012『雌雄異株』ショートショート(393文字)

 新たに発見されたその花は、ヤマコウバシのように単為生殖で種を作る。数は決まってひとつだけ。その後枯れてしまうので、さながら転生を繰り返しているようだった。そして、どんなに探しても雌花しか見つけることができなかった。
 もうひとつの特徴として、月下美人のように夜にのみ大きな花を咲かせた。そして研究者たちは、その花が宇宙からのシグナルを受信していることを突き止めた。
 研究は進み、花がシグナルを受信したときに細胞内で生成される化学物質を電気信号に変換し、スピーカーを通して音声にまで変換することに成功した。まさに宇宙からのメッセージだ。

『あいに いきます いま あいに いきます あいに いきます』

 メッセージは、そう繰り返すばかりだった。

 一方その頃。とあるアマチュア天文家が何光年も離れた宙域に異様な物体を発見した。それは巨大な花のような形をしていて、軌道はまっすぐ地球に向いている。


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