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小島一郎さま その2
探している
あなたを 再びこの地で生きようと
生きて見せようと
そう 思わせたものは何なのかを
写真でしか想像できないが
写真こそあなたののすべてだ
わかる気がするとつかんだ糸は
するすると
ほどけてく
でもおじいさん
藁を積んで
こちらへ
歩いてくる
私は身を棄て
開くしかない
小島一郎さんへ捧げる詩
そんなあなたが羨ましいのだった
あなたの見た 世界は
祭りのような
一種 熱に浮かされたような
そのような 赤い 爆裂した風だった
火の粉を避けて
走って
叫んだけど
ふと振り返ると
仲間はみな逝ってしまったんだね
原生林を
この生身を駆けてみて
深呼吸
国土に還っても
知る者はなし
あなたの北風に浮かぶ
潔い うろこ雲を見ると
まるで
こうなることを待っていたかのような
世界があなたを迎
映写機
どうして判決されるかなんて考えるの?
君は時に
吹きすさぶ山小屋のなかに
身を屈めて丸まっていたね
入道雲は速足で去り
訪れた紫と青のカーテンに驚いていた
君は時に
この世が捲る映写に成すすべもなく
頭抱えて幼子のように涙垂らしていた
ドクンと打つからだに
祈っていた
神でさえ
君を裁けるはずがないよ
君の後ろ姿をそっと押して
きっと抱き締めてくれるはずさ
きっとね
オール漕ぐあなたへ捧ぐ
大きく
少し華奢だった背
この日 君は逝ってしまった
つなげなかった私は
今夜も ひとり
東海道線の下
紫色の海へとそそぐ
この鈍行は
一度も会ったことなどない
どこまで行っても
ハンカチなびく
明滅するこのランプの下
いつか交錯していたのかもしれない
足を止める暇もなく
ただ電気信号に従って
歩いていただけなんだ
紅の染みが野原を焦がす
そのときに なって
やっと 気付くんだ
いつも