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非行

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息子の非行の日々
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#非行

久しぶりの次男のこと

久しぶりの次男のこと

義母から果物が届いた。
私と夫では到底食べきれない量。
きっと次男のところへ持っていく口実にしなさいという優しさが含まれている。

『おばあちゃんが桃くれたけど多いから食べて』
と連絡すると素直な返事がきた。

ここぞとばかりに次男の好きな食べ物や野菜ジュースを持って行った。

力仕事をしている次男。
この信じられない暑さの中、1日中外で働く。
仕事終わりの次男は真っ赤に焼けて目の下もくぼんでいた

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私が分かったこと

私が分かったこと

やっと思い出話が終わった。
現在に追いついた。
次男が非行に走ってから巣立つまでの7年間を一気に振り返った。

次男の非行というのは分かりやすい出来事であって結局は私自身のことを知るために起きたことなのかもしれない。

自分が何を怖がり何を守ろうとしているのか。
本当の自分の本音に気づけるまでに長く時間がかかった。普段感じる感情以外の本当の本音があることにも気づいていなかった。

自分の本音に気づ

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悲しい思い出

悲しい思い出

次男の交通違反が続いた頃からまたうまくいかない。
仕事のお弁当の有無を聞いてもちゃんと返事しない、
起きる時間を聞いてもはっきり聞こえない、
夕食の有無を聞いても黙っている、
おはよう、おかえり、おやすみを言ってもすべて無視。

肉体労働でしんどいのかもしれないが目に余る勝手さだった。返事がないなら作らない、起こさない、を宣言し貫けばよかった。

あの頃の私には毅然とした態度が足りなかった。
こう

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理解できない

理解できない

次男は仕事へ行き休みの日は一日中遊んだ。
そしてある日ポストに手紙が届いた。
次男宛の手紙が届くときはいつも胸がぎゅっとなる。

次男がスピード違反をしてオービスに写真を撮られたことを伝える内容だった。
60キロのところを90キロ出していたようで即免停になった。

大きな道路でスピードが出てしまうのは多少理解できるが、免許とりたての初心者が一般道路でこのスピードを出せるのが信じられなかった。

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夫と長男と次男

夫と長男と次男

次男の面会にも行かず様子も聞かない夫は相変わらずだったが、私はそれをよしとした。
やれるだけをやると決めた自分の気持ちを貫き、夫にも優しく明るく過ごしていた。

手放せないものがたくさんある時はしんどい。
どうなってももういいや、成るようにしかならない、ただ物事が起こるだけと思えたらずいぶん楽な気がした。

ある時夫と外食をした。
食事が終わるころ夫が泣いた。

夫は泣かないので泣くと悲しい。つら

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長男

長男

今日は初めて長男のことを書いてみようと思う。

長男は小さな頃から手がかからない子だった。
聞き分けがよくわがままを言うこともほとんどなかった。
誰の空間も邪魔しないような空気感で、家にいても居たの?と思うほど気配が無くよく驚かされた。

初孫で両家の祖父母から愛された。
大人の用事で連れ回すことがあっても自分なりの時間を過ごすことが出来た。
絵が好きで本が好きで静かで物を丁寧に扱う子だった。

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2度目の少年院へ

2度目の少年院へ

1人暮らしを始めてすぐにまた次男は警察のお世話になり2度目の少年院へ。

私は生まれて初めて通る道を運転し面会へ行く。
次男が少年院に居る1年の間に何度この道を通るだろうと考えた。

1本道をずーっと真っ直ぐに車を走らせる。
少年院はいつも遠かった。

1度目の少年院は短期だったが、今回のような長期の少年院は非行が進んだ子どもが多い。
次男のことを棚に上げて、非行の進んだ子の影響を受けないで欲しい

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新しい暮らし

新しい暮らし

次男の1人暮らしはスタートした。
廃墟団地、会社の寮、鑑別所、少年院、一体どれだけ住まいを転々とするんだろう。

私は時々次男に会い食べ物を渡したりしていた。

夫はそんなことをしたら出て行った意味がない。
次男には意地がない、甘えてばかりだと嫌がった。
甘やかすから調子に乗るんだとも言っていた。

私も決して甘やかしたかったわけではない。
見放せたらどんなに楽だったろう。
もう知らない、無理です

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夫の限界

夫の限界

「出て行け」と言われた次男。
そう言われてどこかに行くと次男はいつも大変なことになるのだ。

私はすぐに保護司に連絡した。
遅い時間だったがすぐに来てくれた。
荒れた部屋を見ても落ち着いていた。

私はもう参っていた。
繰り返されるこういうバトルに消耗していた。
保護司に対し半泣きで
「夫にもう少し助言して欲しかった、荒れないように言って欲しかった」と八つ当たりをした。

保護司は、
「私はお母さ

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いつもこうなる我が家

いつもこうなる我が家

案の定、財布のお金が減った。

夫はそうなることが予想できていたのか怒ってはいなかった。
ただ、自分の勘違いではないことを確認したかったのだと思う。
夫は見て見ぬふりをする人ではない。
次男の部屋へ話に行った。

前からお金が減っていると思っていたこと。
あえて財布を置きっぱなしにしたこと。
家族しかいない家でお金がなくなるとしたら次男しかいないということ。
人の財布から金をとるな、そんな

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怖かった世間

怖かった世間

仕事を辞め、だらけた生活はひと月ほど続いた。

とにかくあの頃は次男が何もせずプラプラすることを受け入れがたかった。

このまま仕事も学校も彼女もいない次男がどうなって行くのかが不安だった。
次男ではなく私自身が不安だった。

息子さん何してるの?と世間に思われている気がしていた。
世間って何だろうと思う…。
結局、ただの近所の目が世間なんだろう。
私は誰に対して良く思われたかったんだ

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仕事と彼女

仕事と彼女

次男に彼女ができた。
非行の再犯防止には【仕事と彼女】と聞いたことがある。
仕事で誰かの役に立ち、好きな人といる幸せがあれば悪いことなんてしないのだろう。

単純だがこれに尽きると思う。

彼女は明るく元気で何よりも次男を好きになってくれて嬉しかった。
彼女の親御さんとは面識があった。
羨ましいくらい家族仲のよい素敵なおうちだった。

次男は仕事から帰ると身支度をし毎日のように彼女の実

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私へ

私へ

なるべく淡々と書くつもりだったのに
気持ちが入りすぎて消耗したね。
いったん休憩しよう。

次男の思春期から少年院を出て働き始めたところまで書けたね。

記憶や手帳で辿りながら書いてみたけど思い出すとやっぱり泣きが入ったね…。そりゃ涙でるよね。

それにしても…どんだけあなたメモしてるの…。
次男中心の世界を生きてたんだね。

次男じゃなく早く自分のことに気づけたらよかったね。悲劇のヒロインして忙

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少年院生活の終わり

少年院生活の終わり

ついにこの日が来た。半年間の少年院生活。
社会生活の中では更生が難しいと言われた次男の矯正教育が終わる。

少年院を出たから終わりではなく、継続して保護観察はつづく。今回も前と同じ保護司が担当になり有り難かった。

次男には守らなければいけない遵守事項がある。
仕事をする、帰宅時間を守る、交通違反をしない
といった難しくない内容だった。

少年院を退院した次男は1番に散髪に行きさっぱりとした。

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