田中祐真 Yuma Tanaka

野生の語学好き。 自分の勉強も兼ねてウクライナ語をはじめとする言語とウクライナ・旧ソ連…

田中祐真 Yuma Tanaka

野生の語学好き。 自分の勉強も兼ねてウクライナ語をはじめとする言語とウクライナ・旧ソ連情勢に関する投稿をしていこうと思います。

マガジン

  • ウクライナ語文法シリーズ

    ウクライナ語の文法を解説していきます。格変化や活用などの説明が中心になります。 ウクライナ語学習者初級~中級のリファレンスとして使っていただけたら嬉しいです!

  • 「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考える

    旧ソ連の正式名称について、ソ連圏で話されていた言語のグループごとにまとめていきます

記事一覧

ウクライナ語文法シリーズその35:ся 動詞

前々回出てきた боя́тися という動詞を覚えているでしょうか。今回はこの -ся が何なのかについて、また -ся がつく動詞がどういった意味を表すのかについてま…

ウクライナ語文法シリーズその34:未来時制

今回は未来時制についてまとめたいと思います。 未来時制の表し方は動詞の体によって異なり、また不完了体動詞では未来形の作り方が2通りあります。 完了体動詞完了体動詞…

ウクライナ語文法シリーズその33:動詞の活用(第二活用、不規則動詞の非過去形)

今回は第二活用の動詞と不規則動詞の非過去形の活用を学んでいきましょう。第二活用動詞は基本的なところは第一活用と共通する上、第一活用ほど活用のバリエーションが分か…

ウクライナ語文法シリーズその32:動詞の活用(第一活用非過去形:子音幹動詞)

今回は第一活用のうち、子音幹の動詞の活用を見ていきましょう。 このあたりから少々厄介になってきます。というのも、動詞によってかなり以前に紹介した子音の交代が現れ…

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(5):その他の印欧語

今回は旧ソ連構成SSRの公用語のうち、残る印欧語族の言語3つによるソ連の正式名称を見ていきたいと思います。 今回紹介するのは、イタリック語派のロマンス諸語に属するモ…

ウクライナ語文法シリーズその31:動詞の活用(第一活用非過去形:母音幹動詞)

今回から動詞の活用を見ていきます。変化表盛りだくさんですのでお楽しみに! ウクライナ語の動詞の非過去形は第一活用と第二活用とに大きく分けられます。今回は第一活用…

ウクライナ語文法シリーズその30:動詞(概説)

今回からは動詞を見ていきましょう。フランス語やスペイン語などのロマンス諸語に比べるとだいぶ簡単ですが、それでもやはり英語などよりは覚えることが多く大変です。 今…

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(4):バルト語派

今回はソ連のSSRの公用語のうち、バルト語派に属するリトアニア語とラトヴィア語についてまとめてみたいと思います。 バルト語派に含まれる現代の言語は通常、この2言語だ…

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(3):スラヴ語派東スラヴ語群

今回からようやく各SSRでの公用語での名称について見ていきたいと思います。前々回でまとめた系統ごとに進めていきます。 いずれはASSRでの公用語による名称も調べてみたい…

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(2):そもそもの国名の意味

今回はまず、ソ連の国名の元になっているロシア語での名称の意味についてまとめておきたいと思います。 はじめに日本語の名称「ソヴィエト社会主義共和国連邦」はロシア語…

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(1):1978年の構成共和国・自治共和国の公用語

ウクライナ語文法シリーズの書き溜めが尽きてきたので、書き溜めるまでの間、備忘録も兼ねて旧ソ連の各言語での「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称についてつらつ…

ウクライナ語文法シリーズその29:時刻、日付の表現など

次のパートに入る前に、数詞を使った表現として時刻や年月日の表し方を紹介します。曜日やその他時間に関わる表現もついでに挙げておきます。 時刻の表し方ウクライナ語で…

ウクライナ語文法シリーズその28:分数、小数、数量詞など

数詞パートの最後に、分数・小数とその他数量を表したり数に関する表現を紹介していきます。 分数の表し方ウクライナ語の分数は、分母を序数詞、分子を基数詞で表します。…

ウクライナ語文法シリーズその27:集合数詞、序数詞

ウクライナ語には基数詞のほか、さらに集合数詞と序数詞があります。まずは集合数詞から見ていきましょう。 集合数詞集合数詞は英語などには無い概念ですが、「複数のもの…

ウクライナ語文法シリーズその26:基数詞と名詞との組み合わせ

数詞の後ろに名詞を置いて、「~個の~」や「~人の~」などと表現したいとき、英語であれば、「1」の後には単数形、「2」以上の数詞の後には複数形を置けば良いだけです。…

ウクライナ語文法シリーズその25:基数詞

ウクライナ語の数詞は非常に難しいです。特に基数詞は、名詞との組み合わせ方のルールが「何でわざわざこんなことをするの?」と叫びたくなるほど複雑です。しかし、日常的…

ウクライナ語文法シリーズその35:ся 動詞

ウクライナ語文法シリーズその35:ся 動詞

前々回出てきた боя́тися という動詞を覚えているでしょうか。今回はこの -ся が何なのかについて、また -ся がつく動詞がどういった意味を表すのかについてまとめます。

助辞 -ся は起源としては再帰代名詞の себе́ の短形が動詞にくっついたものになります。ルシン語を除く現代の東スラヴ語群の言語の標準語にはほとんど残っていませんが、その他のスラヴ系言語においては、代名詞の対格、属

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ウクライナ語文法シリーズその34:未来時制

ウクライナ語文法シリーズその34:未来時制

今回は未来時制についてまとめたいと思います。
未来時制の表し方は動詞の体によって異なり、また不完了体動詞では未来形の作り方が2通りあります。

完了体動詞完了体動詞による未来時制は単純で、非過去形が未来時制を表します。非過去形の活用については前回までで詳述しましたので省略します。

繰り返しの説明になりますが、完了体動詞は最後まで動作をやり切るという様態を表し、「~してしまう」というニュアンスを持

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ウクライナ語文法シリーズその33:動詞の活用(第二活用、不規則動詞の非過去形)

ウクライナ語文法シリーズその33:動詞の活用(第二活用、不規則動詞の非過去形)

今回は第二活用の動詞と不規則動詞の非過去形の活用を学んでいきましょう。第二活用動詞は基本的なところは第一活用と共通する上、第一活用ほど活用のバリエーションが分かれるわけではないですし、また不規則動詞もごくごく少数ですので、頑張りましょう!

第二活用動詞第二活用の活用語尾をまとめると以下のとおりです。

基本的に第一活用の語尾の -е- を -и- に変えればよいのですが、三人称単数では末尾に -

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ウクライナ語文法シリーズその32:動詞の活用(第一活用非過去形:子音幹動詞)

ウクライナ語文法シリーズその32:動詞の活用(第一活用非過去形:子音幹動詞)

今回は第一活用のうち、子音幹の動詞の活用を見ていきましょう。

このあたりから少々厄介になってきます。というのも、動詞によってかなり以前に紹介した子音の交代が現れてくるほか、歴史的な音変化も相まって、不定形のみからは非過去形を導くのが難しいからです。
また、子音幹動詞の下位分類となる各パターンも注意が必要なものが多いです。

不定形が子音+-ти の動詞典型的な子音幹動詞は、基本的に不定形から -

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(5):その他の印欧語

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(5):その他の印欧語

今回は旧ソ連構成SSRの公用語のうち、残る印欧語族の言語3つによるソ連の正式名称を見ていきたいと思います。
今回紹介するのは、イタリック語派のロマンス諸語に属するモルドヴァ語(ルーマニア語)、インド・イラン語派の西イラン語群に属するタジク語、そして単独で一語派を形成するアルメニア語です。

各言語の特徴モルドヴァ語(ルーマニア語)は、ラテン語の口語である俗ラテン語に起源を有するロマンス諸語のうち、

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ウクライナ語文法シリーズその31:動詞の活用(第一活用非過去形:母音幹動詞)

ウクライナ語文法シリーズその31:動詞の活用(第一活用非過去形:母音幹動詞)

今回から動詞の活用を見ていきます。変化表盛りだくさんですのでお楽しみに!

ウクライナ語の動詞の非過去形は第一活用と第二活用とに大きく分けられます。今回は第一活用の動詞のうち、母音幹のものの活用を覚えていきましょう。
 

第一活用の活用語尾をまとめると以下のとおりです。

ウクライナ語では、ほんとうの意味での不規則変化動詞というものはあまり数がなく、第一活用動詞については上記の表から逸脱すること

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ウクライナ語文法シリーズその30:動詞(概説)

ウクライナ語文法シリーズその30:動詞(概説)

今回からは動詞を見ていきましょう。フランス語やスペイン語などのロマンス諸語に比べるとだいぶ簡単ですが、それでもやはり英語などよりは覚えることが多く大変です。
今回は動詞の変化などを見ていく前に、ウクライナ語における動詞に関わる文法項目を概観したいと思います。

不定形英語での to 不定詞に相当します。ウクライナ語では接尾辞 -ти で表されます。

いろいろと用法があるのでそれは後々まとめていき

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(4):バルト語派

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(4):バルト語派

今回はソ連のSSRの公用語のうち、バルト語派に属するリトアニア語とラトヴィア語についてまとめてみたいと思います。

バルト語派に含まれる現代の言語は通常、この2言語だけとされています。バルト語派内の分類では西バルト語群と東バルト語群とに分けられ、リトアニア語とラトヴィア語はどちらも東バルト語群に属します。
では西バルト語群にはどんな言語があったのかというと、有名なものでは古プロシア語があります。プ

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(3):スラヴ語派東スラヴ語群

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(3):スラヴ語派東スラヴ語群

今回からようやく各SSRでの公用語での名称について見ていきたいと思います。前々回でまとめた系統ごとに進めていきます。
いずれはASSRでの公用語による名称も調べてみたいのですが、なかなかオンライン上では正確性のある情報が見つからないため、今後の課題としたいと思います。

各言語での名称は、可能な限り各SSRの1978年憲法の現地語版における記載を参照していますが、オンライン上ではどうしてもこれがう

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(2):そもそもの国名の意味

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(2):そもそもの国名の意味

今回はまず、ソ連の国名の元になっているロシア語での名称の意味についてまとめておきたいと思います。

はじめに日本語の名称「ソヴィエト社会主義共和国連邦」はロシア語からの翻訳です。字面から、「社会主義共和国連邦」は同国の政体を表し、「ソヴィエト」というのが固有名詞っぽいかんじのように理解されている方が多いかもしれません。

しかし、実はこの「ソヴィエト」というのは一般名詞になります。

以下、ロシア

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「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(1):1978年の構成共和国・自治共和国の公用語

「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称について考えてみる(1):1978年の構成共和国・自治共和国の公用語

ウクライナ語文法シリーズの書き溜めが尽きてきたので、書き溜めるまでの間、備忘録も兼ねて旧ソ連の各言語での「ソヴィエト社会主義共和国連邦」という名称についてつらつらとまとめてみようと思います。

学術的な分析・考察未満のものですのであしからず。また、各言語について不正確な記述がありましたらぜひともご指摘いただければ幸いです。

今回はそもそもソ連てどういう構造になってたの?どんな言語が使われてたの?

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ウクライナ語文法シリーズその29:時刻、日付の表現など

ウクライナ語文法シリーズその29:時刻、日付の表現など

次のパートに入る前に、数詞を使った表現として時刻や年月日の表し方を紹介します。曜日やその他時間に関わる表現もついでに挙げておきます。

時刻の表し方ウクライナ語で時刻を表すときは、「時」を序数詞の女性形で、「分」を基数詞で表します。なぜ「時」が女性形かというと、годи́на 「時間、~時」が女性名詞だからです。なお、「分」は хвили́на という語で、基数詞が付くため2分以上のときは単数属格

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ウクライナ語文法シリーズその28:分数、小数、数量詞など

ウクライナ語文法シリーズその28:分数、小数、数量詞など

数詞パートの最後に、分数・小数とその他数量を表したり数に関する表現を紹介していきます。

分数の表し方ウクライナ語の分数は、分母を序数詞、分子を基数詞で表します。

ウクライナ語で分数を用いるときは、基本的に「女性形」になることをイメージしておいてください。分子が1のとき、分母は序数詞の単数女性形、分子が2以上のとき、分母は序数詞の複数属格形となり、分子が1または2の時も女性形の одна́ や

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ウクライナ語文法シリーズその27:集合数詞、序数詞

ウクライナ語文法シリーズその27:集合数詞、序数詞

ウクライナ語には基数詞のほか、さらに集合数詞と序数詞があります。まずは集合数詞から見ていきましょう。

集合数詞集合数詞は英語などには無い概念ですが、「複数のものをひとまとまりのグループとして表す数詞」になります。実用的には、①複数形しか持たない名詞を数えるとき、②人数を表すとき、の2つの用途があります。

まずは形を見ていきましょう。

見てお分かりと思いますが、それほど予想を裏切るような形はあ

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ウクライナ語文法シリーズその26:基数詞と名詞との組み合わせ

ウクライナ語文法シリーズその26:基数詞と名詞との組み合わせ

数詞の後ろに名詞を置いて、「~個の~」や「~人の~」などと表現したいとき、英語であれば、「1」の後には単数形、「2」以上の数詞の後には複数形を置けば良いだけです。なんと簡単なことでしょう。
ウクライナ語でも「2」以上の数詞の後には複数主格形を置けばよいだけ、であったならば、何と素晴らしかったことでしょう。残念ながらそんなうまい話はありません。

数詞を名詞と組み合わせるときは、前に付く数字が①「1

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ウクライナ語文法シリーズその25:基数詞

ウクライナ語文法シリーズその25:基数詞

ウクライナ語の数詞は非常に難しいです。特に基数詞は、名詞との組み合わせ方のルールが「何でわざわざこんなことをするの?」と叫びたくなるほど複雑です。しかし、日常的にも当然ながら非常によく使われ、決して避けては通れない道ですので、気合いを入れていきましょう。

基数詞一覧まずは、とりあえず基数詞をリストで示します。「基数詞」というのはモノの数量を表すための数詞で、順序を表す「序数詞」に対する用語です。

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