記事一覧
第35回歌壇賞候補作品を読む「海のもの、山のもの」③
大勢の客にぎわいし日々ありき食堂がらんと天井高し
「がらんと」した食堂に主体が訪れる。普段なら大勢の客で賑わっているであろう食堂の静けさの描写。天井高しとあり広々とした気持ちよさと少しの寂しさ。主体の気持ちも同じだろう。
青年は椅子を立ちたりひらひらと日本地図のみ一枚持ちて
青年という爽やかな響き、青年を通して気ままな一人旅への好意的な感情。ひらひらと一枚持ちてなど軽やかな描写。身軽な青年に対し
第35回歌壇賞候補作品を読む「海のもの、山のもの」②
えぐられた山の苦しみひたひたとトンネルのうちに水したたらせ
えぐられた山という表現が主体の気持ちと重なる。トンネルを掘るため、えぐられた山の苦しみは主体の苦しみであり、ひたひたと、したたらせというリズムからなんとも言いようがない痛み、水ではあるが血が滴る気持ちにさせられる。
くさはらに寒立馬(かんだちめ)おり軍馬にも農耕馬にもならずあゆめり
寒立馬(かんだちめ)は、青森県下北郡東通村尻屋崎周辺に
第35回歌壇賞候補作品を読む「海のもの、山のもの」①
松本志李
海のもの、山のものより
前回の斉藤君さんの「ナイトフィッシュ」に続き、全首感想を残しておきたい作品です。
今回も長くなるので3回に分けて載せていきたいと思います。
松本志李さんの作品が読みたくて歌壇二月号を購入しました。(歌壇を買ったのも初めてです。)
北へ北へと行く夏真昼この坂にマゼンダ色の花は咲きおり
北へ北へと行く夏真昼まで一気に読むリズムに勢いがあり主体のワクワクした気持ちを
THE FIVE SENSES【感想】⑤
吉田岬
Smellより
追悼
5つの中でいちばん難解。臭覚の反応鈍いんかな?私。吉田さんの作品は今回初めて読ませていただき正直ぶっ飛んでいるな‥(失礼があればごめんなさい)何度も何度も読み返してクンクン嗅いでみて吉田ワールドの脳内を解りたいと思った。
ああなんて男殴ってそうな顔唾液の匂いの恋の末裔
これは多分キス(というより接吻の方がしっくりくる)してるところなんだろう。とても濃厚な。主体の
THE FIVE SENSES【感想】④
夜月雨
Touch
散花
全体を読んで私なりの解釈で感想を述べたい。
まず一首づつの感想では作品全体のバランスが崩れてしまうので少し対比させてもらった。
そのため作品の並びが前後しているので全体を楽しみたい方は迷わず夜月雨さんにDMを。
紙媒体でぜひ手に取って味わって欲しい。
これはひとつの芝居のようだ。たとえば殺すA、殺されるBとする。このAとBのふたり芝居。そして短歌と俳句の融合。相聞歌。