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大炎上したスクールフォト業界で勤めてたんだが、もう学校写真のカメラマンは限界かもしれない


小学校の林間学校のキャンプファイヤーの様子

・スクールフォト業界にて炎上事案発生

2024年2月28日、Twitterに書かれたとある投稿が、学校カメラマンや写真業界を超えて、SNSで大炎上してしまった。

「カメラマン大大大募集です
現在3名しか決まっておらず、あと100名くらい来ても大丈夫です。詳細は下記をご覧下さい。
もし経験が無くて不安な方は3/16(土)、23(土)に同様の撮影があるので私や他のカメラマンの撮影に同行して教えます。どしどしご連絡待ってます。

小・中学校入学式の写真撮影案件
日時:4/8(月)9:00-16:00予定
※午前か午後どちらかだけの対応でも可能

場所:埼玉&東京&千葉&神奈川(少し)の小中学校
※出発場所を考慮して1時間圏内で撮影場所をご依頼します

撮影内容:式の前後のスナップ写真&式最中の様子など

必要な経験:
一眼レフで人を撮った事がある方

必要な機材:
一眼レフ(フルサイズ)
24-100mm程度カバーできるレンズ(付け替え可)
ストロボ

報酬:35,000円(税込)交通費込
※午前か午後片方の場合は20,000円(税込)交通費込」

このツイートがあまりにも炎上してしまったので、記事にしてしまった報道機関が出てしまった。

スポニチ
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/03/04/kiji/20240304s00041000384000c.html
J-Castニュース
https://www.j-cast.com/2024/03/04479000.html

このニュースに対するコメントが、スクールフォト業界、その他の写真や映像業界(フリーランスなど)、それ以外の一般のSNS利用者や、子供を持つ保護者などで、感想や意見がものすごく分かれていた。
ちょっと見ただけでも以下のようなコメントが寄せられていた。

一般的な意見

・入学式で素人100人募集かけるだなんて、やべえやつ集まったらどうすんだ
・カメラマンの身元とか信頼性ちゃんと確認してるのか
・自分の子供の入学式にこんなカメラマン来るのやだ
・子供への安全性とか誰が管理できるんやろ?
・Twitterで募集かけた人に学校立ち入らせるのか、怖い
・この書き方だと機材さえ持ってれば面談もなく当日カメラマンという名目で誰でも侵入できるってこと?怖い
・私物のカメラに撮影された子供達はそのままデータ保存されるのでしょうか?そのデータを勝手にネットに晒されたりはしませんか?
・東京・千葉・埼玉・神奈川県の学校関係者と教育委員会は、大切な生徒さんの個人情報保護について、カメラマンと取り決めしているのかね? どこの馬の骨とも分からない人物がカメラぶら下げて校内をうろつくのですよ。
・自分の住んでいる地域でこれやられてたら、教育委員会とかに通報するかな。。

少しでも写真をやっている人たちの視点から見る意見

・絶対事故るだろ
・kissでも可能→舐めとんのか(補足 EOS Kissシリーズという、キヤノンの初心者用一眼レフカメラのこと)
・これさ、個人情報保護とかNDAとか締結してやるんだよね? 写真業界はこれが普通なの?
・大事な仕事の外注は何度も仕事一緒して信用できる人に任すだろ。受注オーバーさせた尻拭いを素人カメラマンにさせるとか何考えてるの。式典の写真は趣味のポートレイトとは違うし撮影データを悪用する輩も排除出来ない。おかしい。
・機材も参加者持ちかよ()
・9-16時拘束で入学式含めた前後の撮影で出張費込み35000円ってボランティアに近いのでは。

先日、NHKのクローズアップ現代で、給食会社の倒産で学校給食提供ができないという問題を取り上げていたが、今回の炎上で少し目立っただけで、実はスクールフォト業界はかなりまずいところまできている。
この惨状を知っていただきたく、話題が忘れ去られる前、卒業式、入学式の前に、学校写真業界のことを書いておこうと思う。

・そもそも、教育現場における写真業とは、どのようなものか

日本において、大多数の人間は生まれてから保育園や幼稚園、こども園などを経て、小学校、中学校の義務教育を経て、高等学校や高等専門学校、専門学校や大学、大学院などに進学していく。
スクールフォト業界は、教育現場における生徒の写真を撮影、記録して写真や卒業アルバム等を販売する業種である。教育現場の特性上、家庭内では見ることの出来ない我が子の姿を、撮影を生業とするプロカメラマンの写真を買うことで見ることが出来るし、思い出が残すことを職務としている。

スクールフォト業界は、卒業アルバムの制作を主にする会社だったり、保育園幼稚園向けに振り切った「はい!チーズ」を運営する千株式会社や、マラソンや各種スポーツ大会、やはり保育園などを得意とするフォトクリエイトなど、数少ない大手の企業を除けば、基本的に地元密着の個人商店〜20人以下の写真屋、写真館が担当する場合が多い。つまり殆どが中小企業以下であって、場合によっては1人で撮影販売から卒業アルバムの制作まで担当している事もある。
職業である以上、利益を出さないといけない。どこで収入を得るのかと言うと、主たる物が以下の通りだ。

・卒業アルバムの販売
・運動会や修学旅行などの宿泊行事、遠足や社会科見学などの学校行事での写真販売
・クラスや学年の集合写真、卒業式の卒業証書授与の写真(保護者全員に買い取り制のところも多い)
・学生証の証明写真、受験用の顔写真などの販売(中学生以上が多い)

他にも細々した撮影はあるが、概ねこのような業務内容で成り立っているのがスクールフォトという業界だ。

・スクールフォト業界の、近年の人材不足問題。

ここ数年、日本はどの職種においても人材が不足していて、スクールフォト業界においても例外ではない。そもそも、前述した通り写真館は個人商店が非常に多く、写真屋は経営者の子供に継がせる事が多くある。それで事足りてしまうため、社員を雇う個人商店は少ない。

20人から50人、更に大きい規模の会社になっている写真屋もあり、その場合は会社員として雇われる。しかしスクールフォトに特化した撮影技術も必要であれば、長時間労働が当たり前、給料は殆ど昇給しない業種である。残業代も出ない場合が多い。
当然離職率は高いので若手が残らなくなり、学校専門のカメラマンとして現役を続ける方の高齢化が深刻である。

どのぐらい深刻なのかというと、筆者である私(当時31歳)は2023年に修学旅行の撮影で日光東照宮に5回行ったが、私より若いカメラマンに1度も出会わなかったレベルである。どうしてこのような惨状になってしまったのか。

・スクールフォト業界の年間スケジュール。

写真屋、写真館、卒業アルバムの制作会社は、繁忙期と閑散期が極端である。何故なら主要取引先は全て学校であり、学校のスケジュールとほぼ連動するからである。
以下は小学校を中心とした学校と、引率する写真屋の年間の動きであるが、この記事を読んでいる方には、ご自身が子供に経験した学校の年間スケジュールを思い出しながら読んでいただきたい。

・学校行事とスクールフォト業界の年間の動き

・4月 入学式や始業式がある。入学式は地域によって若干の差があるが、どの学校でも概ね4月5日から8日、遅くても12日までの間に行われる。その後は担任がクラスを構築、安定させるために学校行事は少ない。新中学1年生、新高校1年生は、このタイミングで証明写真の撮影がある。

・5月 学校行事が増え始める。遠足や社会科見学、修学旅行。5月20日頃から土曜日に運動会を開催する学校が増え始める。

・6月 引き続き学校行事が続くが、雨の影響もあり6月の中旬ぐらいから運動会などは無くなる。

・7月 終業式、夏休みに向け学校行事が減る。小学5年生だと林間学校という宿泊行事があるが、地域によっては夏休みの頭から8月頭までこの行事がある。

・8月 夏休みなので学校は完全に休み。写真屋は写真販売の作業を続けたり、卒業アルバムの制作に取りかかり始めるが、基本的に売上は無い期間である。

・9月 2学期が始まるが、即座に学校行事は始まらない。9月中旬より運動会を開催する学校が出てくるが、近年は熱中症対策の為、これまで9月に運動会を開催していた学校が、10月開催に変更するケースが多くなってきた。
中学や高校の場合は、9月に3日間ほど文化祭を開催する場合が多いが、文化祭の写真は販売はせず卒業アルバムにしか載せない事が多いので、売上は無い。

・10月 1番修羅場が生まれる月である。
平日は何かしらの学校行事があり、毎週土曜日はどこかしらの保育園〜中学校において運動会が開催される。
撮影だけでなく編集、セレクト、販売をかけないといけない。

・11月 初旬に運動会を開催する学校もあるが、基本的には平日の学校行事がある。土曜日は音楽発表会なども開催される場合がある。
また、卒業アルバムの制作に向けて授業風景や顔写真の撮影など、即座に売上にならない撮影も増えてくる。

・12月 冬休みが近づき、また受験シーズンにも重なるため、撮影案件自体は減る。卒業アルバムの制作が本格化し、写真屋と学校の先生との卒業アルバムの制作チェックが始まる。下旬からは冬休みのため撮影はなし。

・1月 始業式後は僅かに学校行事があるが、殆ど卒業アルバムの制作の時期であり、撮影自体は少ない。

・2月 卒業アルバムの制作大詰め、年度末が近づくため学校行事は殆ど無い。

・3月 主なる行事は卒業式のみである。卒業式に卒業アルバムを配布する学校もあれば、卒業式の写真を含めて卒業アルバムに載せる学校もある。
小学校の場合、6年間撮影した記録が、卒業アルバムとしてやっと売上につながる。新中2、3と新高2、3は、学生証の写真を撮影する時期になる。
春休みは当然学校は無いので撮影はない。

このように、繁忙期と閑散期が極端となっていて、その月によって必要な人員数が違うのがスクールフォトの世界である。
そのための人員の増減に対応する存在が、フリーランスのカメラマンである。

・スクールフォト業界における、フリーランスの学校カメラマンの現実について。

前述した通り、スクールフォト業界は個人商店の写真屋が多く社員を雇う規模ではないところが多い。そのため撮影案件が重なった際はフリーランスのカメラマンが登板される。フリーランスのカメラマンと言っても撮影ジャンルが多いので、ここから先はフリーの学校カメラマンの事を示す「代写のカメラマン」と呼ばせていただく。

代写のカメラマンは、写真屋や制作会社から撮影依頼を受け、その写真屋の代理として業務委託として学校にやってくるカメラマンのことである。複数の写真屋や制作会社から依頼を受けている。

カメラなどの撮影機材や、パソコンなどの画像処理環境、撮影に絶対必要であるメモリーカードは、基本的には自分で用意するのが当たり前である。
カメラは予備が必須なので2台以上、メモリーカードも1台につき2枚入れてバックアップ体制を整える必要がある。
また、都心部ならともかく、千葉埼玉神奈川などは駅から離れた学校も多い上、ひな壇や照明機材を運ぶため、車を所有している方も多い。
この時点で初期費用がだいぶかかっている。

仕事は、撮影が始まってから終わるまではない。撮影が終わったら納品が待っている。帰りに写真屋に行き、撮影データを読み込んでもらう写真屋もあれば、没写真を代写のカメラマンが消して、写真屋にインターネットで納品という写真屋もある。近年は後者が多い。
また、そもそも業務時間は長時間労働が基本である。というかどう頑張っても長時間労働になってしまう構造である。

よく考えてみて欲しい。

学校の始まる時間より前に学校に到着、挨拶し、授業や行事、場合によっては部活動撮影が終わってから、写真屋に寄って納品or帰宅しデータ整理して納品。

スクールフォトのカメラマンのワークフローは、概ねこのような通りである。

・遠足の場合

朝8時に学校到着、撮影を開始し16時に撮影終了。昼間の休憩は0時間。これだけで8時間労働が終わってしまうが、その後に画像処理やデータ整理、カメラ類の充電が待っている。

・修学旅行の場合

朝7時集合から撮影をし続けて終わるのが夜の21時頃、先生や旅行業者との打ち合わせが22時頃。就寝できて23時、しかし起床は朝6時。すぐに朝食から撮影開始。これが連日繰り返しされる。

・運動会の場合

朝8時には学校到着し、撮影終了は16時頃。
熱中症対策や日焼け止めも欠かせない。なんなら生徒より走って撮影してを繰り返し、体力を非常に消耗する仕事である。
技術面で言うと、徒競走は6人程の生徒が不規則に走ってくるのを、全員を1人ずつ確実に抑えることが「必ず」求められる。つまり、一切失敗できない上にやり直しも出来ない。
技術ももちろんだが、カメラやレンズのランクを妥協すると、ピントが間に合わなかったりする。
学校のグラウンドは砂なので、もちろん砂埃が舞う。そんな中で軽く3000〜6000枚は撮影するので、カメラやレンズの中に砂が入り込んでしまうなど、機材にも過酷な環境。

このように過酷な環境下での「生徒全員の確実撮影」を最低限の技術として求められる上、撮影後は大量の写真のセレクトが待っている。
身体は撮影で疲れ切っている場合が多いので、翌日は働けないほど疲労してしまい、実質2日は拘束されるのが運動会の撮影業務である。

このような撮影は長時間労働な上に、重たくて高価な機材を常に持ち続けないといけない。
短時間の撮影もあるにはあるが、だからといって楽なわけではまったくない。

・入学式・卒業式の場合

撮影自体は8時〜13時や、11〜15時などの短時間で終わる。
だが、保護者含めてのクラス集合写真を全クラス撮影しないといけなかったり、卒業証書授与の瞬間の写真を、目つぶりなどの撮影ミスが1枚も無いように、全員分撮影しないといけない。保護者や生徒の誘導なども含めて、こちらも特殊技術が求められる。

・学生証の証明写真の撮影の場合

撮影時間は4時間ぐらいで終わるが、1コマの間に3クラスを撮影することが4時間目まで休みなく続く。
1コマあたり45分だとすると、40人の生徒を12〜15分で撮影しないと3クラスの撮影が間に合わない。それが4時間目まで休み無く撮影することで、12クラスの分の学生証が撮影できる。できるのだが、これはあまりにも特殊な技術が求められる。もちろん欠席者もいる場合は、別日に再撮影に行かないといけない。

他にも学年集合写真の綺麗に並べられる撮影スキルも求められたり、このように代写のカメラマンは本当に幅広い技術が必要となってくる。

・スクールフォトの代写のカメラマンのギャランティについて

ところで、そんなに過酷な労働者である代写のカメラマンだが、ギャランティは首都圏において1日20000円が基本である。もちろん機材費込みだ。
卒業アルバムの大手の会社になるとギャランティが安くなり、1日14000〜18000円ぐらいになる。
ちなみに私が最初に就職した会社は、フリーランスへのギャランティが8000〜10000円だった。
これが大阪エリアだと、1日15000〜17000円が業界標準らしい。

また、交通費は出る写真屋と、出ない写真屋がある。
車使用の場合、高速代に関しては往路しか出ない会社もある。たとえ千葉から板橋に帰ろうと思っても、行きの高速費は出ない。
また、ギャランティは撮影に対する業務報酬なので、撮影日に疲れてしまい納品を後日に回したとしても、もちろんギャランティが発生しない。

埼玉の入学式案件で人材不足が発生した際に「カメラマンが足らないので誰か紹介してくれ!」と元請けの写真屋に言われ神奈川のカメラマンを何人か見つけたのだが、紹介するにはには責任があるので「遠方の方には交通費を出して欲しい」という要望をお願いしたところ、
「うちはみんな平等でやってもらってるから難しい」と返答だったので、神奈川のカメラマンが仕事を断ってしまい紹介できなかったという、本末転倒な事態も起こったことがある。

近年はインボイスの影響で、本来は10%の消費税分をギャランティを多くしなければいけないのだが、ギャランティの金額はそのままだが「税込」。つまり実質収入は減っている。
源泉徴収をきちんとする企業であれば、それももちろん引かれる。
つまり、機材費込み交通費込みで、消費税と源泉徴収を持っていかれて、手元に残るのは約18000円。
代写のカメラマンは殆どが個人事業主なので、きちんと確定申告すれば還付されるとはいえ、過酷で出費が多い割にギャランティは少ない。

ここで思い出してほしい。
スクールフォト業界が繁忙期と閑散期が極端な業種であるということを。

入学式、卒業式、運動会は、何処の学校も同じ時期に集中して行われる行事であり、カメラマンの必要数がその瞬間だけ増える。
一方で前述の通り、学校行事が殆どない期間は、あくまで「写真屋の代理」である代写のカメラマンは全く仕事がないと言っていい。撮影専門なので卒業アルバムの制作には携わらず、また、卒業アルバムは個人情報の塊なので、自分が撮影した制作物である卒業アルバムを手にする事もまったくない(=つまり仕事の実績として公表ができない)。

これが会社員であれば、ボーナスはともかくとして雇用保険や健康保険、厚生年金などの福利厚生はきちんとあるわけだが(残念ながらスクールフォトの場合、会社員であっても1年に1度健康診断を受けさせる義務を受けさせていない会社、入社時の健康診断義務を受けさせない会社がゴロゴロあるのが実情だが)。

代写のカメラマンは、福利厚生もなく、いつまでも絶対にギャラが上がらない世界で、案件数をこなすことでなんとか生活をしていることになる。
仮に1日2万円のギャランティで月13日稼働として、春休み夏休み冬休みと行事少ない期間を除いた8か月で計算した場合、年商208万となる。

年収ではない。年商だ。
数をこなせば収入は増えるが、そもそものギャランティが上がらないということは、将来の人生設計プランにおいて水準の向上が見込めないということであり、いつまで経ってもキャリアアップとはなり得ない。

代写のカメラマンの多くは、激務で機材などの経費が多くて低収入のため、若手のカメラマンはスクールフォトをやりたがらない。
また、フリーランスとして駆け出しの時にステップアップするまでの一時的な収入源として請け負う方もいるが、スクールフォト業界にずっと居続ける若手がほとんど居ない。
スクールフォトの業界で代写のカメラマンとして生き残っている人は、スクールフォトしか撮れない&他の写真の仕事がないため、転職もできずに結果的に残ってしまった人の率が高く、若手が入らないため新陳代謝が進まず、代写のカメラマンの高齢化、人材不足につながっていた。

そんなときにコロナ禍が起きてしまった。


多くの学校は学校行事を取りやめた影響で、代写のカメラマンは一切の仕事が無くなってしまったのだ。
コロナ禍を機に、代写のカメラマンや写真屋を廃業した人がたくさん現れてしまったのだ。

ちなみに、はじめの方に記載したSNS上での意見で「個人情報保護のとかNDAとか締結してやるんだよね?」というのがあったが、それどころか業務委託契約として書面を交わしている写真屋など殆ど無いに等しい。あくまで個人商店が人と人の付き合いでやっている仕事なのだ。
有名私立校の卒業アルバムを担当する制作会社の規模でも、あくまでカメラマン登録というだけで、代写のカメラマンと業務委託契約を結んでいる会社は少ない。
人づての紹介などで、初めましての写真屋、制作会社と1度も会わずに撮影指示を受け、初めましての学校に行って撮影なんてこともありうるのだ。

そういえば、ここまで書いていて気付いたことがある。
私はスクールフォトの師匠のところで10年以上撮影したが、
これまで師匠から一度も身分証明なんてされたことがない。
ギャランティの支払いも現金手渡しだった。
つまり自分は馴染のカメラマンながら「どこの馬の骨とも分からない人物がカメラぶら下げて校内をうろつく」という状態のまま、長年学校に出入りして仕事をし続けていたのだ。

2024年1月、長年指名手配されていた桐島聡容疑者が、40年以上住み込みで働いている間、全く身分証明をしていなかったということだが、代写のカメラマンはそこまではいかないとはいえ、身分証明、身辺調査を一切せず仕事することが当たり前という状況は、桐島聡容疑者にかなり近い状況だと言える。

・先生や保護者からの理不尽なクレームの多さ

スクールフォトという仕事は、その大変さ過酷さが知られていないからか、公立の場合は教師は公務員で、一般社会人との交流が少なく学校現場の外を知りにくい環境という特殊性から、「ビジネス」を理解していない方が多い(と実感している)ので、理不尽な要求やクレームが多い。

実際にあったクレーム事例

・「うちの子の写真が少ない」はものすごく多いクレームの一つだが、撮影枚数と生徒数から計算して、きちんと全員バランスよく撮影できていても言われてしまう。

・事前に問題が想定される場合は、解決策を担当の先生や管理職の先生と相談、承諾、撮影後の確認まで丁寧を行うが、その上で「私の最初の指示に従わなかった」というクレームを「1ヶ月後」に連絡。

・「独り言が多い」というクレーム。

・撮影終了後、現場でビール飲んでるという間違った目撃証言(実際には日焼けしすぎて顔が真っ赤な中、お茶を飲んでいただけ)

・卒園式でかかんで移動してるのに「もっとかがめ」とのお怒り。高身長のため「これ以上は難しい」と伝えるとそれ自体がクレーム。

・「にんにく臭い」と、食べてないのにクレーム。

・部活動のアルバム用集合写真撮影で、卒業アルバム担当の先生が出張のため別の先生が同行し、問題なく撮影終了。 後日「生徒が集合写真で不満を言ってるがどういうことだ」というクレーム。どうやらもっと撮影してほしかったらしい(さすがに、問題があったかの状況を同行した先生に確認して欲しいと要請)。

・卒業式や入学式で使うひな壇を、高校に土曜日に運ぶという指示だったが、当日事前に学校に電話するも誰もでず、受付も誰もいないので、仕方なく校内の入校受付に社名と名前を記名し、腕章した上でひな壇を運ぶも、そのときに連絡がつかなかった担当の先生に遭遇したので、挨拶と説明すると激昂しクレーム。

・学生証の証明写真撮影において、1人でも再撮影の子が現れると別日に再度学校で再撮影しないといけない。学生証は生徒指導を兼ねているのだが、ごく僅かに前髪が長い生徒が1名おられた。生徒指導の先生が「次切ってこい」っていうのだが、学生証の証明写真撮影はそれ自体が入札のため再撮影料金は請求できない。確認したところ「この程度だったらPhotoshopで20秒で直せます」とお伝えすると、先生に「そういうの本当にやめてください」という激怒。生徒指導も大事だが、こちらのスケジュールや人件費の事情をまるで考慮していない。

・卒業式の卒業証書授与式、当然ながら確実な全員撮影を求められるが、生徒は練習していても、例えば生徒の前髪が全部顔にかかったり、生徒が授与の立ち位置を間違えたなどの理由で、式後再撮影になったりする場合がある。そのようなケースは想定できるので事前に毎年説明をしているのだが、それを管理職のトップである校長自ら「再撮影するだなんて、そもそもプロとしてありえない」というクレームを、式後にカメラマンに直接伝え、さらに業者の担当者にも報告する。
もちろんこちらの非ではないのだが、理解はしてもらえない。

聞いた話や自分の経験として思い出しただけでもこれだけ出てくる。
何でもかんでも業者に文句を言えば解決すると思うモンスタークレーマーが、教師、保護者共に多いのが実情だ。

・スクールフォト業界が抱える特殊性による重大な問題、構造上の欠陥と、誤解されていることについて。

一方で、写真販売や卒業アルバムを制作する元請けの写真屋や制作会社も、正直儲かっていない。
よく言われていることだが、

「学校と写真屋が癒着していて、写真で儲けようとしている。」という噂話。これは完全に誤解である。

まず、そもそも公立の学校の場合、卒業アルバムの制作は公共事業なので、教育委員会での入札制度がある。
そのため卒業アルバムの入札価格をやたらと上げられない事情がある。

それでも小学校の場合、学年を6年間撮影し続けているため撮影データの蓄積があり、大抵の場合は全学年を撮影しているので、おいそれと業者を他社に変えるのは難しい。
また、撮影データの著作権は写真屋にあるので、データを渡さなければ卒業アルバムは作れない(代写のカメラマンは著作権を譲渡した契約を写真屋と特にしているわけではないが、スクールフォトは事実上個人情報なので、著作権侵害などの問題が発生しにくいだけである)。

中学、高校の卒業アルバムになってくると3年間しか撮影しないので、基本的に卒業アルバムの業者選定の入札は、値段のやすさを重視して業者が決まる。
埼玉、千葉、神奈川などでは「値段は高いけど卒業アルバムのクオリティ」も選定基準に入ってくるが、それでも安い業者に決まりがちである。
東京都の場合は私が聞いた話だと、石原慎太郎氏が都知事だった時代に、石原氏の方針で「入札価格だけで業者を選定する」という方針になったらしく、3学年が卒業アルバムの業者が全て違うという事もよくあるようになった(ということは、同じ学校の運動会なのに、学年ごとに違う業者がカメラマンを派遣していることであり、これが余計にカメラマン不足になってしまう遠因でもあるである)。

それでは、学校行事の写真販売での売上はどうか。
銀塩プリントされたL版の写真の1枚あたりの値段が、実は殆どの学校で30年前からほぼ値上げされていない。
30年前といえば消費税がない時代で、原材料の物価も安く、またデジタルカメラがほぼ普及しておらずフィルムカメラの時代で、一定の品質の写真を撮影するには、それ相応の技術が必要だった頃だ。
それなのに、学校行事の写真販売はL判1枚あたり80〜120円を推移し続けていて、値上げすることができていない。

・スクールフォトが儲からない理由

その一方で、
・少子化によって子供の数減る=保護者の数も減る
・良い写真をたくさん撮影したとしても保護者のお財布の中身は増えないので、売上は天井見えている
・誰でもスマホで写真撮れる時代に、わざわざプリントした写真を買わないといけない。
・小学生は3年生以降、1人で写っている写真より2,3人以上で写っている写真を中心に撮影するよう指示がある
場合が多い。何故なら自我が芽生えた子供が1人ぼっちで写っていると、かわいそう&卒業アルバムに使えないという理由からだ。そうなってくると反比例して撮影するカット数(枚数ではなく、似たような写真を1つとして数える)が減っていく。
・小学生までは我が子の写真を求める人が多い中、中学以上になってくると我が子が可愛くなく見えてくるのか、わざわざ写真買う人が減ってくる。
高校においても、それまで写真販売していなかった学校にて、なんとか利益を出そうと業者が修学旅行の写真販売を提案して販売をかけたにもかかわらず、誰もが自ら撮影したスマホ写真で満足してしまい、あまりにも購買率が低い事例もあった。

という、売上が伸びない悪循環が巡り巡っている。

もちろん、売上を伸ばそうと努力している写真屋もある。
1つの遠足でカメラマンが2000〜3000枚ほど撮影し、望遠レンズや単焦点レンズで背景をボカすことで「プロのカメラマンじゃなきゃ撮れなさそうな絵」を狙い、1人で写っている写真も積極的に撮っていくなどの手法で、購買率を高めるべくクオリティが高く、数と質の両立を狙った写真を販売して写真屋としての独自性で生き残っていこうとしているところも存在する。

ところが「写真屋の代理」であることから、当然代写のカメラマンにも同じクオリティを求めているので、代写のカメラマンへの負担は大きくなっていくのだが、この場合でもギャランティは他の写真屋と全く変わらない。
「うちのやり方を学べば絶対カメラマンとして大きく成長していく。」ということだが、残念ながら人件費には反映されない。やりがい搾取と言えるかもしれない。

・そしてついに、スクールフォト業界が崩壊寸前にまで陥っている惨状が、炎上によって露呈してしまった。

改めて、最初に記載した2月28日の炎上したカメラマン募集のツイートを見てみると、「現在3名しか決まっておらず、あと100名くらい来ても大丈夫です。」とある。
人材募集の投稿をしたイツバネットの河戸弘太氏(https://twitter.com/itsuba2 )は、おそらく罪は殆どない。
イツバネットのHPや河戸氏の謝罪文にはこのような記載がある。


「まず現状についてですが、制作を取り仕切っている会社さまと協議を行い、今回の撮影は全て中止させていただくことになりました。
弊社からは一切カメラマンが撮影に向かう事ことはありませんし、今回応募された方の中から撮影対応することはありませんので、
ご心配されている方に関してはまずご安心いただければと思います。
対応が遅くなり大変申し訳ありませんが、
本件の経緯説明をさせていただきます。

制作を取り仕切っている企業さまより弊社に入学式の撮影カメラマンが足りず困っているとのご連絡をいただき、
私含め弊社のカメラマンで対応を行う予定でしたが、100名ほど足りていないというお話を伺った為、私のXやInstagramから募集をすることにいたしました。

皆さまからご指摘いただいておりました人間性やカメラスキルの部分に関しましては1名1名しっかりと面談を行い人間性やカメラスキルを確認し過去の実績なども拝見した上で、
問題無い方には身分証をご提示いただき業務委託契約書を締結していただき撮影をご依頼する流れとなっておりました。」

引用元 https://itsuba.info/news/537/

これをどこまで信頼していいのかはわからないが、これを聞く限りでは、あくまで制作会社からのカメラマン募集の依頼に対応すべくSNSで募集をかけただけとも言える。
正直な話、通常のフリーランスの業務であれば、このような募集のかけ方は非常によくあることであり、SNSだろうがカメラマン同士の人づてでの紹介だろうが、既にカメラマンが足りてない以上、新しい人に撮影依頼をするのは普通の話であろう。
ところが、今回は教育現場に立ち入るという特殊性から、守らなければいけない子供たちの人権や写真データなどの問題から大炎上してしまった。

普段からスクールフォト業務にいる人達のコメントも聞いてみたが、

「炎上しなくても良い気もするけど、保護者様にとっては信じられないことなのでしょうね、、、」

「式典が一番クレームになるのに、どんなカメラマンでも頭数でしか考えてない方がヤバイ」

「それ以上に気になるのはなぜ100人も必要なのに、まだ3人しかいなくて今頃騒いでいるのかというー件、、、」

「この時期に募集しても応募してくるのはほぼ間違いなく何かしら問題のあるカメラマンです。
なぜなら、卒業・入学式の実績のあるカメラマンは、遅くとも数ヶ月前にはスケジュールを押さえられているからです。
なのでこの時期に仕事がなくてこうした募集に飛びつくのは、問題ありカメラマンか、素人さんしかいないのです。 ちょっとよく分からないのは、制作会社がそれほどのカメラマン不足を今まで放置していたことです。
普通に実績のある会社なら、この時期に大量にカメラマンが必要になることは分かっているので、場合によってはそれこそ卒業式の撮影が終わった直後にも翌年のオファーを掛けていたりします。
私も何度か1年前からスケジュール押さえられたことがありました。押さえていたカメラマンが病気や怪我で急遽代役を…というのなら分かるのですが、不可解ですね。」

「どこの誰かも分からない素人、っていうけど、それ自体はこういうイベント時の撮影をする企業はどこも同じことしてる。
まさか全て地元の写真屋さんの店主がやってるなんてわけはなく、業務委託カメラマンが総動員してるんだよね。」

「この業界は撮影を含め、何もかも安く済ませることが優先されてると思う。だから、悪い意味で独特なカメラマンはやっぱり多い。」

というコメントが散見された。
まさにこの通りである。

ただ、入学式の際に「卒業アルバムの業者が決まっておらず、写真自体は必要なため入札できなくてもカメラマンを派遣する」という、非常に無駄なことが千葉や埼玉の高校を中心に高頻度で発生しているのは事実であり、今回の100人のカメラマン募集というのは、これが理由ではないかと推測している。
他のカメラマン情報だと、他の制作会社も50人ほどカメラマンが足らないと探しているらしく、この2つを合算するだけでも、首都圏でカメラマンが150人が、入学式のとき「だけ」不足しているのである。
ただ、この150人たちが集まったとして、もし今回入学式撮影をしたとしても、そのあと継続してその会社から仕事は来るのだろうか?

今回の件、首都圏の各教育委員会が問題視したのか、このような募集を行った元請けの制作会社を血眼になって探してるらしいが、正直卒業アルバムの制作会社で大きいところは限られてくるので、すぐに業者はわかってしまうのではないかと思う。
また、各種クラウドソーシングのサイトでも、例年入学式運動会卒業式のみカメラマンを募集していて、誰がやってもギャランティが固定という投稿を見たことは何度もある。

・写真を専門に撮影するカメラマンのヒエラルキーについて

「この35000円という金額は、プロのカメラマンが見向きもしないくらいの安い案件なんですかね?
カメラの仕事をしていましたが、1、2時間で2万でうけていましたが、それでも安いくらいらしいですよ。」

SNSにおいてこのようなコメントを見つけた。

実は、あまり知られていないが、写真撮影のカメラマンと一口に言えど、業種はあまりにも幅広い。また、正直かなりのヒエラルキーもある世界だ。
こちらのサイトにカメラマンの種類の記載があるが(https://goopass.jp/magazine/cameraman-salary/ )、
「クリエイティブカメラマン」、つまりアートを追求する「写真作家」を除けば、「スクールカメラマン」は1番下に記載されている。
露骨にこのようなことをされてしまっては、スクールフォトに携わるカメラマンは自覚や納得はしている方は不快に思うのではないだろうか。
実は当初、このサイトには「スクールカメラマン」の記載がなかった。
つまり、ヒエラルキー上位の人からスクールフォトの世界は「そもそも視界に入ってこない」のだ。

また、週刊誌で事件現場や警察の送検などを撮影しているカメラマンに直接言われた言葉なのだが、
「俺は、学校とか撮ってるやつらをプロのカメラマンとして認めていない」
と明らかに見下した態度を示してきた。

他にもある。
写真家の幡野広志氏(https://twitter.com/hatanohiroshi )が昨年出した本、

「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」
https://amzn.asia/d/cIowjoT

に記載されていたのが、幡野氏は自己紹介において「自分はカメラマンで中の中」と謙遜しながら、卒業アルバムの個人写真って、本人がみかえしたくない写真の代表例ですよね。本人にとっては目を背けたい歴史みたいな写真です。
(中略)
撮られたくもないのに撮られるわけです。だけど友達や好きな人と撮った写真は青春の思い出になるんですよね。だから結婚式のムービーでも使ったりするし。
青春の思い出と目を背けたい写真の違いが撮影時のストレスと、好きな人に撮られることなのだと僕は結論つけています。」
とのように言い切っていた。


明らかにスクールフォトのカメラマンの仕事を、
上から目線で舐めてきている文面である。

(2024/3/14 8:20
幡野氏より指摘がありましたので、お詫びして訂正いたします。
こちらのnoteにおいて幡野氏が発言した内容で「自分はカメラマンとして中の中」と当初記載しておりましたが、正しくは「中の下」とのことです。)
(2024/3/16 2:00 幡野氏本人によって正確な発言がありましたので、追記の欄で記載いたします。)

(2024/03/13 17:20 写真家の幡野広志氏について追記)

幡野氏に「自身の発言の真意について認識が間違っていないか、見解をお聞きしたい。」との質問を投げかけましたが、リプライでもDMでも反応がなくメールでの質問に切り替えました。
現時点では幡野氏より回答はなく、「自分はカメラマンで中の中」と自身で発言されているということは「上も下も存在する」と認識しているのと同義であり、その上で著書での発言に対して、現時点でそれに対してはノーコメントを貫いております。
現在メールにて幡野氏の見解を尋ねておりますが、幡野氏に対して当然誹謗中傷するものではなく、あくまでこのような発言があるという事実のみを書かせていただきます。

(2024/03/13 19:45 写真家の幡野広志氏について追記)

写真家の幡野広志氏(https://twitter.com/hatanohiroshi )からメールの返事はありませんでしたが、残念ながらTwitterをブロックという形での態度での回答を得られました。
幡野広志氏は「自分はカメラマンで中の中」と自身で発言されているというので、ということは「上も下も存在する」と認識している上で、
「卒業アルバムの個人写真は、ストレスを感じながら撮られるからいい顔をしていない。だからみんな見たくない。」という見下した意識は一貫していて、質問を一切否定していないことになります。
また文面での回答ではなく、ブロックという形で姿勢を示されました。

前述の通り、あくまでこれらは事実であり、ヒエラルキーの上位のカメラマンが下位のカメラマンをシャットアウト、明確に視界に入れたくないということになります。

皮肉にも幡野広志氏の態度によって、
ヒエラルキーの壁が可視化されました。
これが、写真家、カメラマン、
フォトグラファー業界の、
明確なヒエラルキーです。



(追記ここまで)


また、写真雑誌のGENICの最新号が「撮るという仕事 vol.70 2024年4月号」という特集だったのだが(https://shop.genic-web.com/products/genic-vol70 )、GENIC編集部によるこの本の説明は「写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。」という記載だった。

純粋に良い写真、良い内容の本だったので購入したが、あくまでトップクリエイターである広告系フォトグラファーや、出版系、アーティスト系、僅かにウェディング系の写真にしか比重を置いておらず、広告系カメラマンの「アシスタント」のインタビューはされているが、スクールフォトは取り上げられていない。
もちろん生徒の顔を含めた写真なんて雑誌に載せられないという特殊事情があるとはいえ、こちらの編集部の皆さんにも残念ながら認知されていないのがスクールフォトの世界だ。

・スチールカメラマンのヒエラルキー


大前提となる話なので正直言おう。スチールカメラマンのヒエラルキーはこのようになっている。ただし、広告や出版撮影のアシスタントという職業については省略させていただく。

・広告カメラマン

プロのフォトグラファーのうち、この広告カメラマンを目指す人はかなりの割合を占める。
1日あたりのギャランティが15万円ぐらいはよくある話だ。

広告のフォトグラファーでかなり上位にいた鈴木心氏https://twitter.com/suzukish1n)が語っていたことによると、


・駆け出しの頃 1案件20万円
・売れっ子になってきた頃 撮影料80万円+レタッチ25万円
・大手鉄道系ショッピングモールの広告の撮影200万円
・JRのWeb広告の撮影470万円
・公共ポスターのドラマの番宣用ポスター 撮影料390万円(ただしレタッチ代は外注し80万円引いて、310万。撮影にかかった経費120万円は込み)
・とある広告に関しては「50万円しかもらえなかった」と嘆いていた。

広告業界ので売れっ子のトップフォトグラファーは、ギャランティが50万で少ないと感じるような人たちなのだ。ただし、1ヶ月にかかる経費が100万円とも言っていたので、本当に派手な業界である。

一方で前述の幡野広志氏の場合、
・日帰りで行ける場所なら一律10万円+税
・泊まりになる場合は一律20万円+税(交通費と宿泊代込み)
と明確に公式サイトに記載されている。

電通事件の影響で働き方改革が起こる前までは、22時間勤務なども当たり前にあるような業界で、もちろんパワハラも多かった。今はだいぶ浄化されている業界であり、憧れる人も多いことから人材不足に困ることはあまりない。

・出版社のカメラマン(フリーを含む)

同じく、カメラマンを目指す人が憧れる人が多い業界。
小学館、集英社、講談社などの大手出版社や、角川、文藝春秋、マガジンハウスレベルの中堅出版社になってくると自社内に写真部やスタジオがあり、自社出版物に関しては社員で賄ってしまう場合が多いが、最近は出版不況もあり、学研や枻出版社などの雑誌をメインとした会社が写真部を解散し社員カメラマンを独立させる傾向がある。

カメラマンは全て外注するレベルの中小の出版社や編集プロダクションなどになってくると、4時間ぐらいの近郊撮影で3万円ぐらい。1日拘束で3万円程度という会社もある。
雑誌だとページ単価や、1カットいくらという考え方をし、鈴木心氏の時代は雑誌は1ページ2万円だから安いと言っていた。今ではもっと安いかもしれない。

・新聞社・通信社のカメラマン

報道写真やスポーツ写真のカメラマンを目指す人も多い。
ただし、新聞社、共同通信、時事通信の社員カメラマンは、殆ど中途採用をしていない。
大学生の新卒採用で試験や面接をくぐり抜けてきた、選抜メンバーなので優秀な人材が多い。大手新聞社でも1年に2人しか採用しないなど、非常に狭き門である。
地方新聞はカメラマン採用どころか、写真部を解散する例が多く、現在も写真部をギリギリ残しているのは岡山の山陽新聞程度ではないだろうか。
給料は大手新聞社によって差があるらしいが、やりがいはあるので離職率は低い。

・求人サイトのカメラマンの場合

殆どがフリーランスのカメラマンである。求人広告は老舗は1、2時間の撮影で3万程度、ベンチャー系の場合は15000円などの場合もある。
ドクターズ・ファイルなど、Webと本の両方で医療情報を提供する会社は、1件1万円以下のギャランティのこともあり、本の最終ページのスタッフとして記載されている外注カメラマンの数が非常に多い。おそらく1回限りのカメラマンが多いのだろう。

・広告系の物撮り専門カメラマンの場合

大手事業者の写真であれば、当然大手の広告代理店や、それに近い制作会社(アマナ、博報堂プロダクツなど)が手掛ける場合が多く、フリーランスの方が担当する場合、ギャランティは相当高いと思われる。物撮りは合成前提で特殊技術だからだ。

イオングループのトップバリュなどを撮影している制作会社は、おそらく安く請け負ってるのではないかと思う。大手メーカーが7時間かけて撮影する商品を、プライベートブランドの場合、商品の価格を下げるべく1時間で撮影してしまう。トップバリュの安さは人件費も削ることで成り立っているのだ。
フリーランスの場合、半日の撮影で最低3~4万円、全日の撮影で最低7~8万円ぐらいかと思われる。

・イベントの記録撮影や、社員証など、企業専門の撮影カメラマン。

フリーランス或いは少人数でやっている写真制作会社が担当している。
個人のフリーランスに直接依頼すると4〜5時間で3万、1日だと5〜10万ぐらいかと思われる。
撮影制作会社の社員カメラマンが担当することもある。
一般の社会人を相手に取引をしているため、社会人としてしっかりしている場合が多い。

・ブライダルカメラマン

スーツ着用で動き回らないといけない上に、式場の照明の変化に対応しないといけない、瞬間を絶対に逃してはいけないなど、かなりの技術が必要な撮影なので、非常に激務である。
社員のカメラマンも多いが離職率は高く、土日祝日は撮影に忙殺されてしまうため、休みは殆どの場合取れない。常に求人サイトに募集広告がでている。
フリーランスの場合、1つの式を撮影して最低18000〜20000円程度だが、1日に式を数件掛け持ちすることでもう少し貰える場合もある。
ただし、接客マナーはきちんとしていないといけないため、社会人としてしっかりしている場合が多い。

・例外 専門性が強すぎるカメラマン

スナップ写真家、カメラや機材の批評がメインの写真家、戦場カメラマン、ミュージシャンの撮影など音楽写真家、サブカルチャー業界で人気のアート系写真家、動物写真家、鉄道や航空機など写真家、トップスポーツ専門の写真家など、あまりに専門性が強すぎて日本に20人いるかどうかというような職業カメラマンもいる。
どちらかというと広告、雑誌、企業系に分類されるカメラマンだが、専門性や作家性が相当加味されるので、憧れる人は多いがカメラマンの相当な独自性で生きている仕事なので、トッププロフォトグラファーといえよう。猫写真家の岩合さんもこの枠に入る。
建築写真家というのも専門性が強い。図面読めたり、建築の知識ないと竣工写真というのが撮れない(らしい)。
近年はドローンのカメラマンも増えてきた。スチール業と動画業を両立している場合が多く、また免許が必要なのだが、一時期挑戦するカメラマンは増えていた。


(ここに大きな壁)


・スクールフォトカメラマン
・アマチュアスポーツのスポーツカメラマン(販売業者)

前述の通り、長時間労働で激務で、クレーム対応にも応じなければいけない上、安いギャランティがいつまでも上がらない世界のため、フリーランスでも駆け出しのときだけ請け負うので、売れ始めると離れていく。そのため離職者が非常に多い。
必要なノウハウも多いため、お金がない駆け出しの広告系カメラマンが「説明聞いたけど面倒くさいことが多すぎる」ということで結局受けなかったということも多い。
個人写真館の場合が多いため、雇用はあまり多くない。フリーランスにかなり依存している業界だが、若手が寄り付かない影響で高齢化が深刻である。

残念ながら「悪い意味で独特なカメラマン」が多いという話が出てきたように、企業に就職できなかった方の率が高くて(自分を含め)、その上でスクールフォト以外の経験、実績が無いのまま、その世界でしか生きてこなかったので、他ジャンルのの写真業種にステップアップが出来ないまま、廃業する人も多い。廃業せず残っている人は、大抵「ちょっと変わった人」で、低収入なのも合わさって未婚者や離婚者が多い。
個人差はあるが、ビジネスマナーや接客などの研修をこれまでの人生で受けていない場合、謝罪する、報告、連絡、相談、確認という、社会人として必要なマナーをそもそも持っていなかったりする。

もちろん、スクールフォトのカメラマンのうち、全員が全員このような人というわけではないし、長く生き残っている人は人格者だったり、仕事っぷりも成果物も素晴らしく、尊敬・信頼できる人もいる。
このような人は仕事の数も多かったり、学校以外の写真もきちんと撮影していたりする。

同じように、写真館を長年経営している元請け側の人間は、学校との取引があるので社会人としてしっかりしている人が大多数だが、スクールフォトの写真館は、取引先が学校である以上、学校写真の世界しか知らない(外での七五三だったりピアノや舞台発表会の撮影、自社写真スタジオで家族写真などを撮影する昔ながらの写真館ももちろんあるが)。
スクールフォト以外の写真業種の経験がない人が多く、「外注する代写のカメラマンには20000円が常識」という世界で生きている。

このような閉鎖的な業界構造であるから、撮影当日まで「報告・連絡・相談」や「確認」「打ち合わせ」などがきちんとなされていないような世界。
このため「NDAや業務委託契約をきちんと結んでいない」ことや「支払いの際に源泉徴収をしていない」ことはよくある話であり、
「源泉徴収をされた=ギャランティが減った」と捉える人も多いのだ。

また、一部のスクールフォトのカメラマンが反発しているのが、「カメラメーカーからも差別されている」ということ。
これはキヤノンの話だが、キヤノンのカメラを使用しているプロカメラマンが入会できる「キヤノンプロフェッショナルサービス(通称CPS)」というサービスがある。
写真を撮影することを生業としている人が、推薦者からの紹介など一定の条件下で入会でき、修理代が半額になったり様々なサービスが受けられるのだが、残念ながらスクールフォトを専門にしている人は入会することが出来ない。
何故かと言うと審査基準に「撮影者の名前が載った出版物(2019年当時は2冊以上)」という記載があり、当然のことながら卒業アルバムや販売した写真には撮影したカメラマンの名前が載らないので、その部分でCPSの会員入会資格で引っかかり、結果としてスクールフォトで生計を立てていても、「キヤノンが認定したプロのカメラマンとしての基準を満たしていない」ので、CPSに加入することが出来ない。

以上のように、写真におけるカメラマンのヒエラルキーは物凄くある。
ヒエラルキー上位の人ほど、下位のカメラマンをバカにしていたり、そもそも下位のカメラマンの存在を認識していなかったりしている。

・写真業界に蔓延る「写真の仕事に上も下も無い。」という幻想。

矛盾しているのが、ヒエラルキー上位のカメラマンの間で代々受け継がれている教えというのが「写真の仕事に上も下も無い。」という話。
「誰でも良いみたいな仕事あるけど、誰かに言われても、言わせとけばいいじゃん別に。それに反応するのが時間の無駄。」とのこと。

違う。そうじゃない。
明確にヒエラルキーは存在する。


「写真の仕事に上も下も無い。」というのは、現実を無視しているか見えていないのかわからないが、スクールフォトのカメラマンからしたら差別に等しい。存在を否定されてるようなものだからだ。
「バカにするんじゃねえ。運動会で全員撮ったり、12分で40人の証明写真を撮れるのか?」という怒りの意見はもちろんあるのだが、ヒエラルキー上位のカメラマンはそんな仕事をしないので、理解も無ければ興味もないだろう。

ただし、ヒエラルキー上位下位というのは即ち年収、
つまり稼ぎに直結する。


プロ野球の選手で稼ぐというテーマの野球漫画「グラゼニ」の最初に、
「プロ野球選手は、グラウンドにゼニが埋まっている、
金の世界。結局年俸で評価される。
いつまでも中継ぎの便利な投手じゃ駄目だ。」

というようなセリフが合ったような記憶があるがまさしくその通りで、


稼ぎたいカメラマンは稼げるように上を目指すだろうし、撮影したいジャンルで生計を立てているカメラマンも、もちろん立派だ。
もちろんスクールフォトで良い仕事を継続する人も立派なのだが、どう頑張っても、どんなに評価されても、収入が上がらない。世間的にも評価されない。
仕事自体に楽しくてやりがいがあっても、結婚したり家庭を持つことが現実として見えてこない。
これでは成り手が現れないのは当然である。

・スクールフォト業界の将来性と解決策はあるのか

「スクールフォトはカメラマンを目指す人が憧れ、その業界に定着する職業ではない。」
「同業他社に転職してもキャリアアップにはならない。」
「楽しさより苦労が強い。」
「見下される、或いは認識もされない」
「安くて激務で将来が見えないので若手が寄り付かず、人材不足は限界まで来ている。」

これは現実だし、本来は売上の成績や評価、そもそも日雇いで機材も技術も相当必要なのだから、それでもきちんと生活できるだけのギャランティを適正な金額でカメラマンに支払ってこなかったスクールフォト業界の功罪も大きければ、卒業アルバムの値段が安い金額の業者しか入札で選んでこなかった教育委員会、学校の責任も大きい。
カルテルや談合、忖度は良いこととは言わないが、現在のスクールフォト業界は本当に限界に来ている。これを解決するには大幅な値上げしかない。値段を下げている会社は猛省して欲しい。
(こちらも参照ください https://note.com/tripper_driver/n/ndc2a0604d3c7 )。

卒業アルバムの売上は安い、写真販売は30年値段が変わっていない。こんなビジネスモデルは、もう限界なのだ。
既に力尽きた写真屋やカメラマンが出てきているので、近い将来スクールフォト業界全体が一気に崩壊することが目に見えている。

イツバネットの河戸弘太氏の炎上は、スクールフォト業界構造への無理解と、これまで無理に安いままスクールフォト業界を維持し続けてしわ寄せを受けて限界に陥った人材不足に、複数の問題が複雑に絡み合った炎上事案であって、正直河戸氏は悪くないと思っている。

本当にスクールフォト業界を維持したいのであれば、今すぐ解決に動かないと根本的解決につながらない。
スクールフォト業界にいるカメラマン、写真屋や制作会社、学校関係者や教育委員会は、この現状に気づかないと取り返しのつかない状況になると思われる。
特に「このような無理な募集を行った元請けの制作会社を血眼になって探してる首都圏の各教育委員会」は、そんな事をしている場合ではない。
値段を下げざるを得ず皺寄せが限界に達した結果の炎上であることは明白だ。
今後の学校教育と、学校現場での写真の社会的意義、記録としての価値を認識して、炎上を無駄にせず改善されることを強く願う。



と、ここまであれこれ現状を書いてきたのだが、時々聞いたり、思ったりことがある。



・そもそも、子供や保護者は、卒業アルバムや学校行事におけるプリントされた写真を必要としているのか?

確かに卒業アルバムで過去の思い出を振り返るのは懐かしさを感じるし、プリントされた写真はデータではないので損失に比較的強い(保存の仕方にもよるが)。
ただ、撮影データではないので卒業アルバムも、プリント販売された写真も、手元のスマートフォンで気軽に見れないし、かといって個人情報保護の観点やインフラの維持管理の問題から、スマホでサブスク契約でいつでも見れる、というようなことは取り扱っている商品の特性上不可能だ。


「子供の写真なんて自分のスマホで撮れる。別に写真館やスタジオで高い
お金を出して、きちんとした家族写真として撮る必要はない。」

「そもそも卒業アルバム必要ない。捨てた。」


このような話は、実際に沢山の人から聞いている。
生活スタイルが変化していて、写真に対する意識や需要も変わっている以上、旧来のスクールフォト業界のあり方を維持することは、もう限界なのかもしれない。


・ちょっと追記

1年も書いてなかったnote。その前は3年も書いていなかった。
文章を書くより写真を撮ることが好きな私は、基本的に面倒くさがり屋で、机に向かって文章を書くことを、日常的に行ってるわけでは全く無い。
しかも22000字なんて長文、人生で書いたことがなかった。
5年前に書き始めた趣味に関する文章を、下書きのまま5年放置するほど、ものぐさだ。
noteに趣味のジーンズの写真でも載せようかと思ったが、いつも先延ばしにしてしまう。そのぐらい、文章を書くことに対して腰が重い。

でも、今回大急ぎでスクールフォト業界について書きたかった。
誰でもわかりやすく、スクールフォトの仕事が現状抱えている深刻な問題を、スクールフォトに限らず写真業界全体を見渡して根本から書いた。

蓋を開けてみると物凄く反応があって、Twitterのトレンド入りしたり、
はてなブックマークでも1番読まれたりしたそうだ。
noteに投げ銭?機能があることも初めて知ったレベルで初心者だったので、ご支援頂いた方には感謝申し上げたい。

ただ今回は問題提起をしただけであって、業界のために出来ることは何か、全体の幸福のために行動できることはないか。もうちょっと考えたり動いてみようと思う。

ちなみに本文中の記事では書かなかったけれど、勘違いされていたので。
実は私はスクールフォト専業のカメラマンではなかったりする。
依頼があれば応えてしまう、器用貧乏でジャンルを問わないカメラマンだ。
趣味でやってるnoteだし、コンプライアンス上の問題があるので載せないけど、私が撮った写真を見たことある人は、多分結構いると思う。

どんな時でもクライアントやその先の人が喜んでくれる、成果物としての写真を届けて、自分が「この仕事はこれで良かったんだ」と納得できる仕事をいつまでもし続ける。
私は、人を、世の中を、ちょっぴり幸せにしたいのだ。

・2024/03/16 02:00時点での追記 

note初心者の私が初めてきちんとした文章を書いたところ、あまりにも記事への反応が大きく、iPhoneの通知が鳴り止まぬほど記事が拡散されていった。
業界のことを初めて知った方や、賛同のご意見、もちろん反対のご反論、たくさんのご意見を頂戴した。流石に全てのコメントを把握しきれていないので、そこはご理解いただきたい。

当然のことながら私は人間であり、当然間違えるときもある。間違ったことで迷惑をかけたと思ったら謝るし、逆に言うと自分が間違ってないと思ったら、自分のスタンスを明確にする。
また、私とは違った視点の方からの目から鱗だったご意見があり、他にも書くべきことが増えたこともあり、記事を途中で修正するというのではなく、最後に新しく追記の項目を作ることで、加筆での対応をすることにした。

・幡野広志氏とのその後のやり取り。

幡野氏のTwitterをブロックされたあと、実はメールでやり取りをした。
メールという直接のやり取りであり、メールの内容は記事のテーマである写真業界におけるスクールフォト業界立ち位置とは全く異なる話になった上、noteなど外で内容を公開しないのが筋だと思い、こちらから内容のの詳細の非公開を提案している。
この記事は、幡野氏への批判や誹謗中傷が目的ではない。

ただ、幡野氏へビジネスメールの書式で送らせてもらったが、幡野氏は激昂しており、届いたメールは、上から目線でかつ高圧的、一部タメ口の使用や論点のすり替え、決めつけや思い込みでの逆質問、他にも私ではなく無関係の第三者の写真家さんの悪口を私に送ってきたりと、感情的になっているとはいえ、本当に社会人かと言いたくなるレベルで言いたい放題であった。

幸いなことに(挙句の果てにというべきかもしれないが)、幡野氏が「おそらくここから先は法律的にトラブルになると思います」と、自ら仲介役として関係者をメールのccに入れてくれた。仲介に入ってくれた関係者2名がメールのやり取りをすべて読み、おそらく相当説得・なだめてくれたのであろう。関係者2名には感謝申し上げる。

ただ、ここで終わらないのが幡野氏。以下は幡野氏をツイートから引用させていただく。

幡野氏「“幡野広志氏は「自分はカメラマンで中の中」と自身で発言されているというので、ということは「上も下も存在する」と認識している”

記事中に「自分はカメラマンで中の中」ありますが、こちらは書籍のはじめにの自己紹介においての発言です。
正しくは『写真業界的には中の中か、中の上ぐらいのレベルです』と書いておりヒエラルキーについて言及しているのではなく、自分の技術、知識、経験値について「中の中」と書いています。「自分はまだまだです」という意味です。

“質問を一切否定していないことになります。また文面での回答ではなく、ブロックという形で姿勢を示されました。 前述の通り、あくまでこれらは事実であり、ヒエラルキーの上位のカメラマンが下位のカメラマンをシャットアウト、明確に視界に入れたくないということになります。”

Eメールにて所在ないさんとやりとりをして、ご本人にもお伝えしまたが、ブロックしたのはぼくが所在ないさんに不快感を覚え、失礼であると感じたのでブロックをしただけです。
ブロックは事実ですが、ヒエラルキーは全く関係ありません。 また、ヒエラルキーについては、書籍において自己紹介ではない別の箇所でいくつか言及しています。」

幡野氏「本を一冊書くのに10万字ぐらい文字を書くわけだけど、数文字のワードを切り取って、前後のながれと関係なく意図を都合よく変えられてSNSに拡散されるんだから、著者も校閲さんでも編集者でも防ぎようがない。
「中の中」をまさかヒエラルキーと読まれるとは想像もしていなかったわ。」

以上、2つの幡野氏の発言を振り返ってみての疑問点。

・「正しくは『写真業界的には中の中か、中の上ぐらいのレベルです』と書いておりヒエラルキーについて言及しているのではなく、自分の技術、知識、経験値について「中の中」と書いています。「自分はまだまだです」という意味です。」

幡野氏はこのように釈明しているが、自分の技術、知識、経験値について書かれるのであれば、最初から著書に誤解されないように書けばいいだけの話であり、
そうでなくても『写真業界的には中の中か、中の上ぐらいのレベルです』との発言は、当然「上」も「下」もあることを認識していないと発言できない。

その上で「数文字のワードを切り取って、前後のながれと関係なく意図を都合よく変えられてSNSに拡散されるんだから、著者も校閲さんでも編集者でも防ぎようがない。
「中の中」をまさかヒエラルキーと読まれるとは想像もしていなかったわ。」

ということだが、まず本の初っ端の自己紹介において、そもそも前後の流れ、文脈というもの自体は始まる前だろう。こちらは意図を変える意思はないし、もし意図をこちらが変えているように見えるのだとしたら、それは誤解を読むような書き方をした表現力不足である。

・幡野氏「不快感を覚え、失礼であると感じたのでブロックをしただけ」

こちらは幡野氏の卒業アルバムの写真に対する偏見による発言が、真意は別にありスクールフォトカメラマンを見下す意図していないのではないか?という確認のための連絡を取ったのだが、そもそも確認されることが「不快、失礼、だからブロック」というのは、大人としてあまりにも怒りの沸点が引くすぎるのではないだろうか。
この程度の質問で激昂されていては、そもそもまともなコミュニケーションも取れない。

ワタナベアニ氏「私は「中の下」だから、見下されていたのか!笑」

幡野氏「最終的に下の下を目指すヒエラルキーハックが生まれそうですね笑」

ワタナベアニ氏「出た。下マウント!」

幡野氏「強者の上から目線は無視すればいいけど、弱者の下から目線はブロックしたり無視すれば被害者感情を増やすし、跳ね返せば弱いものイジメの被害者になれちゃうから最強だと思います。 技術と知識と経験値を上げ、ポジションやヒエラルキーではなく、写真に対するスタンスを高くしていきたいと思います。」

幡野氏と、写真家でアートディレクターのワタナベアニ氏のやりとり。
ワタナベアニ氏は『ロバート・ツルッパゲとの対話』などの著作があり、昔読ませていただいた記憶があるのだが。

その界隈の方々が、逆マウントを取る、取らないとか、そんな話で盛り上がっている。
そもそも幡野氏は著書で他者を下げるような発言をしたり、そもそも卒業アルバムの写真を見下している。
ワタナベアニ氏は無関係のはずだが、会話に乗ってきている。

何だこの世界は。
この人たちは、何故にそこまでして他人にマウントを取りたがるのか。


さすがに、これは持ち合わせている人間性の酷さに、ドン引きしてしまった。このnoteの記事では極力自分の感情を排除するつもりだったが、下品な世界で生きている人たちが偉そうにしていると、完全に個人の主観として感想が出てきてしまった。

改めて、この記事は本来「大炎上したスクールフォト業界で勤めてたんだが、もう学校写真のカメラマンは限界かもしれない」という題名の、スクールフォト業界の事実に基づいた極めて現実の惨状を書いた記事である。
卒業アルバムや学校写真について幡野氏の発言は経験に基づいているわけでは全く無く、こちらはあくまでわかりやすい対比構造として出しただけであり、これ以上関わってしまうと、幡野氏のトラブルの項目を書くだけで私の感情があまりにも入り込んでしまい、しかも本題からズレてしまう。
また、反論に反論を重ねる意味がどこにもないし、ただ疲弊するだけだ。
今後幡野氏や、その界隈の方と関わらないほうが良い。

と思っていたところ、


あの「ほぼ日」の糸井重里氏まで、この件に言及するのか。


幡野氏の「数文字のワードを切り取って、前後のながれと関係なく意図を都合よく変えられてSNSに拡散される」ということを幡野氏自らやっていて、それに対しトップクリエイターが肯定的なコメントをする。
私はこれに関してはもう、コメントをしない。したくない。

・他の方々の意見について

実は、スクールフォト業界のカメラマンや業界関係者からは、スクールフォトの業界の惨状を正確に捉えていると、概ね肯定的意見でコメントを残してくれた。共感や支持をされたくて書いた記事ではないが、沢山の方が同じことを実は考えていたという事実は大きい。

スクールフォト業界を知らなかった人たちも、今回話題になった影響で業界の実情を初めて知り、また惨状に驚く人からのコメントが多く寄せられた。

もちろん否定的な意見だったり、私が気づいていなかった視点での意見もあった。様々な意見があるということは多角的に見てる人がいるというわけで、否定的な意見も非常に参考になった。コメントを残していただいた皆さんに感謝申し上げる。

嬉しかったのが、内容が濃厚で読み応えのある素晴らしいジャーナリズムで、読み物としてすごく面白いと言ってくださった方がいた事だ。
私はそこまでジャーナリズムとして大層な使命を持って書いたつもりはなかったのだが、こういった意見は本当に励まされる。

最高に嬉しかったのが、「文春越えは確実の、見事なジャーナリズムだわ」という意見。
あの文藝春秋を超えていると言っていただけるのは大変光栄である。

また、今回のnoteを見て、スクールフォトの発注側にいた方がnoteにおいて記事を書いてくれたそうだ。私は卒業アルバム業者やカメラマンの立場から見ていたので、このように発注側から見た話は大変新鮮で、自分は業界を知ったつもりでいたのかと恥じてしまった。

・ありえないクレームと、それに振り回される写真屋の話。


卒業アルバムには仕様書というものがあり、全体のページ数やページごとの内容の構成を決めて、その枠組みを元に卒業アルバムを制作するのだが、
なんと学校側が仕様書を完全に忘れたか見ていなかったのか、アルバムのページの内容配分を勝手に変えて、そのまま制作することになった。

どんな問題が起こったか。
仕様書では白黒の卒業文集として10数ページを枠に割り当ていたのだが、学校側が仕様書を見ずに大まかに制作し出された仮レイアウトは、本来白黒の薄い紙で予定していた10数ページ分が、全てカラーページの思い出の学校行事写真に置き換わって構成されていた。

白黒とカラー、また卒業文集と写真ページでは当然インク代や紙の分厚さが変わるので、制作費が当然ながら上がる。
その上で学校側は「卒業アルバムの制作費はそのままで。」と言ってきた。当然写真屋は怒ったが、結局無理難題を通すことになった。

ビジネスを全くわかっていない教員たちや学校は、平気でそんな事を言ってしまう。こちらの生活のことなんか1ミリも考えていない。

・2024/03/16 08:45時点での追記 秋の運動会のカメラマンが過去最大レベルでに足らない

今年、炎上した入学式の事案以外に、首都圏ではどうやら過去最大の惨状が待ち構えているようだ。


2024年10月12日土曜日、

秋の運動会の撮影するカメラマンの人員が、

過去最大レベルで局所的に足らない。

殆どの小学校、中学校、幼稚園や保育園の運動会がこの日に集中していて、

殆どのスクールフォトののカメラマンが既にこの日を抑えられていて、

7ヶ月前の現時点で人材が殆ど確保できていない。

これから運動会のスケジュールを組む学校もあると思うが、

大惨事や撮影事故が用意に想定されるので、

各学校、園や、教育委員会は、運動会の開催スケジュールの日程分散を、

今すぐにでも実行しないと、とんでもないことが起こる。

今ならまだギリギリ間に合う。

炎上してる場合では無い状態であることを、気付いて欲しい。

#創作大賞2024
#ビジネス部門


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