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マインドフルネス実践(応用編②)



得意な感覚を使ったマインドフルネス(続き)

音楽鑑賞(聴覚)

本当に超無気力状態の人は好きな音楽を聴きましょう。

ただし、マインドフルネスとして行うには少しコツがあります。

リラックスした姿勢で身体の力を抜き、目を閉じます

しつこいようですが、下の記事に書いたように、特定の楽器の音だけ聞き続けるという聴き方をしてください。

慣れてきたら、一曲ごと、一定時間ごとに聴く音を変えて集中の転換をトレーニングすることができます。

何度も言いますが、下の記事で説明した内容を必ず意識してください。

そのため、使う音楽はできれば以下の条件を満たすといいです。

・インスト曲、または洋楽。「歌詞が分からない」ことが重要です。言葉はどうしてもあれこれ思考を膨らませ集中を妨げるからです。
・ただし、言葉からイメージを想像するのが苦手なASDタイプの人は意外と平気な場合もあります。(自分がそうでした)

・打ち込みでなく、楽器を演奏している曲。クラシックやロックやジャズなどのジャンルは使う楽器が大体決まっているので、一曲ごとに「どの音に集中しようか?」と思考する必要がなく、やりやすいです。また、聴くのに慣れてきたときに、同じリズムやフレーズのくりかえしの中にも微妙に違いがあることに気づけ、楽しいです。

慣れてきたら音が鳴ってる「位置」を想像しましょう。
音が鳴っている方向や距離を感じ取ってください。

うまくハマれば音を「そこにある物」のように感じることができます。

ボーカルの表情だったり、楽器の弦の触り心地、風景などが自然に浮かんでくるようになります。
(ただしそれが目的ではないので、そのために頑張ろうとはしないでください。)

また、ちょっとしたヒントですが、ベースやバスドラムなどの重低音を聞き分けるときには、「振動」として捉えると聞きやすいです。
耳ではなく頭部の皮膚に伝わってくる空気の振動を感じるつもりで聴くと聴こえやすくなります。

聴覚的アプローチの大きなメリット

呼吸を使うマインドフルネスのメリットは、丹田(へその少し下・腸のあたり)からセロトニン分泌を促すことですが、聴覚を使ったやり方にも大きなメリットがあります。

それは、規則正しいリズムを感じることで「時間の感覚が整う」ということです。

発達障害や精神疾患系の人で、「時間にルーズなのが治せない」という人は多いと思います。

近年の研究によると、これはドーパミンの代謝異常により時間経過の感覚が狂っていることが原因です。

楽しい時間はあっという間だけど、退屈な時間は長い、と感じるのは誰でもありますが、それが極端になっているのです。

(さらに極端な例だと、覚せい剤を打った人は時間がすごい速さで過ぎるのを感じるそうです)

科学的根拠としては、健常者と障害者を集め「1分を頭で数えさせる」実験を行ったところ、障害者は実際の時間に対する誤差がずっと大きく、しかも遅れる方が大半でした。

そこでメトロノームのような「規則的なリズム」に合わせて動作することにより、ドーパミン系回路に働きかけ少しずつ時間感覚を矯正できるのです。

無気力状態で音楽鑑賞しかできない人も、聴きながらわずかに首を振ったり指を叩いたりすると訓練効果が格段に上がりますので試してみてください。

また、これを医療に応用したものがインタラクティブメトロノーム(IM)で、音ゲーに似たタイミング合わせを1/1000秒単位で測る、専用機器を使った訓練です。

国内でも認知症の治療等に使われています。

触覚を使うアプローチ

感触が気持ちいいおもちゃ道具、というのは実にたくさんあります。

特殊素材のぬいぐるみや、ヘッドスパワイヤー(下図)など、種類が多様です。

ヘッドスパワイヤー

人によって向き不向きがあるので、安価なものから試してみるのがいいと思います。

くり返しですが、ただ漫然とそれらを使うのではマインドフルネスにはなりません

マインドフルネスの注意点に書いたことを常に意識し、前章レーズンセラピーのようにゆっくりと丁寧に感触に集中しましょう。

個人的な推しはストレスリムーバーツールのパルスエッグです。

触ると微弱な電流が流れて指先を刺激し、意識を「今、ここ」に戻してくれます。
ポケットに入る小さな機器なので常に持ち歩くことも可能です。ぜひ試してみてください。

マインドフルに生きるということ

ここまでの話で理解いただけたと思いますが、マインドフルネスというのは瞑想のような特定の訓練法を指す言葉ではありません。

理想的な心のありかた、大げさにいえば生き方なのです。

たとえば、日常生活のどの瞬間をとっても、マインドフルである人とそうでない人がいます。

つねに完璧な人はいませんが、五感を通じて「今、ここ」を感じ取り、必要のない思考を手放すことができてる人は、通勤をしたり、食事をしたり、風呂に入ったりという、日々のささいなことにも幸せを感じています。

逆に、発達障害/精神疾患で「自分は今底辺にいる」と感じている人は、お金や名声を一気に手に入れる「人生一発逆転」を夢見ることも多いでしょう。

それはそれでかっこいい夢とは思いますが、いわゆる「社会的成功者」の中で幸せそうに見える人たちには必ず共通点があります。

資産の割には質素な生活をし、大勢の他人の評価を気にするより家族や友人を大切にしている、ということです。

なのでもし、夢を叶えることが生きる「目的」ではなく、単に幸福のための「手段」であるならば、まずマインドフルに生きられるようになることをお勧めします。

本気で根本治療を望む人へ

すこし辛い話をします。

マインドフルネスは治療において重要な概念ですが、それだけで完治する人はごく少数です。

精神に問題を抱えて行き詰っているほとんどの人は「脳と身体の治療(器質的治療)」が必須です。

治療効果で考えると優先順位は下記になります。

器質的治療(脳と身体の治療) >>> 神経の治療 > 訓練

なので「訓練」にあたるマインドフルネスは、根本治療を目指す場合、対処療法にしかならない可能性が高いのです。

ですが、マインドフルネスの存在意義は、とにかく低コスト(安くて楽)で症状をほぼ問わないことです。

根本治療に必要なのは多少のお金と気力、そして自分の治療歴や現在の症状を説明できることが必須となります。

なので、障害/疾患の影響でお金も気力の思考力もない人にとっては、最も敷居の低いマインドフルネスから始め、徐々に気力を回復させ、試行錯誤のための突破口を探すしかないのです。

これは自身の経験からの実感です。

そして、肝心の「器質的治療」ですが、そもそもそのノウハウを書くために「健常者になろう」を始めたので、自分の体験を中心に各ジャンルの専門家にヒアリングした情報を合わせて記事にしていきたいと思っています。

そしてまた、マインドフルネスに関する記事をもう一つだけ書きました。
たび重なるトラウマで感情がふさがれてしまった人への特効薬になるかもしれません。ぜひ参考にしてください。


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頂いたお金は新しい治療法の実験費用として記事で還元させていただいております。 昔の自分のようにお金がない人が多いと思いますので、無理はしなくて結構です。