記事一覧
002『雨雲ドローン』#ショートショート(1183文字)
「ごめんください、雨雲メンテナンスのCAPPAです」
顎を伝って滴る汗を手の甲で拭いながら、玄関のチャイムを鳴らしてそう声をかけた。真夏の午後二時。もっとも暑い時間帯。マンションの廊下はまるでオーブンの中みたいだった。
「どうもご苦労さまです」
冷房の冷気とともに、女の人が出てくる。冷房のおかげで彼女自身は涼しい顔をしていたが、その頭上に浮いている雨雲はどことなく元気がなく、貯水が尽きかけているの
001『米から作る予言』#ショートショート(1509文字)
OMOTIという名前の配信者は、「予言配信」がバズって一気にリスナーを増やした。彼女の予言は、配信中に募ったコメントを組み合わせて作られる。リスナーに適当に短い言葉をコメントしてもらい、無作為に選んだコメントをつなぎ合わせて文章を作る。それが予言になる。
「落とし物」「電車」「お腹すいた」「会社員」「明日」――明日、会社員が電車でお弁当を落とすか置き忘れて、空腹になる、つまりはお昼ごはんを食べ損
ショートショート『落ち葉ダイエット』(783文字)
ズボラな私には最適だった。
「催眠術みたいなものかも。こうすると、あっという間に体重が落ちるんだよね~」
インフルエンサーでモデルのNAKOがSNSで紹介していたダイエット法は実に画期的なものだった。
それは落ち葉ダイエットと呼ばれていた。落葉樹と意識的にシンクロすることで、その葉が落ちるたびに体重が減っていくというものだ。具体的には、催眠術のように無意識のうちに体重が落ちる行動をしやすくな
『戦国時代の自動操縦』#毎週ショートショートnote (400文字)
苦労して首級をとったが、見れば見るほど奇妙な奴らだ。言葉も通じなかったから異人には違いなかろうが。
しかしこやつらが出てきた、これ。
鉄の塊にしか見えぬが、小屋なのだろうか。
「なんと面妖な……」
中は昼のように明るい。壁や天井から眩しい光が放たれておる。それも、いろいろな色があって目が痛くなるほどだ。
二つの首級をぶら下げたまま奥へ進むと、突然、声のようなものが鳴り響いた。他に