きしよしき

2024年内 ショートショート100作挑戦中!

きしよしき

2024年内 ショートショート100作挑戦中!

最近の記事

012『雌雄異株』ショートショート(393文字)

 新たに発見されたその花は、ヤマコウバシのように単為生殖で種を作る。数は決まってひとつだけ。その後枯れてしまうので、さながら転生を繰り返しているようだった。そして、どんなに探しても雌花しか見つけることができなかった。  もうひとつの特徴として、月下美人のように夜にのみ大きな花を咲かせた。そして研究者たちは、その花が宇宙からのシグナルを受信していることを突き止めた。  研究は進み、花がシグナルを受信したときに細胞内で生成される化学物質を電気信号に変換し、スピーカーを通して音声に

    • 011『迷途町案内』ショートショート(2417文字)

       迷途町駅前には、案内屋の屋台が軒を連ねていた。取引先へ行くにはここで「案内」を買う必要があるが、さて、どれにしたものか。  案内人、案内小町、案内犬、案内猫。生き物もいれば、案内提灯、案内杖、案内手毬など道具もある。さすが不思議の町だ。  しかし一番興味が惹かれたのは、案内鯛焼という暖簾だった。鯛焼って、あのタイヤキだよな。少し離れて観察していると、常連と思しき男がひとつ買っていった。正真正銘、アンコの詰まったあのタイヤキだ。それに糸が括り付けられていて、なんと、宙を泳いで

      • 2月の所感

        今月投稿したショートショートまとめ えッ、少ない!!!!!!!!! 年内にショートショート100作を目標として掲げている身ですが、早くも2月でやっちまいましたね。 1年は約52週間。つまり1週間に2作書けば届く計算でしたが、ええと……今……9週目……18作できてないとおかしいねぇ……。 でも待ってください。今月はいろいろあったんです。 雪が降ったり、家族が急に入院したり、仕事でいろいろあったり。 そしてなにより、崩壊スターレイルを始めちゃったり……。 家族は無事に退院し

        • 010『ドレスさんの見繕い』ショートショート(2858文字)

           午前零時になっても、商店街の表通りには酔っ払いや学生の集まりなどまばらに人の往来があった。そこから外れて裏道に入れば、シンと静まり返った純粋な真夜中が現れる。  噂では最近、この裏道に「ドレスさん」が出たという。  その怪異に会うために、私は意を決して奥へ進んだ。  ほどなくして、行き止まりに突き当たる。途中の曲がり道まで戻ろうと振り返ると、反射的に「ひっ」と喉を鳴らしてしまった。  今の今までなかったはずだ。道の真ん中に置かれていたのは、私の身長よりずっと高い、漆黒のクロ

        012『雌雄異株』ショートショート(393文字)

          009『天使の羽根ペン』ショートショート(402文字)

           ふらりと立ち寄った骨董屋で、とてもキレイな純白の羽根ペンを見つけた。店主に聞けば、天使が落とした羽根から作られたもので、これを使って願い事を書くと必ず叶うという。  さすがにそれは眉唾だろうが、物自体は見逃せない。多少値は張ったが、私はその場で購入を決めた。  家に帰ると、檻の中の天使が虚ろな目で私を見た。彼女のボロボロの翼は真っ黒に汚れていて、頭の上の輪もヘドロのような汚れにまみれている。いわゆる堕天使だ。 「こんな檻に閉じ込めてすまない」  堕天使は時として人間を害す

          009『天使の羽根ペン』ショートショート(402文字)

          1月の所感

          進捗 現在、SSは8作目まで投稿完了しています。 12ヶ月で100作を達成するには、ざっくりと月に8.33作。ちょっと足りないけどまぁまぁ……? もっとざっくりすると、1年間は約52週なので1週間に2作書けば届く計算です。今5週目だけどね……。 変わってきた…かも? 具体的な数字を設定して立てた目標ですが、実は、こういう目標を立てるとか、計画を立てるということが大の苦手です。嫌いといってもいい。 でも不思議なことに、小説のことを考える時間が目に見えて増えました。 そも

          008『養服屋』ショートショート(349文字)

           ついに届いたわ。このドレスは有名な養服屋の手によるもので、一年がかりで端布から大きくしていったものよ。  養服の様子は一度だけ見たことがあるわ。身頃、袖といったパーツごとの型紙に端布を付着させ、日の当たらない風通しのいい場所で少しずつ育てていくの。端布は型紙に沿って大きくなるのよ。その時、虫食いには細心の注意を払うんですって。  大きく育った布地を型紙から丁寧に剥がし、裁縫されれば、この通り見事な一着に仕立て上がるってわけ。  しかも嬉しいことに、真珠のブローチがついてたの

          008『養服屋』ショートショート(349文字)

          007『かつらおとこ』ショートショート(387文字)

           とんでもないことに気づいた。バイトでよく一緒になる桂さん、カツラ被ってるわ。日によっていろんなズレ方してるから分かった。  しかも、しかもだ。これは普段から月に気を配っている俺だから気づいたことだが、カツラ、ズレ方と月の満ち欠けが連動しとる。  どういうことかというと、カツラがきちんと着いてる日は新月。つまり月の出てない夜だ。で、微かにカツラがズレてて、ちらりと頭皮が見えると三日月だ。半月のときは言うまでもない。  桂さんを見れば月齢がわかるというのは、俺にとってはありがた

          007『かつらおとこ』ショートショート(387文字)

          006『お気餅』ショートショート(2026文字)

           妻のいないマイホームはやけに広く感じられて、何かで埋めていないと寒くて不安で仕方がなかった。妻の部屋から遺品を持ち出しては、廊下やリビング、キッチン、洗面所、至る所に置いた。空間は狭くなっても、心の隙間はちっとも埋まらなかった。  だからだろうか。こんな怪しげな人間を家に上げてしまっている。 「できました。こちらが奥様の残されたお気持ちです」 「はぁ。でも、これ……餅、ですよね」  リビングで向かい合って座っている男は、喪服のような真っ黒なスーツに、サングラス、黒い革手袋ま

          006『お気餅』ショートショート(2026文字)

          005『老人と孫』ショートショート(1149文字)

           銀行に行くと、ATMの前にヨボヨボの爺さんと若い娘の二人組がいた。どうやら祖父と孫という関係のようだ。爺さんに渋々付き合わされているらしい娘の険のある声がやかましく響いていた。 「ほら、早くしてよ」 「よぉわからん。どこを押せばいいんじゃ」  爺さんは弱々しくボソボソ訊いているが、孫はてんで意に介さず自分のスマホを見て知らんぷりしていた。なんと嘆かわしい。 「おじいさん、何かお困りですか?」  ついついそんなふうに声をかけてしまった。 「誰おっさん? 人がやってるときに覗か

          005『老人と孫』ショートショート(1149文字)

          004『空をみがく虹』ショートショート(2704文字)

          「あいつマジでうざいよね。死んでほしいわガチで」  帰り際、校舎の昇降口でそんな言葉を聞いた。  自分に向けられているわけではないのにドキッとする。声の出所に視線を向けると、C組の下駄箱のところで数人の男女がたむろして、人目もはばからず、誰かの悪口で会話に花を咲かせていた。口汚い言葉で咲いた花は、きっとドス黒い色をしているにちがいない。  つい足を止めてまじまじ見てしまった私は、グループの中のひとりと目があってしまう。その女子生徒がキッと睨みつけてきたので、逃げるように外へ出

          004『空をみがく虹』ショートショート(2704文字)

          003『おばけ職人 夏の風物詩編』#ショートショート(385文字)

           今年もこの季節がやってきた。このために一年間準備してきたのだ。 「よし、次はFトンネルだな」  丑三つ時。ワゴンからオバケを下ろし、梱包材を慎重に取り外す。 「ここは人気スポットだからな。肝試しの連中もたくさん来る。いい悲鳴をたくさん響かせておくれよ」  白い服の女性の姿をしたオバケの頭を撫でながらそう言い聞かせる。彼女は生気のない顔で何の反応も示さなかったが、服をめくってヘソから息を込めると、ゆらりと動き出した。  花火と並ぶ夏の風物詩、肝試し。それにはオバケが欠かせない

          003『おばけ職人 夏の風物詩編』#ショートショート(385文字)

          002『雨雲ドローン』#ショートショート(1183文字)

          「ごめんください、雨雲メンテナンスのCAPPAです」 顎を伝って滴る汗を手の甲で拭いながら、玄関のチャイムを鳴らしてそう声をかけた。真夏の午後二時。もっとも暑い時間帯。マンションの廊下はまるでオーブンの中みたいだった。 「どうもご苦労さまです」 冷房の冷気とともに、女の人が出てくる。冷房のおかげで彼女自身は涼しい顔をしていたが、その頭上に浮いている雨雲はどことなく元気がなく、貯水が尽きかけているのは明白だった。 「すぐに補水します」 「助かります。これがないと外出もできなくて

          002『雨雲ドローン』#ショートショート(1183文字)

          001『米から作る予言』#ショートショート(1509文字)

           OMOTIという名前の配信者は、「予言配信」がバズって一気にリスナーを増やした。彼女の予言は、配信中に募ったコメントを組み合わせて作られる。リスナーに適当に短い言葉をコメントしてもらい、無作為に選んだコメントをつなぎ合わせて文章を作る。それが予言になる。 「落とし物」「電車」「お腹すいた」「会社員」「明日」――明日、会社員が電車でお弁当を落とすか置き忘れて、空腹になる、つまりはお昼ごはんを食べ損なう――といったふうに。  そして的中するのは、多くはリスナーの中の誰かだ。ちな

          001『米から作る予言』#ショートショート(1509文字)

          ショートショート『落ち葉ダイエット』(783文字)

           ズボラな私には最適だった。 「催眠術みたいなものかも。こうすると、あっという間に体重が落ちるんだよね~」  インフルエンサーでモデルのNAKOがSNSで紹介していたダイエット法は実に画期的なものだった。  それは落ち葉ダイエットと呼ばれていた。落葉樹と意識的にシンクロすることで、その葉が落ちるたびに体重が減っていくというものだ。具体的には、催眠術のように無意識のうちに体重が落ちる行動をしやすくなるらしいけれど、これが抜群に効くらしい。  さっそく私は施術士に予約をいれて、木

          ショートショート『落ち葉ダイエット』(783文字)

          『戦国時代の自動操縦』#毎週ショートショートnote (400文字)

           苦労して首級をとったが、見れば見るほど奇妙な奴らだ。言葉も通じなかったから異人には違いなかろうが。  しかしこやつらが出てきた、これ。  鉄の塊にしか見えぬが、小屋なのだろうか。 「なんと面妖な……」  中は昼のように明るい。壁や天井から眩しい光が放たれておる。それも、いろいろな色があって目が痛くなるほどだ。  二つの首級をぶら下げたまま奥へ進むと、突然、声のようなものが鳴り響いた。他にも仲間がいたか。 『顔認証確認。システムを起動します。おかえりなさいませ、お客

          『戦国時代の自動操縦』#毎週ショートショートnote (400文字)