記事一覧
『オッペンハイマー』と崇高な対象
クリストファー・ノーラン監督が手がけ、第96回アカデミー賞で作品賞や監督賞を含む7部門を受賞した『オッペンハイマー』。3月29日から日本での公開が始まったこの作品について、ラカン派精神分析の視角から縦横無尽に映画を/も論じるスラヴォイ・ジジェクのように考察することを試みたい。以下は『オッペンハイマー』鑑賞後に読まれることを想定し、作品自体の説明は深くせず、(伝記映画ではあるが、具体的なシーンを参照
もっとみる「Kyoto Creative Assemblage」のスタイル:2年目の私的更新
2024年3月9日、Kyoto Creative Assemblageの第二期修了式がおこなわれ、一期生にも声かけいただき参加してきました。京都大学、京都工芸繊維大学、京都市立芸術大学の各大学の担当講義・演習の振り返りに加えて、二期生のみなさんを交えたパネルセッションの時間もあり、一期生にとっても気づきの多い時間でした。それに触発されて、私が修了した一年前に書いたプログラム全体像の考察に対して、自
もっとみる『PERFECT DAYS』と〈対象a〉
ヴィム・ヴェンダース監督が手がけ、2023年のカンヌ国際映画祭で役所広司が最優秀男優賞を獲得した『PERFECT DAYS』。日本では2023年12月22日に公開され、個人的には2024年の映画館初めになったこの作品について、ラカン派精神分析の視角から縦横無尽にポップカルチャーを/も論じるスラヴォイ・ジジェクのように考察することを試みたい。以下は『PERFECT DAYS』鑑賞後に読まれることを想
もっとみる「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ後編
Kyoto Creative Assemblageの前半にあたるPart1「エステティック・ストラテジー」について、自身の学びの整理として本記事を書きました。ぜひ前編を一読いただいた後に、本記事をご覧ください。この後編についても、山内裕先生の趣旨・主張を正しく汲み取れていない可能性がありますので、あくまで一人のフォロワーが受け止めた内容とご理解ください。
エステティック・ストラテジーとは、既存の
「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ前編
一期生として昨年度修了したKyoto Creative Assemblageが、二期として今年度も実施されています。そして、前半にあたるPart1「エステティック・ストラテジー」にメンターとして参加していますが、その内容が一期から大幅にアップデートされているため、もはや受講生と同じ感覚で学んでいる状況です。そこで、受講していた昨年度と同じく、今年度も自身の学びの整理として本記事を書きました。一期の
もっとみるdesign thinkingとwicked problemを誰が結びつけたのか
論文を読んでいると、「〜という概念は、(研究者)が初めて提唱した」という趣旨の文章にしばしば出会う。この観点で、(理論寄りの)デザイン研究をしている方であれば一度は出会ったことがあるのは、「design (thinking) 研究に wicked problem を持ち込んだのは、Richard Buchanan である」ではないだろうか。たとえば、Interaction Design Found
もっとみる『バービー』とパフォーマティヴィティとパロディ
日本公開前に全世界興行収入が10億ドルを突破した『バービー』を先ほど観てきた。この作品も前記事で紹介した「エステティック」概念による価値創造を体現した映画のように思うが、本記事ではパフォーマティヴィティとパロディという別の光の当て方を紹介したい。なお、本記事は最後まで公開情報の範囲で記載する(ネタバレ含む内容自体の考察については、数多ある他の記事や動画を参照されたい。また、ソーシャルメディア上のや
もっとみる『君たちはどう生きるか』とエステティック
スタジオジブリ映画『君たちはどう生きるか』はエステティックによる価値創造の現在進行形の事例である、という生煮えの考えをこの記事では綴りたい。なお、執筆者は本作を7月14日・17日と2回観ているが、本記事は最後まで公開情報の範囲で記載する(ネタバレ含む内容自体の考察については、数多ある他の記事や動画を参照されたい)。
エステティック aesthetic
本記事がいうところの「エステティック」概念