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旅と映画と本と。

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訪れた街とお気に入りの映画と本のお話。
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青と白の世界で

青と白の世界で

Chamonixを選んだのは、何となく山が見たくなったから。
モンブランの麓にあるフランスの町、Chamonix。
フランスと言ってもスイスの国境近くにあるので、Zurichからバスで向かう。

冬はウィンタースポーツのためにたくさんの人が訪れ、夏は避暑地としてハイキングやスカイダイビングを楽しめる町だ。
フランスなので、食事も美味しい。少しクセのあるチーズたっぷりのグラタンがとても美味しかった。

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Little Women

Little Women

自粛解除となったので、早速ストーリー・オブ・マイ・ライフを観に行きました。
南北戦争時代はもう150年以上前の話なのに、
ここ数年の自分の中の悩みや葛藤にシンクロする部分がある映画です。

女性の幸せは結婚だけじゃない。
自分で働いて自立して生きる道もある。
でも社会がそれを許さなかったり、
自分の中にある孤独や寂しさがその考えを曇らせる。
周りが結婚し、家庭を築く中で不安はどんどん広がっていく。

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ミモザと春を告げるカーニバル

ミモザと春を告げるカーニバル

ニースに行ったのは、ちょうど2年前の今頃。
夏がベストシーズンの南仏だけれど、2月は素敵なお祭りがあります。
このお祭りはヨーロッパ三大カーニバルのひとつと言われており、その歴史は15世紀の謝肉祭から始まります。毎年2月の中頃から2週間ほど開催され、昼間はたくさんのお花で飾られた山車とミモザの花が綺麗な花合戦、夜は「王様」をテーマにしたパレードが行われるのです。
曜日によってイベントも違うので、詳

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JOJO RABBIT

JOJO RABBIT

ジョジョはイマジナリーのアドルフおじさんと会話してしまう、拗らせたナチス信者。
でも臆病で、優しくて、甘ったれで、ママが大好きで、自分で靴紐が結べない、どこにでもいる10歳の少年である。
母ロージーは父親不在の中、女手ひとつでジョジョを育てる。勇敢で、愛に溢れ、戦争を嫌い、ジョジョを深い愛で包み込む母親だ。
ある日ジョジョは屋根裏の隠し部屋で匿われているユダヤ人のエルサに出会う。
『野蛮』『角があ

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『パラサイト』

『パラサイト』

おそらくこの映画は観る人によって受け取り方が違うのだろう。
今まで挫折を経験した事がなく、映画に出てくるような裕福な家庭であるパク一家の側にいた人は、この映画のエンディングが理解できないのではないだろうか。
そして半地下の家族であるキム一家の行動や感情に共感できた人は、どこかで彼らが裕福な家族に抱いた感情と同じものを感じた経験がある人だろう。

坂の上と下で世界は異なり、パク一家の庭には陽の光が降

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『アナと雪の女王』と『もののけ姫』

『アナと雪の女王』と『もののけ姫』

「会いに行くよ。ヤックルに乗って。」

アナ雪2のエンディングの後、私の頭の中に響いたのはこれだった。そう、もののけ姫。
もちろんこの映画にヤックルはいないし、エルサは森で育った野生児でもなければ、エルサとアナは姉妹である。

しかし森の民とアレンデールとの関係性が、シシ神の森とたたら場の関係性に似ているのだ。
もののけ姫は両者の全面戦争であるが、アナと雪の女王はダムでの出来事がそれにあたる。

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雪のノイシュヴァンシュタイン城

雪のノイシュヴァンシュタイン城

せっかくなら雪に覆われた城を見てみたいと思い、1月にミュンヘンを訪れた。
雪が少ないロンドンに比べて、到着したミュンヘンは雪で真っ白だった。
街に着いたのは金曜日の夜。ホテルに荷物を置いてから夕飯を食べに行くことに。
雪が音を吸収しているせいか、金曜なのに街は静かに感じる。繁華街に着いても煩い感じはなかった。 
観光地のはずなのに不思議に感じたが、その謎はすぐに払拭された。

観光雑誌にもよく掲載

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Love the Coopers

Love the Coopers

perfectly imperfect.

クリスマスマーケットに続いて、
クリスマスの映画をひとつ。

邦題は『クーパー家の晩餐会』

タイトル通りクーパー家という家族のお話なのだけれど、単に幸せな家族の話というわけではない。
Mr.CooperとMrs.Cooperは熟年離婚寸前、その娘は婚約者に浮気された傷を引き摺って独り身なのに、見栄を張って空港のバーで出会った男性に恋人のフリを頼む。息子

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クリスマスマーケット-2

クリスマスマーケット-2

宿に着いたのは23時はとうに過ぎていたと思う。
朝ごはんを食べてから、ドイツのクリスマスマーケットを目指す。
夜には気づかなかったけれど、外は深い雪に覆われていて、空からは今にも雪が降り出しそうだった。

最初の目的地はハイデルベルク。ドイツ最古の大学があるこの街は、ゲーテやショパンにも愛された歴史ある街である。
クリスマスマーケットは前日に訪れたものより小さい。
ドイツのクリスマスマーケットだけ

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クリスマスマーケット

クリスマスマーケット

到着した空港はドイツのシュトゥットガルト。
最初に目指したのはフランス、アルザス地方のクリスマスマーケットだった。

友人がレンタカーを運転し、牧場とワイン畑を横目に他のメンバーはGoogle MAPを確認していた。
1つ目のマーケットはコルマール。
ここはハウルの動く城に出てくる街のモデルと言われている。
微妙に歪んだ木の柱と窓枠、クリーム色やミルキーピンクで塗られた壁が童話の世界を彷彿とさせる

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『Millennium』

『Millennium』

世間では映画『ドラゴンタトゥーの女』の方が認知度が高いのかもしれない。

スウェーデンを舞台にしたこの推理小説は、リスベットという背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性を中心に物語が展開されていく。

彼女の出生の秘密は徐々に明かされていくが、私がこの小説で何よりも推したいのは、雑誌編集長であるミカエルとリスベットの関係性である。

リスベットは天涯孤独の身であり、特異な能力がありながらも暴力と屈辱

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『JOKER』

『JOKER』

ー本当の悪は、笑顔の中にある。

アメコミファンではない私は、バッドマンにジョーカーという悪役が出てくるぐらいの知識しかなかったので、もちろんジョーカーがどんなキャラクター設定で、どんな残虐な悪役なのかも良く知らない。

ただ現代社会においてジョーカーになってしまった人間は少なからずいるのではないのだろうかと、先週末この映画を観たときに思った。

そもそも本邦公開前からアメリカではこの映画が物議を

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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

前回ニューヨークについて書いたので、私が好きな映画でニューヨークが舞台となっているものをひとつ紹介。

“Extremely Loud, Incredibly Close”

好きな映画を挙げるときに、この映画のタイトルを口にすると大抵聞き返される。原題も邦題も長いこの映画は、9.11に係る話である。
とはいえ9.11の様子が直接的描かれているシーンは殆どなく、
ストーリーとしては9.11で父親を

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夢と挫折と欲望と成功の街。

夢と挫折と欲望と成功の街。

私がはじめてひとり旅をした街、ニューヨーク。
その後2回、旅行で訪れた。

ギラギラと光るネオンと、高く聳える摩天楼。
この街ではいつも何かが『満たされない』ように感じる。
実際は美術館やお洒落なカフェ、セントラルパークでの散歩や、ルーフトップバーでお酒を飲むなど、
十分過ぎるほどニューヨークを楽しんでいるわけなのだけれど。
それはニューヨークという街のせいなのかもしれない。

街はいつも人で溢れ

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