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梅雨の短歌評☔️

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素敵な歌人さんが梅雨すみれの短歌に評を書いてくれています。
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短読③ 乳ボーロ、マルボロ、ボロボロ落ちる音止まない雨と山積みの服

短読③ 乳ボーロ、マルボロ、ボロボロ落ちる音止まない雨と山積みの服

はじめに

三首目は、梅雨すみれさんの歌です。ご投稿ありがとうございました。音の連なりからどんなイメージに着地しているのか考えました。どうぞよろしくお願いします。

まず読んで思ったこと

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 これは余談ですが、〈乳ボーロ〉はあたりまえだのクラッカーで有名な大阪前田製菓の商品らしいです(詳しく調べていないので別メーカーさんに同じ名前の商品があるかも)。わたしはこのお菓子を「丸ボーロ」と

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業務用スーパーがあるこの町で君とは別の家族と暮らす (黒あげは。)

「業務用スーパー」なんてオシャレでもなんでもないどころか俗的なこんな単語で、こんな切ない歌が生まれることを私は知らなかった。いや、このリアリティしかない単語だからこそ、その陰に存在したと思われる真実の物語を想像して惹き込まれてしまうのだ。作者は若い頃、ここで「君」と一緒にアルバイトしていたのかもしれない。購入ロットの大きいここの商品は一人暮らしには向かない。将来、家庭を持って子どもたちをもうけた暁

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雪が降る前に感じる静けさと期待外れの冷たい既読 (黒あげは。)

私が短歌に一番大切だと思うことは「感情の表出」なのだが、最近見る作品の多くは言葉扱いの器用さばかりが目立って感情が見えない。それに対してこの作品は「哀」の感情がたっぷりと浸みわたっており、AIには作れないうたらしさがあると感心した。音もなくしんしんと迫ってくる良くない予感が、色温度の低い単語で淡々と述べられている。「期待外れ」と「冷たい」は重複の感があって気になるが、「雪」「静」「外」「冷」を並べ

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