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#現代詩
【掌編小説】夜の描き方
夜は美しすぎて、何度も何度も描くことを試されてきた。
何千年も前から、名もなき画家たちがその美しさに魅せられて黒鉛をすり減らし、我こそは夜空を最もいきいきと描けると技術を競い合った。
夜をまるごと捕まえようとした画家の試みはことごとく失敗した。真夜中の縁をなぞろうとしたら闇が濃くなった。夜の途方もない奥行きを写生するほど平面的に見えた。削り取られた鉛筆の芯の破片が台紙に舞い、さらに深い深い
【掌編小説】Yesterday Once More
中学二年生のとき、ひと夏だけ、ピアノを習ったことがある。好きな女の子がいたからだ。
その子はいつも涼しげで、物静かな子だった。ピアノが上手で、音楽の授業の前によく友達とピアノを弾いていた。僕は休み時間、早めに音楽室に行き、何にも興味がないふりをして机に突っ伏して、そのピアノに耳を傾けるのがすごく好きだった。
何か話すきっかけがほしかったのだろう。両親に適当な理由をつけて、近所のピアノ教室