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枝瀬優
2020年12月22日 22:54
早朝、マスクをつけたまま 自転車を漕ぐ呼吸した証が 水滴となって睫毛にうまれて 視界が溺れる苦しくないけどすこしだけ 不安になってぼやけながら きらきらと揺れる景色がほんとうの世界なんじゃないかって、視力の良いわたしには思えたんだ朝は誰にでも平等に 始まりを与えるリセットされて、繰り返す 365日いつだって始まりは輝いているけれど、美しい景色を 美しいと思える真冬の朝は とくべつすき
2020年12月15日 21:08
SNSでみつけた「雪だ!」の投稿に愛しさを感じますわたしの住む街にはまだそんな気配は微塵もないけれど、確かに何処かでは雪が降っていることに感動してしまう早朝、誰の足跡もついていない真っ白で神聖な雪を、おろしたてのレインブーツで踏み込む瞬間はこどもの頃からどきどきして、ちょっぴりいけないことをした気分になりますさくさくと微かに足裏に伝わってくる感触に寒さをすっかり忘れて玄関まわりの雪をひと
2020年12月3日 20:23
ひとの心も満足にわからないのに、イヌネコに過剰な感情移入できるひとがすこしこわい殺処分も民間保護施設も人間のエゴでしかなくて、イヌネコはわたしたちと同じ言語を発しないからわかったふりして同情する自分は味方だから、傷つけないから、でもごはんもトイレも人間の決めたルールに従って、人間が愛せるイヌネコになってね、って笑顔で抱きあげるイヌもネコも嫌いでないけれど、ノラネコの気ままさがすきだし、神
2020年10月14日 21:29
どんな曲でも聴いているとさみしくなってしまうね過去を丁寧に掬いとって小さな箱に詰める欠片が静かに跳ねて脳に眠っているあの日の記憶が覚醒します忘れてしまわないようにそっと蓋を閉めて両手で包み込むつぎはいつ開けるかわからないけれど決して古くならない魔法の箱
2020年10月11日 16:29
秋の夕方、誰かに呼ばれた気がする迷子になってしまいそうな空気のにおい懐かしくて、すこし焦げくさい、でも嫌いじゃない夕日を背にしてのびる影につられてどこまでも歩いて歩いて街のすみっこあと数歩進めば消えてしまえるかなあかく燃える夕日にとけて一部になるもうおうちに帰ろう、チャイムが鳴ります誰でもないそれがわたしを現実に連れ戻す何処からか漂う夕餉のにおいわたしを迷わすにおいは消え
2020年10月5日 20:47
きっとわたしが居なくなっても朝日の届かない部屋がひとつ増えるだけで君にはちゃんと朝日が届く、そのくらいの変化しかないんだよ 線香のにおいがまだかすかに残る喪服をクリーニングにださなきゃ、日常に戻るわたしがいない世界がはじまることにきっと君は疑問を抱かない君は生きているからわたしはいつか誰かの記憶にしかならない記憶のわたしは誰にでも優しくて大切な存在になってしまうでしょうだか
2020年10月1日 22:22
雨の日は無理して笑わなくても許されるような気がして傘で表情の見えない君の機嫌をうかがわなくても許される気がして雨音だけがふたりを隔てているのに、とても遠くに居るみたい世界の音をかき消してくれるこの音が嫌いになれません湿気でヘアスタイルが崩れるからと愚痴をこぼす君はかわいいよすべてが洗い流されてリセットされたらいいのに、とスタバのカウンターから眺めながら飲むフラペチーノは味気ない雨の日に
2020年9月26日 15:58
きっと神様はじぶんがいらない部分をあつめてわたしたちをつくったのだろうね神様からの贈りものなのよ、って美しい言葉に包まれて生まれてきたわたしたち人間になるたびにその存在が薄くなっていくよあなたもわたしもカミサマからつくられたのによっぽど汚い部分を捨てたかったのね、カミサマどうですか、清くなれましたか、人間はいつだってアナタのこと美しい存在だと信じています 神様に祈っても届く
2020年9月14日 18:43
何処にいるのか、なにをしているのかわからないけれどなんだか毎日たのしそうだなぁ、と思われる人間に憧れます朝日がのぼるすこしまえに目が覚めて空気よりすこし重いカーテンを しゃっ、とあけてまだ誰にも汚されていない空気を吸って吐いておはよういつかの昼下がりにコトコト煮込んだジャムをちょうどいい焦げ目の食パンにたっぷりとサクッと噛めば一日のはじまりの音がしますこどもたちが登校して静かになった
2020年9月5日 13:21
空、青い 空っぽ 透き通って掴めない 落ちてくる 見透かされ海、青い 暗い 潮のにおい 生き物の死んだ腐ったにおい 絡まって溺れて泡になって青はわたしを消してくれるどんなにのみ込んでも歪むことなく濁ることなくまた誰かを誘って自分だけが青を知っていると錯覚させるこの世でいちばん美しくて醜い色
2020年8月10日 19:03
除草作業後の公園に漂う草花が生きていたにおいがなんだか苦手だ、いきものが絶たれたにおい、生きてたにおい、砂場のあの甘いようなにおいが恋しくなってめいっぱい漕いでいたブランコからとびおりた
2020年7月26日 19:24
過去にとべるタイムマシンができた過去の決まった時間にかけられる電話ができたそれを望んで手をつけてしまった時、いまのわたしは死んでしまった未来を明るくするために、なんて体のいいこと言うつもりはないよ過去は変わらない、変えたらいけないここ感情を抱えて生きていかないと、人間である意味、忘れてしまいそうだから
2020年7月24日 20:26
小学生の頃に親友と書いていた交換日記プラスチックの軽くて脆い鍵で秘密はまもられていると信じていたお互いだけが知ることを世界から隠せている気になっていたいま、世界から隠してしまいたいことに溢れているのにどんな鍵もパスワードも信じられずにすべて自分の底に蓄積されていくだけ
2020年7月19日 21:23
金平糖を夜空にかざして君のくちもとへ、あまい一等星をたべて願いが叶いますように