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ウクライナ語文法シリーズその25:基数詞

ウクライナ語の数詞は非常に難しいです。特に基数詞は、名詞との組み合わせ方のルールが「何でわざわざこんなことをするの?」と叫びたくなるほど複雑です。しかし、日常的にも当然ながら非常によく使われ、決して避けては通れない道ですので、気合いを入れていきましょう。


基数詞一覧

まずは、とりあえず基数詞をリストで示します。「基数詞」というのはモノの数量を表すための数詞で、順序を表す「序数詞」に対する用語です。

「1」と「2」だけは性によっていくつかの形を持ちます。しかし、「1,2,3…」と数えるときは、男性形が代表として使われます。

まずは10まで、そのあとは20まで、そして100までは連続で数えられるようにお風呂の中などで練習してみるとよいでしょう。
これがまず覚わらないと話になりません。

更にちなみにですが、「1, 2, 3 …」と数え上げていくとき、「1」は оди́н の代わりに раз を使うことが多いです。つまり、「оди́н, два, три...」ではなく、「раз, два, три ...」となります。
раз は「回」という意味なので、「一回、二回、三回・・・」の数え上げ方が一般化したのだろうと思われます。

基数詞の変化

基数詞をとりあえず見たところで、まずはそれぞれの格変化を見ていきましょう。
そうです。数詞も格変化をします。数詞に特徴的な要素はありますが、変化のパターンはそれほど目新しいものではないので、安心してください。

「1」

まずは оди́н/одна́/одне́/одні́ 「1」の変化です。形容詞型で、男性・中性・女性・複数と、全ての性・数の形を持ちます。

変化自体にはそれほど難しいところはないと思います。中性形では、たまに одно́ という形が用いられることもあります。

ところで、「1」なのに複数形があるのはなんとも不思議に思われると思いますが、これは、複数形しか存在しない名詞に付くときなどに用いられます。

одні́ две́рі 「1つのドア」
одні́ но́жиці 「1つのハサミ」

また、集合的に、複数人(個)からなるグループについて、「~だけ」という意味を表すのにも用いられることがあります。

Ми одні́ залиши́лись. 「私たちだけが残った」 

このほか覚えておいてほしい оди́н の用法として、「互いに」という意味を表す用法があります。具体的には оди́н を二つ用いて、一つ目を主格、二つ目を動詞の要求する格の形もしくは前置詞を付けた形で置きます。なお、二つ目の оди́н のアクセントは前の方へずれます。
なお、このとき、一般論や、男女両方が含まれる(可能性がある)場合には、中性形の одне́ が用いられます。それ以外の場合、つまり、具体的に男もしくは男性名詞どうしや女性もしくは女性名詞どうし、複数人からなるグループどうしの場合を指すときは、оди́н がそれに対応する形で現れます。

言葉で原理を説明してもわかりにくいと思いますので、例を見てみましょう。以下はいずれも「彼らはお互いを愛している(愛し合っている)」という意味です。

①Вони́ коха́ють одне́ о́дного. 
②Вони́ коха́ють оди́н о́дного.
③Вони́ коха́ють одна́ о́дну.

いずれも、動詞 коха́ти 「愛する」が目的語に対格を要求しますので、二つ目の оди́н は対格形になっています。また、一つ目の оди́н の形から、①は中性形なので男女間、②は男性形なので男性どうし、③は女性形なので女性どうしがお互いを愛している、という意味になります。

あと二つ例を見てみましょう。
以下の3つはいずれも、「彼らは互いに似ている」という意味です。男女の区別は先ほどの例と同様ですが、今回は、形容詞 схо́жий 「似ている」が似ている対象を指すときに на+対格となるため、二つ目の оди́н に на が付いています。

①Вони́ схо́жі одне́ на о́дного.
②Вони́ схо́жі оди́н на о́дного.
③Вони́ схо́жі одна́ на о́дну.

次の例は、一般論ですので、意味上最初の оди́н は中性形以外あり得ません。допомага́ти 「助ける」は与格を要求しますので、二つ目が与格になっています。

Тре́ба допомага́ти одне́ о́дному. 「互いに助け合わなければならない」

「2」「3」「4」

次に два/дві 「2」、три 「3」、чоти́ри 「4」の変化を見ていきましょう。これらの変化パターンは同じになります。また、「2」には男性・中性の形と女性の形の二通りがありますが、ありがたいことにこの区別がなされるのは主格と無生の対格だけで、それ以外は共通です。

形容詞の複数形の語尾に似ていますが、語尾の母音が о であること、また具格が -ма となるのに注意してください。

「5」~「20」「30」「50」「60」「70」「80」

これ以降、80までの数詞(40を除く)は、皆同じ変化語尾を取ります。例としてп’ять 「5」、шість 「6」、сім 「7」、ві́сім 「8」、де́в’ять 「9」、де́сять 「10」の変化表を見ておきましょう。

6,7,8については、母音の交替などがあったりしますので、注意してください。

これ以上の、одина́дцять 「11」~ дев’ятна́дцять 「19」、два́дцять 「20」、три́дцять 「30」、п’ятдеся́т 「50」、шістдеся́т 「60」、сімдеся́т 「70」、вісімдеся́т 「80」は、де́сятьと同じ変化語尾になります。主格(と無生の対格)以外でアクセントが語尾に来るのも同じです。

「40」「90」「100」

со́рок 「40」、дев’яно́сто 「90」、сто 「100」の3つは同じ変化パターンになります。非常に簡単な変化パターンです。なお、この3つの数詞、及びこれ以上の200や300などについては、対格での有生・無生の区別は失われます

「200」~「900」

200以上の百の段の数詞の変化は2パターンあります。これらの数詞の場合は、百の位の部分も一桁の時と同様に変化します。そのため、実際には百の位の数が2,3,4の時と5~9の時とで異なるだけで、主格と対格以外の格変化語尾は一緒です。例として、дві́сті 「200」と п’ятсо́т 「500」の変化を見ておきましょう。

три́ста 「300」と чоти́риста 「400」は дві́сті と同様に、шістсо́т 「600」、сімсо́т 「700」、вісімсо́т 「800」、дев’ятсо́т 「900」は п’ятсо́т と同様に変化します。

「0」「1000」「100万」「10億」

нуль 「0」、ти́сяча 「1000」、мільйо́н 「100万」、мілья́рд 「10億」は、通常の名詞と同様の変化となります。従って、単数形と複数形があります。いつ使うのかわかりませんが、なんと呼格形もあります。

нуль 「0」

ти́сяча 「1000」

мільйо́н 「100万」

мілья́рд 「10億」

これらは数詞扱いではあるのですが、文法的には数詞というより一般名詞とほぼ同じ特性を持っています。ти́сяча は女性名詞、нуль、мільйо́н、мілья́рд は男性名詞扱いです。
そのため、2000や300万、700億などといった数字を表すときは、それぞれ「2つの ти́сяча」「3つの мільйо́н」、「70の мілья́рд」ということになりますから、次の「名詞との接続」で見る複雑な組み合わせ方が名詞の立場で適用されます。
ちなみに、2000は дві ти́сячі、300万は три мільйо́ни、700億は сімдеся́т мілья́рдівとなります。 

これで数詞を組み合わせて、ほぼ全ての数字が表せるようになりました。
格変化の時には、全ての数詞の要素が格変化します。例えば、1984という数字は、以下のように格変化します。

次回は数詞と名詞の組み合わせ方を見ていきます。

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