中山智裕

社会人大学院生。人文社会学の視座で、戦略・イノベーション領域におけるデザインを編む。京…

中山智裕

社会人大学院生。人文社会学の視座で、戦略・イノベーション領域におけるデザインを編む。京都大学経営管理大学院 博士後期課程/JAIST 修士(知識科学)/Kyoto Creative Assemblage 1期/多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム 1期

最近の記事

二度目の自己紹介:続く「人文社会学とデザインの交差点」

はじめまして、もしくは、いつもお読みいただきありがとうございます。中山智裕(なかやまともひろ)です。 私は2022年9月にnoteをはじめました。そのときには、多くの方と同じように、自己紹介記事を書いています。そのなかでnoteをはじめるきっかけとして書いた、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)博士前期課程での研究活動とKyoto Creative Assemblageの受講については、それぞれ記事を書き、マガジンとしてもまとめました。2023年3月にそれらを修了してか

    • 『オッペンハイマー』と崇高な対象

      クリストファー・ノーラン監督が手がけ、第96回アカデミー賞で作品賞や監督賞を含む7部門を受賞した『オッペンハイマー』。3月29日から日本での公開が始まったこの作品について、ラカン派精神分析の視角から縦横無尽に映画を/も論じるスラヴォイ・ジジェクのように考察することを試みたい。以下は『オッペンハイマー』鑑賞後に読まれることを想定し、作品自体の説明は深くせず、(伝記映画ではあるが、具体的なシーンを参照するという意味で)ネタバレ含め記載する。 『オッペンハイマー』制作前の問い

      • 「Kyoto Creative Assemblage」のスタイル:2年目の私的更新

        2024年3月9日、Kyoto Creative Assemblageの第二期修了式がおこなわれ、一期生にも声かけいただき参加してきました。京都大学、京都工芸繊維大学、京都市立芸術大学の各大学の担当講義・演習の振り返りに加えて、二期生のみなさんを交えたパネルセッションの時間もあり、一期生にとっても気づきの多い時間でした。それに触発されて、私が修了した一年前に書いたプログラム全体像の考察に対して、自ら更新するためにこの記事を書きます。 プログラム全体像 私は第二期Part1

        • 『哀れなるものたち』と倫理的行為

          ヨルゴス・ランティモス監督が手がけ、エマ・ストーンが主演した『哀れなるものたち』。第96回アカデミー賞11部門ノミネートを果たしたことで注目を集めるこの作品のラストシーンについて、ラカン派精神分析の視角から縦横無尽にポップカルチャーを/も論じるスラヴォイ・ジジェクのように考察することを試みたい。以下は『哀れなるものたち』鑑賞後に読まれることを想定し、作品自体の説明は深くせず、(ラストシーンを扱う以上、当然ながら)ネタバレ含め記載する。 ラストシーンの選択肢 注目の作品だけ

        二度目の自己紹介:続く「人文社会学とデザインの交差点」

        マガジン

        • Kyoto Creative Assemblageでの学び
          13本
        • JAISTでの社会人大学院生体験談
          4本

        記事

          『PERFECT DAYS』と〈対象a〉

          ヴィム・ヴェンダース監督が手がけ、2023年のカンヌ国際映画祭で役所広司が最優秀男優賞を獲得した『PERFECT DAYS』。日本では2023年12月22日に公開され、個人的には2024年の映画館初めになったこの作品について、ラカン派精神分析の視角から縦横無尽にポップカルチャーを/も論じるスラヴォイ・ジジェクのように考察することを試みたい。以下は『PERFECT DAYS』鑑賞後に読まれることを想定し、作品自体の説明は深くせず、ネタバレ含め記載する。 〈対象a〉 objet

          『PERFECT DAYS』と〈対象a〉

          「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ後編

          Kyoto Creative Assemblageの前半にあたるPart1「エステティック・ストラテジー」について、自身の学びの整理として本記事を書きました。ぜひ前編を一読いただいた後に、本記事をご覧ください。この後編についても、山内裕先生の趣旨・主張を正しく汲み取れていない可能性がありますので、あくまで一人のフォロワーが受け止めた内容とご理解ください。 エステティック・ストラテジーとは、既存の意味のシステムを解体し、人々が本当の自分を感じられるような世界観を呈示するための

          「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ後編

          「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ前編

          一期生として昨年度修了したKyoto Creative Assemblageが、二期として今年度も実施されています。そして、前半にあたるPart1「エステティック・ストラテジー」にメンターとして参加していますが、その内容が一期から大幅にアップデートされているため、もはや受講生と同じ感覚で学んでいる状況です。そこで、受講していた昨年度と同じく、今年度も自身の学びの整理として本記事を書きました。一期の講義内容は参照せず、二期の講義内容および一期以降に公開された記事・論文・ポッドキ

          「エステティック・ストラテジー」とは何か:2年目の私的まとめ前編

          『TÁR』と欲望

          2023年のアカデミー賞では作品賞含む6部門にノミネートされ、日本では2023年5月12日に公開された『TÁR』(邦題は『TAR/ター』)。公開初日に映画館で字幕版を鑑賞し、その後に2回観るほど、惹き込まれる映画だった。本記事では、この作品にふさわしい光の当て方だと個人的に感じている、「欲望」について紹介したい。なお、本記事は最後まで公開情報の範囲で記載する(ネタバレ含む内容自体の考察については、数多ある他の記事や動画を参照されたい)。 欲望 desire 今回も、京都大

          『TÁR』と欲望

          design thinkingとwicked problemを誰が結びつけたのか

          論文を読んでいると、「〜という概念は、(研究者)が初めて提唱した」という趣旨の文章にしばしば出会う。この観点で、(理論寄りの)デザイン研究をしている方であれば一度は出会ったことがあるのは、「design (thinking) 研究に wicked problem を持ち込んだのは、Richard Buchanan である」ではないだろうか。たとえば、Interaction Design Foundationの記事でも以下の文章が確認できる。 Johansson-Sköldb

          design thinkingとwicked problemを誰が結びつけたのか

          戦略 strategyについての私的覚書

          昨年度書き上げた修士論文ではストラテジックデザイン strategic designを扱い、昨年度の受講生として参加したKyoto Creative AssemblageのPart 1方法論はエステティックストラテジー aesthetic strategyと名付けられた。そのため、「そもそも“戦略”とは何なのだろうか?(何と関連づけて語られる概念なのか?)」という思いが自身のなかにはある。以下は、現時点では明確な/根拠に基づく結論には至っていないが、戦略 strategy を

          戦略 strategyについての私的覚書

          『バービー』とパフォーマティヴィティとパロディ

          日本公開前に全世界興行収入が10億ドルを突破した『バービー』を先ほど観てきた。この作品も前記事で紹介した「エステティック」概念による価値創造を体現した映画のように思うが、本記事ではパフォーマティヴィティとパロディという別の光の当て方を紹介したい。なお、本記事は最後まで公開情報の範囲で記載する(ネタバレ含む内容自体の考察については、数多ある他の記事や動画を参照されたい。また、ソーシャルメディア上のやり取りをめぐる批判については触れていない)。 パフォーマティヴィティ perf

          『バービー』とパフォーマティヴィティとパロディ

          『君たちはどう生きるか』とエステティック

          スタジオジブリ映画『君たちはどう生きるか』はエステティックによる価値創造の現在進行形の事例である、という生煮えの考えをこの記事では綴りたい。なお、執筆者は本作を7月14日・17日と2回観ているが、本記事は最後まで公開情報の範囲で記載する(ネタバレ含む内容自体の考察については、数多ある他の記事や動画を参照されたい)。 エステティック aesthetic 本記事がいうところの「エステティック」概念は、京都大学経営管理大学院 教授の山内裕先生による「エステティック・ストラテジー

          『君たちはどう生きるか』とエステティック

          人類学の視点からデザインを広く捉えることの一例

          東京デザインプレックス研究所のフューチャーデザインラボに携わっていらっしゃる山本尚毅さんに声かけいただき、山本さんのプレックスプログラム講義「デザインを広く捉えること──社会課題と人類学の視点から」(2023年6月7日実施)のなかで、人類学の視点について私からも少しお話させていただきました。自己紹介・講義・ワークショップで45分ほどいただいたうち、講義部分のスライドをこの記事で共有します。なお、想定する受講生は“目に見える領域のデザインを学習中で、これまで人類学にふれたことが

          人類学の視点からデザインを広く捉えることの一例

          経営学におけるパーパスの特徴──学術論文の文献調査とKJ法を用いた整理

          私が学位取得した北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)では、副テーマ研究が必修単位として課せられています。この記事では、私が博士前期課程在籍1年目に取り組んだ副テーマ研究の成果物をそのまま公開します。知識創造論の講義も担当されている由井薗隆也先生に副テーマ指導教員としてご指導いただき、2022年2月23日に提出しました。 当時の成果物をそのまま転記しているため拙い部分も多々あること、また、口頭発表や査読などを通じた学術的批判を乗り越えてはいないことはご承知おきください。

          経営学におけるパーパスの特徴──学術論文の文献調査とKJ法を用いた整理

          社会人大学院生時代の振り返り:2年にわたる研究活動の紆余曲折

          北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の博士前期課程に2021年4月から2023年3月まで在籍し、修士(知識科学)の学位を取得しました。この記事では、修了後のいまの視点も交えつつ、講義・ゼミ・研究活動の順に、当時を振り返ります。 研究活動については、研究を目的とした大学院入学を検討されている方に、こんなにも紆余曲折が“あってもいいんだ”ということが伝わればと思い、情けないところも隠さずそのままを綴ります。なお、論文の内容そのものについては、今後の対外発表を目指しているため記

          社会人大学院生時代の振り返り:2年にわたる研究活動の紆余曲折

          社会人大学院生時代の振り返り:大学院選びから入学までの駆け込み

          北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の博士前期課程に2021年4月から2023年3月まで在籍し、修士(知識科学)の学位を取得しました。この記事では、なぜ/どのようにJAISTを選んだのかを、修了後のいまの視点も交えながら綴ります。 当時の実際:JAISTと伊藤泰信先生のことを知った経緯 別の記事で入学を志すまでの半生を綴ったとおり、デザイン人類学を探究するために、大学院への入学を考え始めました。2020年11月当時(の日本では)、デザイン人類学はこの記事の執筆時点ほど

          社会人大学院生時代の振り返り:大学院選びから入学までの駆け込み