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JOJO RABBIT


ジョジョはイマジナリーのアドルフおじさんと会話してしまう、拗らせたナチス信者。
でも臆病で、優しくて、甘ったれで、ママが大好きで、自分で靴紐が結べない、どこにでもいる10歳の少年である。
母ロージーは父親不在の中、女手ひとつでジョジョを育てる。勇敢で、愛に溢れ、戦争を嫌い、ジョジョを深い愛で包み込む母親だ。
ある日ジョジョは屋根裏の隠し部屋で匿われているユダヤ人のエルサに出会う。
『野蛮』『角がある』などナチスが行ってきたプロパガンダに洗脳されているジョジョは、戸惑いながらもエルサと心を交わしていく。
そして第二次世界大戦は終局へ、ドイツは敗戦することに。ジョジョを取り巻く世界は、戦争と共に大きく変わることになる。

この作品は登場人物のそれぞれがとても魅力的だ。
どこにでもいる愛らしい10歳の少年ジョジョ。
勇敢で愛情深い母親のロージー。
ゲシュタポに怯えながはも毅然と振る舞うエルサ。
ジョジョの唯一の現実の友だち、ヨーキー。
ジョジョの事情を知りながら、悟られぬよう助けるクレンツェンドルフ大尉。

中でも私が好きなのはロージーとクレンツェンドルフ大尉だ。
ロージーについて言えば、スカーレット・ヨハンソンの演技が本当に素晴らしい。暗い時代のはずなのにいつも明るく、気丈で、息子を一心に愛している。映画を観ていて、それが本当に伝わってくる。「おかえりなさい。ママにキスをあげてね。」と戦地から帰ってきた少年兵たちに声をかけるシーンも、彼女が愛情深い母親であることを象徴している。

そして、最大の推しはクレンツェンドルフ大尉だ。
物語はあくまでジョジョ視点で描かれているので、彼に対する描写は少ない。しかし彼がロージーやジョジョの事情を知りながらも、ジョジョを守っているははっきりとわかる。ジョジョがユダヤ人に興味を持ち始めたときも聞き流し、ゲシュタポがジョジョの家に来たときは特に用事もないのに家に現れ、うまくエルサを見逃した。そして最後はジョジョの命を救う。部下のフィンケルとの関わり方を見ていると、何となく彼は同性愛者なのではないかと思った。そしてフィンケルはその物腰から同性愛者あるいはトランスジェンダーのように感じる。
ナチス支配下のドイツではユダヤ人だけでなく、同性愛者もホロコーストの対象となっていた。
大尉である彼はナチスに疑問を持ちながらも祖国を守るために働き、フィンケルを部下とすることで庇護し、ジョジョのこと助けたのだと考えると何て格好いい生き様なのだろう。

10歳のジョジョは守られていた。
しかし大尉の言葉から、自分がエルサを守る立場になることを決意する。
ジョジョは靴紐を自分で結び、大人への一歩を踏み出すのである。

これからこの映画を観る人たちには、ぜひ愛すべき登場人物たちの魅力を感じてほしい。


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