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THE FIVE SENSES【感想】⑤

吉田岬
Smellより

追悼

5つの中でいちばん難解。臭覚の反応鈍いんかな?私。吉田さんの作品は今回初めて読ませていただき正直ぶっ飛んでいるな‥(失礼があればごめんなさい)何度も何度も読み返してクンクン嗅いでみて吉田ワールドの脳内を解りたいと思った。

ああなんて男殴ってそうな顔唾液の匂いの恋の末裔
これは多分キス(というより接吻の方がしっくりくる)してるところなんだろう。とても濃厚な。主体の好みの異性、嗜好←男殴ってそうな強いタイプが恋のお相手か。

残り湯で洗ろたシーツが神聖にあんた帯びとる、包まれて寝る
ここ、何度も考えたのだが残り湯で洗う前のシーツの上での情事か?残り湯とあるのでお風呂場での情事か?どちらにしろ情事を嗅いでいるわけだ。

金木犀無き国にあれ金木犀知らんまま燃ゆ祖父火葬場
金木犀無き国にあれと言うものの‥臭覚から金木犀の匂いをイメージする。だがなぜ祖父は金木犀の匂いを知らずに亡くなったことを主体はそのほうが良いと思っているのか?主体にとっての金木犀が特別なものであるに違いないはずなのに。ここが解りそうで嗅げなかった。

挽き肉にプールの気配を閉じ込めて夫のために焼くハンバーグ
情事の相手を詠む歌。プールの気配というところから夫とは別の男のことを考えながら作るハンバーグ。主体は相手に、俺のこと考えてるんだろ?と言いたいのではないか。

良心は誰に組まれたコードなん?赤信号を一人で渡る
前の歌からの続きで情事の相手に対して良心を説いている。おそらく情事は「続けられない」と相手に言われたのだろう。しかし主体は思いを断ち切れないでいる。

バンクシーという稀代の犯罪者の犯罪の価値を決めるオークション
バンクシーはストリート画家でここで犯罪者と捉えるのは「壁の落書き」を犯罪とみるか、否か?壁の落書きではなく芸術として評価されている。「犯罪」の価値を決めるオークション。一連の流れからこの歌を捉えると「情事」における社会的倫理とそれを求める者たちの価値観。「情事」を肯定するオークションと捉えた。

実体が一で虚勢が九十九、百己夜行の先頭をゆく

主体の実体は無いに等しくほぼ虚勢で進んでいく様。百鬼夜行の鬼を己に変えることで自身が鬼であると強調しているのでは無いか。鬼となっても貫きたい恋というところか。

焼け焦げた記憶を拾う 放電で、壊れた脳で、わたしで、   で
最後の空白には何が入るのだろう。「あなた」だろうか?祖父の火葬場で自らの恋の記憶を焼いたのだろう。たったひとりで。

でも胸はまだ熱いやろ?
心から、愛しとったよ
夕暮れに
ああほんま、ほんまにすまん
すまん、まだ忘れられへん
ほな またな

この詩の中に主体の気持ちがストレートに込められている。この詩を短歌の間に散りばめて情事の相手、自分の恋を追悼しているのではないだろうか。

反応 斎藤君
火葬されて初めて清くなれるから赤信号を二人で渡る

一見綺麗にまとまっている。いやだが怖い。ちょっとゾクッとくる。赤信号を二人で渡った先‥が初句に戻る。ふたりの未来は火葬場。
斎藤君さんのこういうブラックな歌。たまりませんね。脳への刺激がゾワゾワします。
この歌は警告です。情事への警告。

全ての五感を読み終えて脳が破裂しそうです。
すごい刺激的でした。でも楽しかった。謎解きをしている気分も味わえた。それこそ脳内で五感をフル活用した。

そしてこの感想は私個人の感じかたであって読者それぞれに違う角度や解釈で読まれていくのだと思う。もちろん作者それぞれの込めた想いとは全く別の内容になったかもしれない。
それでも気になった作品の感想を書き残したいと思う。何より有意義な時間だと思うから。私の自分時間の楽しみかたを見つけた。
素敵な作品をありがとうございました。
ここまで読んでくださったあなたにもとっておきの感謝でいっぱいです。
ありがとうございました!


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