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【心理学27】科学的管理法と人間関係論(組織心理学・組織論分野)

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はじめに

仕事において、以下のうちどちらが自分のパフォーマンスにより強く影響を及ぼしますか?

・報酬や労働時間の多寡
・人間関係の良し悪し

私は圧倒的に後者です😱
年収1000万円だろうが、2000万円だろうが、人間関係がギスギスしている職場で働くのは人生の無駄遣いだと感じてしまいます。
働く同僚のことを尊敬できて、一緒に同じ方向を向いて頑張っている瞬間が幸せです。
そう考えると、ベンチャー業界はやる気のある人が多く、環境的になかなか良く、働くモチベーションを保ちやすいです😁

皆さんは労働条件と人間関係、どちらがよりパフォーマンスに影響を与えますか?

実は、この問に関する研究が組織心理学・組織論の分野で長年行われておりまして、今日はその理論を少し解説させていただこうと思います!
キーワードは「科学的管理法」「人間関係論」です。


1.科学的管理法とは

科学的管理法とは、誤解を恐れずにいうと、人間を命令どおりに稼働する機械だと考える管理法です🤔
1800年代後半に提唱され始めた理論です。

この管理法の前提は、「人間は経済人である」という経済人仮説です。
すなわち、人間は損得勘定で動く動物で、経済的メリットが大きい方に向かって意思決定し、行動するものだと考えるわけです。

そうすると、本人の業績に連動して報酬をアップさせたり、時間外労働手当を多く出せば、積極的に人間は働くのだという考え方に至ります。

このような考え方を基礎として、科学的管理法では、従業員のタスクを細かく細分化し、動作を分析(動作研究)して、無駄な作業や非効率を解消した上で、一日の標準的な作業時間を算出(時間研究)します。

例えば法務でいうと、1通のNDA(秘密保持契約書)をチェックする時間を複数回、複数種類のNDAで検証し、ストップウォッチで測って、その平均を割り出したりして標準的な作業時間を算出するのです。

その上で、標準的な作業時間を切る働きをしてくれる作業効率が良い人については高賃金を提供し、標準的な作業時間を超えてしまう作業効率が悪い人には低賃金を提供するという方法で管理を行います。
稼働内容を科学的に分析した上で管理しようという試みですね😁

これをやることによって、従業員は、より高い賃金をもらうためにより作業効率を向上させるだろうと考えられてきました🤔
しかし、そう上手くは行きません。

なぜなら、人間は感情の動物だからです。


2.人間関係論とは

上記のような科学的管理法に対しては批判も多く提唱されておりましたが、比較的長い間科学的管理法は管理法の中で主流となっていました。
しかし、1920年代に入り、心理学の世界ではとても有名な「ホーソン実験」が開始されて以降、「人間関係論」が提唱され始めました。

人間関係論とは、組織の生産性は、賃金や労働条件などの客観的な要素で決定されるのではなく、人間関係によって決定されるという理論です。

この理論の重要なテーゼは以下の二つです。

(1)人間の生産性は感情によって左右される
(2)組織には公式組織と非公式組織がある

以下、解説しましょう!


(1)人間の生産性は感情によって左右される


まず、人間関係論では、科学的管理法とはほぼ真逆のことを言っています。

科学的管理法では、前述のとおり、人間を経済人であると考えていました。
経済人とは、経済的な損得勘定によって合理的に意思決定を行う人のことです。
そのため、経済人仮説を前提としています。

しかし、人間関係論では、人間は、損得勘定だけではなく、感情や人間関係によって意思決定を行っているという「社会人仮説」を前提としています。

したがって、生産性を上げたいのであれば、賃金や労働時間等の客観的指標だけを管理するのではなく、従業員の動労意欲(感情面)そのものを上げなければならないのだという考え方に至ります。
そのためにも、人間関係の管理(コントロール)が必要になるのです。

職場内の良質な人間関係を保ち、モチベーションを保つことによって生産性が向上するという考え方です。
今となっては当たり前に感じるこの理論ですが、当時はかなり大きなパラダイムシフトだったようです😁

チームって大事


(2)組織には公式組織と非公式組織がある


さらに、人間関係論では、組織の中に二つの種類の組織が存在することを提唱しています。

一つが公式組織で、こちらは会社内の規則等によって規律された組織です。
~部、~課などの組織をイメージしていただければいいかなと思います。
この公式組織は人工的に作られた組織で、経営上の命令に従い、一定の目標を持って活動することが期待されています。

もう一つの組織が非公式組織です。
こちらは自然発生的にできあがる組織で、いわば会社内で勝手に発生する友達関係、派閥関係等のことをいいます。
どこの会社でも必ず発生している組織で、例えばよく一緒にランチにメンバーや部活動の仲間などが該当します。

そして人間関係論の面白いところは、人間の生産性や勤務態度については、公式組織の規律よりも、非公式組織の規律の方が影響度が大きいとしている点です。
つまり、派閥内での暗黙のルール等によって勤務態度が変わってくるといっているのです🙄

非公式組織と公式組織のルールが異なる場合、会社側が決めた正式のルールや方針が機能せず、あくまでも非公式組織のルールが優先されると…
これ、経営管理側からすると怖いことですよね。
公式組織と非公式組織の方向性が同一であればとても良い結果を出すと思うのですが、仮に真逆を向いている場合、組織はほぼ機能しません。

こういう事態を招かないようにするためにも、人間関係の管理が必要になってくるのです。

下に行けば行くほど表情が暗くなるといういらすとやの小技!


3.人間関係が及ぼす影響

上述のとおり、人間関係論の重要な点は、人間は感情の動物で、非公式組織内での規律に強く影響を受けながら稼働しているという点です。

例えば、会社として掲げた目標Aがあったとします。
その目標Aは会社として正当な目標であり、実現可能性も高いものだったとしましょう。

この場合に、組織内に非公式組織Bがあって、その非公式組織Bのリーダー格の人たちが会社の目標Aについて批判的な立場をとり、非公式組織の中のメンバーに対しても同調を求めているとします。

このようなケースでは、非公式組織Bに所属する従業員らは、会社が掲げた目標Aを達成しようとしなくなるのです😱
例え本人の個人的な心情としては「頑張りたい!」と思っていても、非公式組織内での立場が悪くなるかもしれない状況下では非公式組織のルールに従おうとします。

これ、よくあることだと思いませんか?🤔

私はよく目にします。
組織内の一部の従業員が一生懸命頑張って稼働しているときに、非公式組織のリーダー格の人たちが「あいつは上から評価されたいがために頑張っている。一人だけ抜け駆けするためにゴマをすっているだけの男だ」などと揶揄し、陰口をいうケースなどです。
それによってやる気のある従業員がモチベーションを低下させ、平均的な稼働に落ち着いてしまうという現象です。

何度見たことか🙄

人間関係が悪化している組織では、本当に働くのがしんどくなっていきます。
その結果、退職に繋がります。
今まで数多くの転職事例を見て来ましたが、多くの転職者が本音の理由で「人間関係」を挙げます。

一方で、人間関係が良好な会社では、その組織に居続けたいという欲求が湧いてきます。
そして、何とかして自分もその組織に貢献して、存在価値を示そうという動機づけがなされます。
その結果、通常よりも良いパフォーマンスを発揮しやすい土壌ができあがります。

人間関係がパフォーマンスに及ぼす影響はとても大きいのです。
そういう意味では、私は人間関係論を支持します。

もちろんまだ不明確な部分はありますし、様々な批判もあるところだと思いますが、人間関係が生産性に大きな影響を及ぼしているのだという点は大きく肯けるところです。


4.人間関係の管理

では、人間関係の管理はどのように行えば良いのか🤔
この分野は、主に経営管理論の分野で研究が進んでおり、MBAなどでも中心的な科目になっています。
また、ベンチャー企業は比較的先進的な組織運営が試みられていることが多いので、それも含めて面白い現場です。
大学院の研究室で研究するよりよほど実践的で、リアルタイムなフィードバックが得られると思います!
人事制度や経営管理理論を学びたい皆さんは是非ベンチャー企業へ(笑)


ということで、人間関係管理の話をしましょう。
人間関係管理の目的は、人間関係を良好にすることによって従業員のモチベーションを上げる点にあります。
そして、従業員の人間関係には、上下方向(上司と部下)水平方向(同僚同士)があるので、2つの視点から具体策をいくつかご紹介しましょう!


(1)上下方向の管理法


まず考えるべきは、上司から部下への教育の充実度です。
ここが正常に機能していない場合、新しく人が入ってきても成長せず、組織は強くなっていきません。
本当の意味で優秀な人材は自分で学んで自分で成長しますが、上司からの援助が無かった場合は組織に対する愛着が一切湧かず、学ぶことがなくなったらすぐに辞めるという状態になりやすいです。
これを回避するためには、上司(マネジメント層)に教育力が必要になりますが、それを元々持っている人は極々少数です。
そこで、上司自体に「教育力養成プログラム」を導入してあげるという方法が考えられます。
マネジメント層の教育力をコントロールできれば、組織は強くなれます😁

次に、上司と部下の関係値を高めるために、コミュニケーションの機会を増やしていく必要があります。
コミュニケーションの総量が少なければ少ないほど人間関係は悪化しやすいです🤔
かといって、多すぎても人間関係のトラブルのもとです。
そこで、月に1回、または四半期に1回程度「定期1on1」を開催してもいいかもしれません。
しかし、この試作はあくまでも上司・部下間にある程度の信頼関係が構築されていることを前提としています。
大手企業でいきなり1on1を導入しても上手くいかないことが多いのですが、それは上司がそもそも尊敬されていないからです。
大手企業では年功序列の性質が強いので、能力がないままマネジメント層になっている人が少なくありません。
そういう組織では1on1自体が苦痛の種になることが多いです。
コミュニケーションの前提として、信頼関係があることを忘れないようにしないといけません。

一方で、部下がその組織に居続ける理由を創出するという視点もあります。
これは、自己効力感を満たすという視点です。
部下は、自分が細分化された誰でもできる作業しかできていないと感じるとモチベーションを低下させていきます。
自分がその組織においてほとんど存在価値がないと思ってしまうと、誰もが働く意欲を失うものです😱
そこで、「ボトムアップ型提案制度」を導入してみると良いかもしれません。
これは、一般社員(部下層)から改善提案を匿名でも何でも良いのであげてもらって、その中からいくつかを選出して実際に改善行動まで移すという施策です。
提案が受け入れられた社員は、自分が会社の制度を動かしたという自己効力感を得ることができますし、同時に自己肯定感も満たされます。
日頃からトップダウンで経営を行っている会社ほど実施してみるべきかと思います。

そして、上司と部下の相性が悪い場合のことも考えておくべきです。
人間同士ですから、関係性が悪化してどうしようもなくなることがあります。
そうなったとき、部下には逃げ場がありません。
限界まで我慢するか、転職するかです。
会社にとってはどちらもメリットがないでしょう。
そこで、「上司指名制度」の導入を検討してみてもいいかもしれません。
ある程度の規模感がないと実現が難しい制度ですが、部下が上司を選べる制度を導入しておけば、辛くなったら別の上司のところにいくことができるという逃げ場ができます。
限界まで我慢する、転職する、の他に「異動」という選択肢ができるだけでもだいぶ楽になるはずです😱

最後に、様々な人間同士のトラブルについて、「相談窓口」を設けておくべきだと思います。
相談内容の秘密が確保される場所を作ってあげて、専門のカウンセラー等を配置すると良いでしょう。
会社の中にそういう窓口があるということが心理的な補助になることがあります。

なお、これらの施策はあくまでも社内の人間関係のコントロールする(良質な状態を保つ)ための施策です。
そのため、一部の声の大きな社員のワガママを聞くためのものではないので、その点は間違わないようにしましょう。
制度を作るとその制度を悪用する人が必ず出てきますから、その点をしっかり覚えておきましょう!

上下の関係は難しい


(2)水平方向の管理法


続いて水平方向(同僚間)の管理法について考えてみましょう。

まず考えられるのは「全社横断型の研修制度」です。
新入社員全員で参加する研修等がこれに該当します。
これを行う目的は教育だけではありません。
同僚間のコミュニケーションの促進も目的の一つです。

例えば、部署に1名しか新入社員がいない場合、その人はかなり強いストレスを感じることになります。
組織の中で自分だけが何もわからず、何も知らず、足手まといになっているのですから非常に心苦しい状態が続きます。
そんなとき、新入社員が集まる研修等があり、他の新入社員とコミュニケーションをとることができれば、他にも同じような状況の人たちがいるのだと安心することができます。
そのため、全社横断型の研修制度を導入する際は、講義形式ではなく、対話形式又は参加型研修にするべきです。
同僚間で一緒に作業をしてコミュニケーションが取れるような制度にすると良いと思います。

次に、社内の「各種懇親会の実施」が考えられます。
半期ごとの表彰式、期末の懇親会・宴会、花見、社員旅行などなど。
様々なレクリエーションを通じて社員間の繋がりを作る機会を創出するのです。
「部活動」なんてものを作るのもありです!
フットサル部、野球部、バスケ部など、様々なスポーツの部活を作っても良いでしょう😁

その他にも社交的ではない人たちのためにチャットやオンライン上だけで完結するような懇親会なども有効です。
従業員間の勉強会なども良いかと思います。
ただ、部活動・勉強会は十中八九自然消滅しますので、原則は人事等が主催する懇親会で検討すべきです。
人間関係を構築し、それを維持するのは想像以上に労力がかかるので、従業員間の自発的な活動に委ねるとあまり上手くいきません。

他にも「パパママ会」「介護仲間」などの括りでグループを作ることも検討して良いかと思います。
長く会社に勤めていると、30代、40代、50代が徐々に増えてきます。
そして、この年代はパパママ又は介護に追われる世代です😱
初めての子育て、初めてのお受験、初めての介護…
仕事以外で悩んでいる人は多いものです。
そういう私生活上の相談を同じような立場の人、又はそれを経験してきた人に相談できる場があると少し心が楽になります。

最後に、「希望制ジョブローテーション制度」を導入することも一案です。
最近のベンチャーではほぼジョブ型採用になっていると思いますが、全員が専門職志向というわけでもないでしょうし、適性がない人もいます。
同じ人間が同じ組織でずっと同じことをし続けることで同僚間・部署間の関係性が悪化することもあります。
他部署の実情や業務内容を把握することで自己の専門職が一段深くなることも大いにあります。
そこで、希望制のジョブローテーション制度を導入し、新しい職種へのチャレンジがしやすい環境を作ってあげると良いかもしれません。

これらの施策は単に設置すれば良いというわけではなく、あくまでもツール(手段)の一つです。
経営層が組織を管理するための道具でしかないので、どういう管理をしたいのか、目的を明確にした上で使い分けることが重要です😁


後の朝倉南と上杉達也である


おわりに

ということで、今日は科学的管理法と人間関係論について簡単にですが解説させていただきました😁

人間関係管理の方法については他にもたくさん手段がありますので、人事の皆さんは特にその種類を学ばれてみると良いかと思います。
手段を多く知っていれば、それだけ対処できる問題の種類も増えます。

現状、人事という職種に就いている人は山ほどいますが、本当に意味で人事のプロと言える人は極少数です。
だからこそ、少し勉強するだけで人事分野のトップ層に入ることができます。

今後のキャリアを考えた場合、人事のプロというのはなかなか狙い目の職種だと思うので、人事に興味がある方はこの分野の勉強をしてみてはいかがでしょうか😁

ではまた書きます!


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この記事は、株式会社WARCの瀧田が担当させていただいております。
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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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