マガジンのカバー画像

テーマ

29
noteの募集中テーマに沿った記事です。
運営しているクリエイター

#旅する日本語

圧倒的に美人に見える交差点

圧倒的に美人に見える交差点

駅から家への帰り道、圧倒的に美人に見える交差点がある。
一日の終わり、暗くなった夜道に光る街灯の近く。
閉まったお店の窓に映り込む自分の姿は、いつもちょっとだけ私に自信をくれる。

光のあたり具合とか、そもそも光が当たっていることとか。
ちょっと良く見える角度とか、暗がりの生み出す補正とか。
そんなことがきっといくつも重なって、そこの交差点ではいつだって、ほんの少し微笑んでしまうような自分が写って

もっとみる

いちごミルクと夜の街

白金台からの帰り道、ふと思い立って新宿乗り換えにした。
気になっていたいちごミルクのお店、時間以内に行けそうだと思って。

駅構内のNewmanに、いちごのお店が最近できた。
うさぎのパッケージとピンクと赤の色合い。
可愛いいちごミルクが飲みたいなと、数週間思いながらなかなかタイミングが合わなかった。

少し高い小ぶりないちごミルクは、受け取ってちょっと飲むと口の中に果肉がしっかり入ってくる。

もっとみる
食べられない日のカプレーゼ

食べられない日のカプレーゼ

夏は食欲がなくなる。
ただでさえ食が細いのに、それに輪をかけて食が細くなる。
お腹が空いたような気になったところで、大してものが食べられない。

「何食べようか」
飲食店を前に、聞かれた問いの答えに困る。
食べたいと思ったものだって、どうせ食べられない可能性の方が高いのだから。
食事をしない選択が選べるならば、それを選んだ方が楽なくらいだった。

入ったお店でメニューを眺めて、カプレーゼを見つける

もっとみる

春の日の海辺

手放せなかったきつく巻いたストールが消えて、手袋を外した指を誰かのそれと絡められるような暖かさに心が躍る。
コートを一枚羽織って過ごす春の訪れは、毎年どこか嬉しくなってくる。
そして今年の春は、いつもよりずっとその色が強い。

「元気になれて良かったねぇ」
海を眺めながら、砂に足をとられながら、光を反射する水面を横目にそう呟く。
「ねぇ、本当に」
長く苦しい夏と秋と冬が明けたら、心から笑える春がち

もっとみる