような人(笑)、とにかく十人十色、千差万別多くの人が同じ一つの目的に携わり、同じ船に乗っている。意見や考えやスタイルは違えど、忘れてはならないのが「敬意」だ。何も学べることがないロクでもない人間は、その際は「反面教師」として学んで中指を立てて感謝すればいい。綺麗事かもしれないが、時には綺麗事が自分の為にも作品の為にも効率にもプラスに繋がるのだ。「以心伝心」という言葉がある。言葉にしなくても、ある人を嫌っていれば、言葉にせずともそれはその人に伝わり、負の連鎖のきっかけにもなる。同じ職場にいる以上は、大きく同じゴールを目指しているには違いないのだから。

余談だが、去年から今年にかけて、ボクは某大手アニメ会社と一つの実写ドラマを監督して制作した。その時も、畑違い故に、進行の仕方にも相違があり、色々とぶつかった経験があるが、絶対に相手への「リスペクト」を忘れてはいけないと思ったし、それを若輩者ながらも注意させて頂いたこともある。その仕事はボクの人生の中で大きな経験となった。制作スタッフの中には、一度も顔を合わせられなかった人もいる。それくらい多くの人が関わっていた。まあ、その話は、また別の機会にします。

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少し話しかけにくい寡黙な超ベテランアニメーターの杉江 茂

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主に政治に挟まれたメーカープロデューサー葛城 剛太郎

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とにかく仕事さえとってきてくれりゃ良しなラインPの渡辺 隼(こーゆー業界人、本当によくいるw)

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みんな御存知の庵野秀明をモデルにした超大御所監督の菅野 光明

夢を追う者、その夢の中で生きる者、夢の中で夢を見失った者、リタイアして別の人生を歩み始めた者。まさに人生と社会の縮図であるかのような本作。

ネタバレしたくないから、あまり語りたくないと思いつつも、本作への思いが今も止まらない。

前述した中にも紹介したが、本作の登場人物はそれぞれ実在のモデルがいるらしい。その詳細までは説明しないが、ググればすぐに出てきます。その中で、また一つ心打たれるものがあったので、それだけ紹介させてください。

矢野エリカ

宮森の少し先輩の制作デスクの矢野エリカ

この矢野にもモデルはいるらしいが、今はもうアニメ業界から身を引いてしまった人物らしい。そんな矢野さんのモデルとなった方が、本作の水島監督にこんなメッセージを残している。

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ボクはこれを読んで泣けてしまった。ボクの周りにも色んな諸事情で業界から去っていった仲間がいる。多忙極まりない業界の労働時間に嫌気がさした者もいれば、人間関係に悩んで辞めた者もいる。理由は、その人の数分だけ存在する。

きっと本作は、業界のリアルを忠実に描いてはいるが、それでも多少の美化はしているはず。ボクはそのバランスも絶妙で好きなのだが、ありのままを伝えるのがけして作品ではないと思っている。それは人それぞれの思い出も同じことで、その時は辛くても、時間経過の魔法で振り返れば眩しい思い出は存在する。

きっとこの人も、このアニメを観て、あの頃の自分の思い出が浄化されたのだろう。

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劇中でも、シナリオライター役の舞茸しめじがシナリオライター志望のみどりに似たようなことを言った。みどりがしめじからの課題で断片的な会話劇の創作原稿を渡した時、それを読んだしめじがこう言い放った。

「なんか生々しいね。実体験をそのまんま読まされても面白くない」

些細なシーンではあるが、この一言が本作のメタファーにも通ずる一言である。これは現在作家志望の人にも刺さる台詞ではなかろうか。

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そして、大学生のみどりは気づけば現場に巻き込まれていく様子も自然なんだよなあ。この業界って正面玄関以外の入り口が無限にあって、気づくと第一線に立たせられている。そんなことがよくある。チャンスは本当にどこに転がっているかわからない。

そして、そんな第一線から半分退きつつある社外の先輩スタッフもたくさん描かれている。

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大倉さんはアニメの美術をやっている人で(アニメの背景絵みたいなこと)、今は飲んだくれのおっさんなのだが、そんな大倉さんに憧れてバリバリ働く中堅者もいる。

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それが同じく美術の渥美さんである。渥美さんは本作の劇中アニメの空(雲)だけを主に担当することになる。

これくらいにしよう。どれだけ登場人物おんねん!と言いたくなるくらいの大群像劇である。先輩たちだってみんな今も悩みながら戦っている!それもテーマの一つだ!

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SHIROBAKOの藤堂美沙がゆらゆら揺れるGIF画像_gifmagazine

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繰り返しになるが、少しずつ、少しずつ、夢の引力に吸い寄せられる宮森あおいの同窓生たち。


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それは運だけじゃなく、彼女たちがいつだって手を抜かず、努力を怠らず、人頼りにせずに生きてきた証への神様の悪戯な小さなご褒美。


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みんな自分の知らない見えないところで、その「再会」は迫っている……


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この社会で働き心身共に疲れた全社会人(エリア拡大)と将来の夢を目指す夢追い全若人に捧ぐ!

仕事モチベ爆上がり!時に見失いかけた自分探しの人生アニメ「SHIROBAKO」

未見の方は是非にご覧ください!必見です!いや、超必見です!

人生イライラすることも多いけれど、
今日も涙目で生きているのはあなただけじゃない……

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